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しおりを挟む王城にあがって一年後、元老院で国王陛下の退位が決定しました。
それを侍従たちに聞かされても「あ、やっぱり」としか思えなかったものですが、どうやら王妃様は違ったようで酷くショックを受けていました。
何を驚く事があるのか不思議です。
寧ろ、遅いくらいなのでは?
国王陛下が勝手に公爵令嬢との婚約破棄した段階で廃嫡になっていてもおかしくなかったのです。公爵令嬢が大国の王太子妃になった数週間後に当時の国王が退位を宣言した時に一緒に王位継承権を放棄していれば宜しかったものを。
結婚、六年経っても王妃は「妃教育」が修了せず懐妊の兆しもない。
ならいっそ、王妃を離縁して今度こそ高位貴族から王妃を選べばいいのかもしれませんが、それは出来ません。元婚約者との婚約破棄で王家が賠償金を支払はない条件として「離縁は決して認めない。なにが起ころうとも傍を離れさせず、生涯を共にすること」だったというではありませんか。
既に国王の心は王妃から離れています。
公爵令嬢はそれを見越した上で条件付けにしたのでしょうか?
謎です。
国王退位の一ヶ月後、私は大聖堂で「王冠」を被り「玉座」に座らせられました。
「女王陛下、万歳!万歳!万々歳!!」
どうしてこうなった?
笑みが引きつりそうです。
王国初の女王。
聞こえは良いですが、要は誰も火中の栗を拾いたくなかった結果です。男どもの逃げ足の早さには感服しますよ、まったく。逃げ遅れた私が十歳の幼い身で女王になってしまったという訳です。
私も若輩の身。
いいえ、どう考えても幼過ぎです。年齢を理由に断わったのですが既にそれは出来ないほど外堀を埋められていました。何でも国内外で私の「天才ぶり」が有名になり過ぎて他の候補者を立てるよりも名声にが鳴り響いている私を即位させた方がいい、と議会で満場一致で決まったそうです。
くっ!
確かに人より頭三つ分ほどは利口である自覚はありますが、残念ながら「天才」ではありません。ギフテッドという訳ではないのです。複雑な家庭環境と昨今の情勢のせいで保身を第一に考えて前もって行動していた結果です!
ああ~~~!
悔やんでも悔やみきれません。
側妃になった時に陛下から、
「子供は子供らしくして構わない。その方が可愛らしいのだからな。なに、周りが何をいようが気にする事は無い。どんなことを言おうがやろうが子供のする可愛らしいワガママを許さない者はいない」
と言質を取ったが故の行動でしたのに……。
策士策に溺れるとはこの事ですね。
こうなったからには王国を盛り立ててゆく所存です。
因みに、前国王夫妻は辺境にある王領の古城に住まいを移され、五年後に前国王が病に倒れ、十年後に亡くなられました。前国王亡き後、前王妃は古城近くの修道院にシスターとして神に仕える立場になられたようです。
前国王の闘病生活は凄まじいものがあったそうですからね。その影響でしょうか、以前と違って勤勉になられたそうです。
私も国内の有力貴族を王配にし、四男五女を生み、跡取り王太子と第二王子を除いた子供達を他国の王族の嫁がしたり婿入りさせたりして諸外国との絆を強めることができました。
これにて、めでたしめでたし。
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