偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

文字の大きさ
上 下
22 / 94
~第一章~

22.アンハルト国王side

しおりを挟む
 外交官が言うには「王太子殿下は日常会話程度なら問題無い」とのことだ。
 だが、他国との交渉で使うとなると話が変わってくるらしい。
 
 我が国の外交官達は皆、ある程度の教育を受けている者達ばかりだ。
 中には他国に留学した者もいる。
 当然、数ヶ国語を解する者は多い。
 しかし、王太子はそういった専門用語を交えた交渉の場において全く役に立たないという事が判明した。
 何度、説明しても首を傾げるばかりだったそうだ。
 その事に危機感を覚えた外務担当官達が急遽、話し合いを行った結果、「このままではマズイ」と判断したようだ。

 そこで苦肉の策として、サビオを代役に据えたらしい。

 サビオは王太子を立てつつ、交渉を進めていった。
 そして、それは見事に功を奏したという訳だ。

 我が子ながら情けない。
 これではただの傀儡ではないか。
 だが、嘆いてばかりはいられない。
 一刻も早く手を打たねばならないからだ。
 私は直ぐに行動に移った。

「今すぐに記録に残っている全ての交渉内容を確認しろ。そして、サビオとの会談の記録は全て残らず持ってこい!」

 怒りのままに指示を出す。

「かしこまりました!」

「それと外交文書についても確認しろ!いいか!全てだ!いいな!」

「はい!」

 部下はすぐに動き出した。
 これで何とかなるだろう。
 いや、なんとかしなければならん!

「後は……」

 息子の動向に注意しなければならない。
 王太子に政務をさせるわけにはいかないからだ。





 目録やら報告書、手紙などが次々に運び込まれてくる。
 それらを確認していく。
「ふむ」
 サビオが王太子の代わりに仕事をこなしていた。王太子は署名にサインをしていただけのようだ。
 よくもまぁ……呆れを通り越して感心してしまう程だ。

 今までなんの疑問も持たなかった。

 重要書類に目を通し、この国を支えていたのは誰だったのかを思い知った。

 支えをなくした事で、ありとあらゆる問題が発生したのは当然の帰結と言える。
 国の現状を一通り把握したところで、これから先の事を考えなければならない。

 一部の者達はサビオに仕事を押し付けていた事が判明した。
 下の者だけでなく上にいる者達までそれをしていたのだ。
 私は頭を抱えたくなった。

 上の者に至っては、それを咎めるどころか、むしろ推奨していたくらいだ。
 信じられない話である。
 これはもう、どうしようもない。
 もはや、手の施しようがないほど腐っていると言ってもいい。
 そう考えると目の前が真っ暗になったような錯覚に陥った。
 しかし、いつまでも落ち込んではいられない。
 正常な状態に戻す必要がある。
 その為には……
 まずは手始めに、王太子の教育から始めるべきかもしれない。
 あの子が成長するまでは私が頑張るしかないだろう。
 息子はまだ若いのだ。これから幾らでも挽回できるはずだ。

 そう信じていた――――





しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

召喚をされて期待したのだけど、聖女ではありませんでした。ただの巻き込まれって……

にのまえ
ファンタジー
別名で書いていたものを手直ししたものです。 召喚されて、聖女だと期待したのだけど……だだの巻き込まれでした。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

処理中です...