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~第一章~

3.僕は偽物

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『大変言いにくいのですが、パッツィーニ侯爵家の御次男様は赤子の時に取り替えられていた事が判明いたしました』

 数日前に神官が家にきて放った言葉。
 それが全てを狂わせた。
 だってそうだろ?
 実は自分は侯爵家の本当の息子じゃないと告げられたのだから。

 神官の話では、僕と侯爵家の本物の次男はとのこと。
 これを聞いた時、頭がクエスチョンマークで一杯だった。
 普通は妖精の子供を取り替えるのでは?と思ったからだ。
 でも残念ながら僕は正真正銘の人間。古代にあったような精霊や妖精のハーフでもない。

『この数十年、妖精たちの間でようでして……』

 え?
 なにその傍迷惑な流行。
 幾ら妖精が悪戯好きだからってソレはないよ。
 でも、少しだけ納得している自分もいる。

 だって、僕は両親と兄に全く似ていなかったからだ。

 僕は、黒髪に黒瞳。対して両親と兄は揃って金髪に緑の目。
 先祖の中ですら僕と同じような色合いを持つ人間はいなかった。

 恐らく、両親もしくは親族の誰かが僕の血統を疑って調べていたんだろう。そうでなければ他国の孤児院に本物の侯爵家次男が存在しているなんて分かるはずがない。


「あぁぁぁぁ……アヴィド。わたくしの子」

 母が歓喜の涙を流しながら実の息子アヴィドを抱きしめている。三歳上の兄サバスも嬉しそうに表情を緩めていた。父は戸惑っている様子だがその目からは実の子だと確信しているのがありありと分かった。それもそうだろう。質素な平民服に身を包んでいる少年は自分達によく似た容貌なのだから。

 それにしても絵になる。
 美しい侯爵夫人が自分によく似た天使のような美少年を抱きしめている姿は、聖画のようであり宗教画にも見えた。

 本当の家族の再会の裏で行われた僕の追放劇。

 それを宣言したのが婚約者の王女だった。
 
「サビオ!平民の身分でありながら王家と侯爵家を騙した罪は許しがたいものです!本来なら公開処刑に値するところを王家の慈悲で国外追放を命じます!!」

 
 はい? ちょっと何を言っているのか理解できなかった。
 これ僕が悪いの?
 生まれたばかりの赤ん坊の時の話だよ?
 しかも犯人は妖精。
 うん。誰が聞いても僕は悪くないと言うだろう。この国以外は。
 唖然としている間に馬車に乗せられて気が付いたら国外に放り出されていた。
 こうして僕は、ただの「サビオ」となり、生まれて初めて自分の国を出た。

 

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