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~一度目~

34.元夫の娘2

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 鈴木家。
 私にとって良い思い出はありません。寧ろ悪い思い出しかありませんでした。
 彼らが不幸になれば良いと思うほどの恨みもありません。

 ですから、彼らが自らの所業によって破滅の道を歩むことになっても、何の感情も湧かないでしょう。

 少しずつ、少しずつ、破滅へ向かっている鈴木家の皆さま。
 きっと彼らはそのことに気付いていないのでしょうね。

 そしてそれは私も同じでした。
 私を大切に思ってくれる人は誰も鈴木家の行いを許していない事を。
 今なお、彼らの動向を密かに見守っている人達がいる事を。
 最高のタイミングで彼らを破滅させようと計画している事を。
 私は、知る由もありませんでした。





 蝶の羽ばたきが、遠く離れた場所で竜巻を巻き起こすこともある。
 その蝶の羽ばたきは、とても小さかった。けれど、鈴木家を破滅に導くには十分なものだったようです。

「集団訴訟?」

「ああ、鈴木家の令嬢の被害者が訴えを起こしたそうだ」

「まぁ……」

「鈴木グループの娘という事で躊躇していた弁護士が多い中で、この動きは大きい」

 まさかの行動に私は驚きを隠せませんでした。
 元夫の娘、美咲さんに虐められていた生徒が揃って集団訴訟を起こしたのです。

 被害者側の弁護士は若いながら優秀だと評判の田上弁護士。
 今まで数々の裁判を勝ち抜いてきた敏腕弁護士は、法律を武器に美咲さん側の弁護士を蹴散らし、追い詰めていったのです。

 鈴木グループ令嬢の被害者達が一斉に訴えを起こした事に、元夫の親族達は焦りを隠せないでいたのでしょう。
 会社への影響を考えて示談にしようと奔走したようですが誰一人として訴えを取り下げる事はありませんでした。金に物を言わせれば、どうにでもなると元夫は考えていたのでしょうが、それは悪手だったとしか言いようがありません。

 裁判の結果は当然、被害者側の勝利。それも圧勝だったそうです。
 鈴木グループの令嬢の裁判を皮切りに、今までの強引な経営のつけが回ってきたのか、鈴木グループへの風当たりは益々強くなっていきました。
 これは元夫の親族達にとって致命的な事態だったようです。


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