76 / 130
~一度目~
28.浅田理事長side
しおりを挟む
「俺もお前や大場の事を笑える立場じゃないが、俺達の世代はまだマシだったぜ。まあ、俺達が原因の世代でもあるがな……ハハハ。特にここ数年は浅成学園の生徒の恋愛のいざこざは酷いもんだ。俺の病院が今回の件を冷静に対処できたのは、もう何十回と対処してきたからだ。生徒同士の傷害、中絶、淫行。俺の病院の顧客は学園のOBやOGが大半だ。その関係で俺は学園の不祥事をお前以上に知ってるんだよ。お前が思っている以上の酷さだってこともな」
「すまん……」
「謝るなよ。お前が知らないのも無理ない事だ。だけどな、もっと面白い話しを教えてやろうか?」
岸はジト目で悪戯小僧のようにニタアと笑っている。…………絶対に聞けば後悔するやつだ。
「お前さ、ガチのマジで聞いた話だから他人事じゃないから気を付けろよ?」
「っ!」
俺は聞きたくないと両耳に手をかぶせたい衝動に駆られるが我慢する。
「伊集院家の令嬢が再婚して子供が出来たらしい。で、再婚相手がどっかの国の貴族出身らしい」
「……は?」
「驚くよな。鈴木の元奥さん、子供が出来たんだ。あれだけ『石女』やら『子供の産めない女』やら言ってたってのにな。鈴木の言葉を鵜呑みにした結果がコレだ。ざまあないな!」
「……」
ちょっと何を言ってるかワカラナイ。
いや、突然「伊集院家の令嬢が再婚した」とか「子供ができた」とか……なんだよ、それ。
子供ができないから離婚したんだろ!?
だから離婚の時に俺達は色々と手伝ったんだ!それが間違いだと!?
「因みに、鈴木の元奥さんの件も社交界では有名だ。当時のフェイクニュースも合わせて俺達を名指して非難している。まともな親なら浅成学園に子供を入学させようなんて思わないんじゃないか?それはそうだろうな。何の瑕疵もない名家の令嬢を寄ってたかって『使えない石女』呼ばわりしている人間達の母校に我が子を入れる親はいないさ。しかも偽の噂を流した事もいつの間にかバレているしな」
「……」
「浅成学園の卒業生は社交界で疎外されてるんだよ。一見そうとは分からないようにな。だから気付いてる奴は少ない。あからさまにされてる訳じゃない分、認識しづらいときてる」
苦笑する岸は、まるで疲れたサラリーマンのように見えた。
何一つ知らなかった俺は岸の話しを黙って聞くしかなく、久しぶりの友人との酒は今までになく苦かった。
ここまで話されて何も感じないわけがない。
勿論、岸の話しを全部鵜呑みにするには現実感がなかった。それでも調べないわけにはいかない。知らなかった頃とは違う。
俺はその道のプロに依頼した。
そして数週間後。
俺は、現実を知った。
今まで知らなかった現実。いや、違う。知ろうとしなかった現実を目の前に突き出された瞬間だった。
「すまん……」
「謝るなよ。お前が知らないのも無理ない事だ。だけどな、もっと面白い話しを教えてやろうか?」
岸はジト目で悪戯小僧のようにニタアと笑っている。…………絶対に聞けば後悔するやつだ。
「お前さ、ガチのマジで聞いた話だから他人事じゃないから気を付けろよ?」
「っ!」
俺は聞きたくないと両耳に手をかぶせたい衝動に駆られるが我慢する。
「伊集院家の令嬢が再婚して子供が出来たらしい。で、再婚相手がどっかの国の貴族出身らしい」
「……は?」
「驚くよな。鈴木の元奥さん、子供が出来たんだ。あれだけ『石女』やら『子供の産めない女』やら言ってたってのにな。鈴木の言葉を鵜呑みにした結果がコレだ。ざまあないな!」
「……」
ちょっと何を言ってるかワカラナイ。
いや、突然「伊集院家の令嬢が再婚した」とか「子供ができた」とか……なんだよ、それ。
子供ができないから離婚したんだろ!?
だから離婚の時に俺達は色々と手伝ったんだ!それが間違いだと!?
「因みに、鈴木の元奥さんの件も社交界では有名だ。当時のフェイクニュースも合わせて俺達を名指して非難している。まともな親なら浅成学園に子供を入学させようなんて思わないんじゃないか?それはそうだろうな。何の瑕疵もない名家の令嬢を寄ってたかって『使えない石女』呼ばわりしている人間達の母校に我が子を入れる親はいないさ。しかも偽の噂を流した事もいつの間にかバレているしな」
「……」
「浅成学園の卒業生は社交界で疎外されてるんだよ。一見そうとは分からないようにな。だから気付いてる奴は少ない。あからさまにされてる訳じゃない分、認識しづらいときてる」
苦笑する岸は、まるで疲れたサラリーマンのように見えた。
何一つ知らなかった俺は岸の話しを黙って聞くしかなく、久しぶりの友人との酒は今までになく苦かった。
ここまで話されて何も感じないわけがない。
勿論、岸の話しを全部鵜呑みにするには現実感がなかった。それでも調べないわけにはいかない。知らなかった頃とは違う。
俺はその道のプロに依頼した。
そして数週間後。
俺は、現実を知った。
今まで知らなかった現実。いや、違う。知ろうとしなかった現実を目の前に突き出された瞬間だった。
96
お気に入りに追加
4,561
あなたにおすすめの小説
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢ルーナは、婚約者で公爵令息エヴァンから、一方的に婚約破棄を告げられる。この1年、エヴァンに無視され続けていたルーナは、そんなエヴァンの申し出を素直に受け入れた。
傷つき疲れ果てたルーナだが、家族の支えで何とか気持ちを立て直し、エヴァンへの想いを断ち切り、親友エマの支えを受けながら、少しずつ前へと進もうとしていた。
そんな中、あれほどまでに冷たく一方的に婚約破棄を言い渡したはずのエヴァンが、復縁を迫って来たのだ。聞けばルーナを嫌っている公爵令嬢で王太子の婚約者、ナタリーに騙されたとの事。
自分を嫌い、暴言を吐くナタリーのいう事を鵜呑みにした事、さらに1年ものあいだ冷遇されていた事が、どうしても許せないルーナは、エヴァンを拒み続ける。
絶対にエヴァンとやり直すなんて無理だと思っていたルーナだったが、異常なまでにルーナに憎しみを抱くナタリーの毒牙が彼女を襲う。
次々にルーナに攻撃を仕掛けるナタリーに、エヴァンは…

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!
さこの
恋愛
婚約者の第五王子フランツ殿下には好きな令嬢が出来たみたい。その令嬢とは男爵家の養女で親戚筋にあたり現在私のうちに住んでいる。
婚約者の私が邪魔になり、身分剥奪そして追放される事になる。陛下や両親が留守の間に王都から追放され、辺境の町へと行く事になった。
100キロ以内近寄るな。100キロといえばクレマン? そこに第三王子フェリクス殿下が来て“グレマン”へ行くようにと言う。クレマンと“グレマン”だと方向は真逆です。
追放と言われましたので、屋敷に帰り準備をします。フランツ殿下が王族として下した命令は自分勝手なものですから、陛下達が帰って来たらどうなるでしょう?
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる