【完結】「離婚して欲しい」と言われましたので！

～番外編 鈴木夫妻の被害者～

13.中島秀一side

　
　里香の起こした虐め問題。
　それは大変な騒ぎになった。
　ケースは違うが、鈴木専務の娘と同じ「虐め」だ。話題にならないわけがない。

　思っていた通り、虐めのあった各学校は世間からのバッシングを受ける事となった。

　それは香織や鈴木専務夫妻の母校にも飛び火し、元凶とでも言わんばかりに叩かれた。
　進学校として有名だった私立学校だが、昔は評判の良くない学校だったせいで、更に炎上した。
　数年も経たずに学校経営が立ち行かなくなり、理事長が自殺したのではないかという噂がネットで騒がれていた。

　真偽の程は知らない。

　それでも世間のバッシングは止まなかった。

　浅成学園の生徒のせいで人生を狂わされた人間がそれだけ多かったのだろう。
　随分、恨まれているものだ。

　俺は今、高知に住んでいる。

　とにかく東京から離れたかった。
　いや、離れないといけなかった。
　被害者家族は学校を恨んでいたし、里香を憎んでいた。その飛び火がこちらに来たらと思うと……。最初は地元に戻ろうかとも思ったが、やめた。親に絶縁された身だ。両親は俺のした事を今も許してないだろう。頑固なまでに筋の通った両親。あの親の息子というだけで「間違いなし」と言われてきた。立派な親を持つと子供は苦労する。お陰で学生時代はちょっとした火遊びすら出来なかった。

　だから上京したんだが……。
　人生は上手くいかないものだ。


　離婚後の香織と義母の行方はわからない。
　里香の事もだ。

　これから先も知らないままだろう。


　海辺に小さな家を買った。
　まぁ、小さいといっても地元目線でだ。
　俺からすれば十分広い。

　離れで英語を教えている。
　というよりも、ここ数年で外国人の観光客が増えた。
　いや、移住者も増えてる。

　サーフィン目的の人間もいれば、この土地柄が気にいったと言って移住してくる。
　まぁ、昼間っから酒を飲んでも怒られない環境は酒好きにはたまらないだろう。
　なだらかな土地は広々として空気もいい。
　買い物する所だって揃っている。交通の便が悪いが逆に静かで良いと移住してくれる人達もいるくらい人気がある。

　このままここで骨を埋めるのも悪くない。