上 下
10 / 17

10.一夜の過ち1

しおりを挟む

 眩しい……。
 瞼が重い……あ、頭が痛くてクラクラして……。うぅ、吐き気がする程気持ち悪い。ああ~お酒を飲んだ後はいつもこうなってしまうのです。お酒は大好きなのに……飲んでいる時は美味しくて気持ちよくなって……ああ、頭が痛い。ザルの陛下と飲んだせいかしら?グラスに注がれては飲んでの繰り返しだったから……降り注ぐ陽光を感じながらそんなことを思っていました。そして、ふと、気付いたのです。何故、陽の光をこんなにも感じることが出来るのかしら?と。その疑問が今更ながら浮かび上がったのです。ふかふかで柔らかい肌触りの良いシーツ……どう考えてもベッドで寝ている事が分かります。執務室に設置されている簡易ベッドとは訳が違いました。

 のろのろと目を開けると天蓋が……天蓋?天蓋付きのベッド!?

 私ったら何てことを!!

 自分の置かれている状況が分からず、慌てて飛び起きようとしました。けれど、体に力が入らないのです。腕すら上げることが困難な有り様。それに何だか体中が痛い……腰や足の付け根辺りは特に酷いような。とりあえず今いる場所だけでも把握しようと視線だけ動かそうとした、その時です。

「やっとお目覚めか?」

 甘やかな声と共に頭上に影が落ちてきました。その声音には聞き覚えがありまして、まさかと思って顔を見上げたところ――

「ふぎゃああああああっっっ!!」

 思わず悲鳴を上げてしまって……。目の前には陛下がいらっしゃいました。それも一糸まとわぬ姿で!!何という破廉恥な!!
 しかも、陛下の顔が徐々に近付いてくるではありませんか。どうしてこんなことに!?

 昨夜の事は殆ど覚えていません。
 最後の記憶と言えば、陛下と楽しく喋っていてそのまま意識を失ってしまった事だけです。その後のことはまったく記憶に有りませんが……そういうことなんでしょう。陛下に覆いかぶされて顔中に接吻されているのですもの!鈍いと言われる私でさえ納得のいく状況です!

「へ、陛下ぁっ!!どいて下さいましぃ~!」

 恥ずかしさと困惑が入り交じって私は情けない声で叫びました。それでも離れてくれる気配は無くて余計にキスの雨が降り注がれていきます。
 
「ちょ……まっ……待ってぇくださ……い。わたし……昨日……」

「ルーナは初めてだろうから優しくするつもりだったのだがな。どうやら加減が出来なかったようだ。すまない」

 どういうことなのかと声を上げようとしても口付けによって塞がれてしまい、何も言えずじまいでした。
 ひとしきり愛でられ茹で蛸状態の私にそれはもう鮮明に語ってくださいました。昨夜起こった出来事の一部始終を。陛下の話を聞けば聞くほど恥ずかしくなって……穴があったら入りたい気分です。

「体は大丈夫か?」

「……痛いです」

「無理をさせたようだ。今日は一日ここで休んでいるといい」

「……はい」

 ああぁぁっ!!!
 酔っぱらって前後不覚になって陛下のお手つきになるとは何たる失態!

 着替え終わった陛下が微笑みながら部屋を出ていかれました。

 




しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。 図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです? 全5話。ゆるふわ。

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

とある令嬢の婚約破棄

あみにあ
恋愛
とある街で、王子と令嬢が出会いある約束を交わしました。 彼女と王子は仲睦まじく過ごしていましたが・・・ 学園に通う事になると、王子は彼女をほって他の女にかかりきりになってしまいました。 その女はなんと彼女の妹でした。 これはそんな彼女が婚約破棄から幸せになるお話です。

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

番(つがい)はいりません

にいるず
恋愛
 私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。 本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。  

恋心を利用されている夫をそろそろ返してもらいます

しゃーりん
恋愛
ソランジュは婚約者のオーリオと結婚した。 オーリオには前から好きな人がいることをソランジュは知っていた。 だがその相手は王太子殿下の婚約者で今では王太子妃。 どんなに思っても結ばれることはない。 その恋心を王太子殿下に利用され、王太子妃にも利用されていることにオーリオは気づいていない。 妻であるソランジュとは最低限の会話だけ。無下にされることはないが好意的でもない。 そんな、いかにも政略結婚をした夫でも必要になったので返してもらうというお話です。

処理中です...