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~第一章~
22.アンハルト国王side
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外交官が言うには「王太子殿下は日常会話程度なら問題無い」とのことだ。
だが、他国との交渉で使うとなると話が変わってくるらしい。
我が国の外交官達は皆、ある程度の教育を受けている者達ばかりだ。
中には他国に留学した者もいる。
当然、数ヶ国語を解する者は多い。
しかし、王太子はそういった専門用語を交えた交渉の場において全く役に立たないという事が判明した。
何度、説明しても首を傾げるばかりだったそうだ。
その事に危機感を覚えた外務担当官達が急遽、話し合いを行った結果、「このままではマズイ」と判断したようだ。
そこで苦肉の策として、サビオを代役に据えたらしい。
サビオは王太子を立てつつ、交渉を進めていった。
そして、それは見事に功を奏したという訳だ。
我が子ながら情けない。
これではただの傀儡ではないか。
だが、嘆いてばかりはいられない。
一刻も早く手を打たねばならないからだ。
私は直ぐに行動に移った。
「今すぐに記録に残っている全ての交渉内容を確認しろ。そして、サビオとの会談の記録は全て残らず持ってこい!」
怒りのままに指示を出す。
「かしこまりました!」
「それと外交文書についても確認しろ!いいか!全てだ!いいな!」
「はい!」
部下はすぐに動き出した。
これで何とかなるだろう。
いや、なんとかしなければならん!
「後は……」
息子の動向に注意しなければならない。
王太子に政務をさせるわけにはいかないからだ。
目録やら報告書、手紙などが次々に運び込まれてくる。
それらを確認していく。
「ふむ」
サビオが王太子の代わりに仕事をこなしていた。王太子は署名にサインをしていただけのようだ。
よくもまぁ……呆れを通り越して感心してしまう程だ。
今までなんの疑問も持たなかった。
重要書類に目を通し、この国を支えていたのは誰だったのかを思い知った。
支えをなくした事で、ありとあらゆる問題が発生したのは当然の帰結と言える。
国の現状を一通り把握したところで、これから先の事を考えなければならない。
一部の者達はサビオに仕事を押し付けていた事が判明した。
下の者だけでなく上にいる者達までそれをしていたのだ。
私は頭を抱えたくなった。
上の者に至っては、それを咎めるどころか、むしろ推奨していたくらいだ。
信じられない話である。
これはもう、どうしようもない。
もはや、手の施しようがないほど腐っていると言ってもいい。
そう考えると目の前が真っ暗になったような錯覚に陥った。
しかし、いつまでも落ち込んではいられない。
正常な状態に戻す必要がある。
その為には……
まずは手始めに、王太子の教育から始めるべきかもしれない。
あの子が成長するまでは私が頑張るしかないだろう。
息子はまだ若いのだ。これから幾らでも挽回できるはずだ。
そう信じていた――――
だが、他国との交渉で使うとなると話が変わってくるらしい。
我が国の外交官達は皆、ある程度の教育を受けている者達ばかりだ。
中には他国に留学した者もいる。
当然、数ヶ国語を解する者は多い。
しかし、王太子はそういった専門用語を交えた交渉の場において全く役に立たないという事が判明した。
何度、説明しても首を傾げるばかりだったそうだ。
その事に危機感を覚えた外務担当官達が急遽、話し合いを行った結果、「このままではマズイ」と判断したようだ。
そこで苦肉の策として、サビオを代役に据えたらしい。
サビオは王太子を立てつつ、交渉を進めていった。
そして、それは見事に功を奏したという訳だ。
我が子ながら情けない。
これではただの傀儡ではないか。
だが、嘆いてばかりはいられない。
一刻も早く手を打たねばならないからだ。
私は直ぐに行動に移った。
「今すぐに記録に残っている全ての交渉内容を確認しろ。そして、サビオとの会談の記録は全て残らず持ってこい!」
怒りのままに指示を出す。
「かしこまりました!」
「それと外交文書についても確認しろ!いいか!全てだ!いいな!」
「はい!」
部下はすぐに動き出した。
これで何とかなるだろう。
いや、なんとかしなければならん!
「後は……」
息子の動向に注意しなければならない。
王太子に政務をさせるわけにはいかないからだ。
目録やら報告書、手紙などが次々に運び込まれてくる。
それらを確認していく。
「ふむ」
サビオが王太子の代わりに仕事をこなしていた。王太子は署名にサインをしていただけのようだ。
よくもまぁ……呆れを通り越して感心してしまう程だ。
今までなんの疑問も持たなかった。
重要書類に目を通し、この国を支えていたのは誰だったのかを思い知った。
支えをなくした事で、ありとあらゆる問題が発生したのは当然の帰結と言える。
国の現状を一通り把握したところで、これから先の事を考えなければならない。
一部の者達はサビオに仕事を押し付けていた事が判明した。
下の者だけでなく上にいる者達までそれをしていたのだ。
私は頭を抱えたくなった。
上の者に至っては、それを咎めるどころか、むしろ推奨していたくらいだ。
信じられない話である。
これはもう、どうしようもない。
もはや、手の施しようがないほど腐っていると言ってもいい。
そう考えると目の前が真っ暗になったような錯覚に陥った。
しかし、いつまでも落ち込んではいられない。
正常な状態に戻す必要がある。
その為には……
まずは手始めに、王太子の教育から始めるべきかもしれない。
あの子が成長するまでは私が頑張るしかないだろう。
息子はまだ若いのだ。これから幾らでも挽回できるはずだ。
そう信じていた――――
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