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~第一章~

24.とある外交官side

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 今更だろう。
 宰相や大臣達が呆れ果てていた。

 ただでさえ、未成年の子供を罪人に仕立て上げて国外追放の刑に処している。
 本人がどうする事も出来ない状態だったにも拘らず、だ。

 王女殿下が勝手にした事ではあるが、許可を出したのは王太子殿下だ。
 そして事の詳細を知ってなお、我が子可愛さで庇ったのは国王陛下ではないか。

「全く、どこまでも自分勝手なお方だ」
 
「本当ですね。いくら我が子可愛らしさで目が眩んでいたとはいえ、権力の乱用も甚だしい」
 
「それにしても、あの王太子は酷すぎる」
 
「ああ、あれが国王に即位した日には国が滅んでしまうぞ」
 
「だが王女もアレだ」
 
「まともな王族がいないな」
 
「どうしたものか。サビオ殿を連れ戻せと言われてもな」
 
「隣国に渡った事だけは確認が取れたが……」
 
「その後の消息が不明だ」

 隣国に亡命したものだとばかり思っていた。
 さり気なく、隣国に問い合わせてみたが、サビオ殿は他国に渡った後だった。

「やはり、サビオ殿を探すしかないのではないか?」
 
「だが、どうやって?」
 
「それは……」
 
 誰もが黙ってしまった。
 
「そもそも、どこの国に行ったんだ?」
 
「分からん。ただ、サビオという名で渡航した者はいないらしい」
 
「なんだと?」
 
「恐らくだが偽名を使っているのではないか?それか改名したのか……」
 
「だから見つからなかったのか!」
 
「だが、それでは探す事もままならないではないか」
 
 我々は頭を抱えた。
 
「どうする?」
 
「どうするも何も、探すしかないだろう?」
 
「そうだが、手がかりがないのだぞ?」
 
「うーむ」
 
 皆が考え込む。
 
「とりあえず、近隣諸国から調べていくしかないんじゃないか?」
 
「確かに……」
 
「それしかないか……」
 
「仕方ない」
 
「そうするか」
 
 こうして、我々による捜索が始まった。
 
「まずは周辺国からだな」
 
「ああ、そうしよう」
 
 こうして、まずは隣国から調査を開始した。
 結果は空振りに終わった。
 何処を探しても、見つからなかったのだ。



 
 

 
「どういうことだ?」
 
「おかしいな」
 
「一体どうなっているのだ?これだけ探しても見つからないとは……」
 
「ひょっとすると他国に匿われているのではないのか?」
 
「いや、それは無いだろう」
 
「そうか?可能性としてはあり得る事だ。この国の王族の非道を近隣国は知っているからな。サビオ殿の身に起きた事は既に知っているだろう。だからこそ、この国から引き離したいと思うはずだ」
 
「なるほど」
 
「そういうことなら、十分あり得る話だ」

 彼は諸外国から信頼されていた。
 彼が居なくなってからは、我が国の評判が落ちる一方だ。

 この国の信頼は地に落ちている。

 他国の大使達の冷めた眼差しを思い出す。
 
「これは本格的に不味いな」
 
「ああ、何とかしなければ」
 
「だが、いったいどこに行ったのか……」
 
 我々の努力は虚しく、サビオ殿の行方を掴む事は出来なかった。
 結局、サビオ殿の足取りは掴めなかった。




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