偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

文字の大きさ
上 下
24 / 94
~第一章~

24.とある外交官side

しおりを挟む

 今更だろう。
 宰相や大臣達が呆れ果てていた。

 ただでさえ、未成年の子供を罪人に仕立て上げて国外追放の刑に処している。
 本人がどうする事も出来ない状態だったにも拘らず、だ。

 王女殿下が勝手にした事ではあるが、許可を出したのは王太子殿下だ。
 そして事の詳細を知ってなお、我が子可愛さで庇ったのは国王陛下ではないか。

「全く、どこまでも自分勝手なお方だ」
 
「本当ですね。いくら我が子可愛らしさで目が眩んでいたとはいえ、権力の乱用も甚だしい」
 
「それにしても、あの王太子は酷すぎる」
 
「ああ、あれが国王に即位した日には国が滅んでしまうぞ」
 
「だが王女もアレだ」
 
「まともな王族がいないな」
 
「どうしたものか。サビオ殿を連れ戻せと言われてもな」
 
「隣国に渡った事だけは確認が取れたが……」
 
「その後の消息が不明だ」

 隣国に亡命したものだとばかり思っていた。
 さり気なく、隣国に問い合わせてみたが、サビオ殿は他国に渡った後だった。

「やはり、サビオ殿を探すしかないのではないか?」
 
「だが、どうやって?」
 
「それは……」
 
 誰もが黙ってしまった。
 
「そもそも、どこの国に行ったんだ?」
 
「分からん。ただ、サビオという名で渡航した者はいないらしい」
 
「なんだと?」
 
「恐らくだが偽名を使っているのではないか?それか改名したのか……」
 
「だから見つからなかったのか!」
 
「だが、それでは探す事もままならないではないか」
 
 我々は頭を抱えた。
 
「どうする?」
 
「どうするも何も、探すしかないだろう?」
 
「そうだが、手がかりがないのだぞ?」
 
「うーむ」
 
 皆が考え込む。
 
「とりあえず、近隣諸国から調べていくしかないんじゃないか?」
 
「確かに……」
 
「それしかないか……」
 
「仕方ない」
 
「そうするか」
 
 こうして、我々による捜索が始まった。
 
「まずは周辺国からだな」
 
「ああ、そうしよう」
 
 こうして、まずは隣国から調査を開始した。
 結果は空振りに終わった。
 何処を探しても、見つからなかったのだ。



 
 

 
「どういうことだ?」
 
「おかしいな」
 
「一体どうなっているのだ?これだけ探しても見つからないとは……」
 
「ひょっとすると他国に匿われているのではないのか?」
 
「いや、それは無いだろう」
 
「そうか?可能性としてはあり得る事だ。この国の王族の非道を近隣国は知っているからな。サビオ殿の身に起きた事は既に知っているだろう。だからこそ、この国から引き離したいと思うはずだ」
 
「なるほど」
 
「そういうことなら、十分あり得る話だ」

 彼は諸外国から信頼されていた。
 彼が居なくなってからは、我が国の評判が落ちる一方だ。

 この国の信頼は地に落ちている。

 他国の大使達の冷めた眼差しを思い出す。
 
「これは本格的に不味いな」
 
「ああ、何とかしなければ」
 
「だが、いったいどこに行ったのか……」
 
 我々の努力は虚しく、サビオ殿の行方を掴む事は出来なかった。
 結局、サビオ殿の足取りは掴めなかった。




しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

召喚をされて期待したのだけど、聖女ではありませんでした。ただの巻き込まれって……

にのまえ
ファンタジー
別名で書いていたものを手直ししたものです。 召喚されて、聖女だと期待したのだけど……だだの巻き込まれでした。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

処理中です...