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~一度目~
19.浅田理事長side
しおりを挟む「それで?そちらにいるお嬢さんが妊娠して、そのお腹の子の父親が“大場家の息子”だと仰るんですね」
修羅場だ。
三者面談という名の修羅場に俺はいた。
本当は居たくなかったが、学園の責任者という立場がそれを許してくれない。
しかもだ、女子生徒が名指しした「父親」。「久志」の名前をもつ生徒が「大場久志」だったとは……。どうしてこうなるんだ!!!
大場……。
お前の息子はやらかしたぞ。
ここには居ない友人にエールを送った。
因みに、この場所に父親だと名指しされた大場久志はいない。いるのは保護者の母親だけだ。
「ところで、お嬢さん」
「なに?」
「“大場家の息子”との恋人関係だと貴女は言いましたけど、それは何時頃からの関係なのかしら?」
「去年の夏からよ」
「間違いありませんか?」
「間違いないわよ!」
「そうですか。それではお聞きしますわ。貴女は“大場家の息子”と、どのようにして出会えたの教えてくださる?」
「はっ!? 同じ学校なんだから出会うも何もないでしょう?」
「参考までですよ」
「……彼とは去年同じクラスメイトだったのよ。それで家の事で悩んでいるみたいだったから色々相談に乗ってあげてって。久志ってリーダータイプなんだけど妙に繊細っていうか――――……」
そこからノンストップ状態で馴れ初めの話しから初めてのデート、初体験と、こっちが聞いてもいないのにペラペラと喋り続けた。途中で大場夫人が「うんうん」とニコニコ笑顔で相槌を打つものだから余計にヒートアップしていく始末だ。
これはもはや惚気だろ?
大場夫人が機嫌よく聞いてくれているからだろうか?彼女も乗りに乗って話している。これは……もしかすると……もしかするのか?
わからん。
大場夫人の考えが全く分からない。
このトンデモナイ生徒と息子を結婚させるのか?
妊娠させた責任を取らせるために?
だが、果たして本当に胎児が大場久志の血を引いていると断言できるのか?
あやしいものだ。
それでも絶対に違う、とも言い切れない。
こればかりは男の領域外だ。女は自分のお腹を痛めて我が子を産む。それに対して男は「貴男の子よ」と言われればそれを信じるしかない。仮に違う、と思ってもだ。DNAを調べない限り分からない。夫婦や恋人関係なら直の事調べないだろうしな……。内密に調べてもしバレたらそれはそれで人間関係が壊れる。
あやしいといえば……女子生徒の会話が将来の希望的観測。
ソレは加害者の男子生徒にも言ったセリフと全く同じだった。
そのまま別次元の話しになりそうになり、大場夫人が「待った」を掛けた。
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