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~一度目~
18.浅田理事長side
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数日でゲッソリと痩せた気がする。つかれた。現実は無情だ。
「本当なのか?例の女子生徒が妊娠しているのは?」
「はい……残念ながら事実です」
「そうか……」
「はい……」
沈黙するしかない。
校長も先ほど病院側から連絡を貰ったばかりだ。どう対応すればいいのか分からないのだろう。それは俺も同じだ。こんな事、今までなかった。俺が知らないだけかもしれないが……。それでもどうしてこうも次から次へと重なるんだ!
「それで、生徒の方はどうなんだ?」
「病院側は未成年というのを考慮され、ご両親にだけ話されたようです」
まあ、妥当なところだろう。
いきなり本人に言う事はできない。しかも学生の身だ。親に伝えてそれから本人に伝えるのだろう。隠し事はできないしな。
「起きてしまった事はしかたない」
「はい」
「不幸中の幸いというか、生徒が運ばれた病院は我が校のOBの病院だ。しっかりと対応はしてくれるだろう」
「学園側からも『よろしくお願いします』と伝えてあります」
「なら大丈夫だ。ただ、子供の父親は誰だ?」
「……解りません。こればかりは本人に聞かない事にはなんとも……」
校長は言葉を濁しているが「父親候補」の男子生徒が多過ぎて判別できないのが現実だろう。そもそも、本人も把握していないのではないか?それともちゃんと解っているのか?不安だ。
この不安は的中した。
「久志の子よ。間違いないわ」
誰だ?それ?
俺の頭の中はクエスチョンマークで一杯だ。それは俺だけじゃない。一緒に来ている校長もポカンとしている。それはそうだ。「久志」と名前だけ言われても解らん。こっちで把握している彼女の子供の「父親候補」にその名前の人物はいなかった。念のために持ってきた調査報告書を広げて確認したが、やはり該当する名前はなかった。頼むからフルネームで教えてくれ。
「愛、名前だけ言われてもお母さん分からないわ。誰なのその人は?同じ学校の子?それとも……」
ナイスだ!
お母さん!
我々では決して言えない事を言ってくれる。
「やだ!勿論学園の生徒よ!」
……そうか。
そうだろうな。分かってはいたが。やはりうちの学園の生徒か。
「お気を確かに」
校長が小声で言ってくる。いかん。気が遠くなっていた。
これも目の前の現実を受け入れたくない「人間」の性なのだろう。何故、俺がこんな苦労しないといけないんだ。
「ねぇ、お母さん。そんなことより、お腹空いた」
本当に呑気だな。こんな状況で腹を空かす娘って珍しいよな?普通、妊娠を告げられて、こんなに平然としていられるものか?「本当に?嘘でしょ?」って驚愕するものじゃないのか?なんで、そんなに冷静なんだよ? 俺なら間違いなく取り乱す。だってまだ高校三年生だぞ!これからの人生が掛かってるんだぞ?そんな冷静になれるか?いや!ならない!これからどうするか考えるし、相手の男を呼びだす!
「ねえ!聞いてる?私、お腹空いちゃった!」
「え、えぇ……解ったわ。食事を運んでもらいましょう。愛、食事がすんだら相手の男の子の事を詳しく教えて。相手の親御さんとも話さないといけないしね」
「うん、いいわよ」
上機嫌で返事をしているが、そんな呑気な事じゃないぞ!分っているのか!!
「本当なのか?例の女子生徒が妊娠しているのは?」
「はい……残念ながら事実です」
「そうか……」
「はい……」
沈黙するしかない。
校長も先ほど病院側から連絡を貰ったばかりだ。どう対応すればいいのか分からないのだろう。それは俺も同じだ。こんな事、今までなかった。俺が知らないだけかもしれないが……。それでもどうしてこうも次から次へと重なるんだ!
「それで、生徒の方はどうなんだ?」
「病院側は未成年というのを考慮され、ご両親にだけ話されたようです」
まあ、妥当なところだろう。
いきなり本人に言う事はできない。しかも学生の身だ。親に伝えてそれから本人に伝えるのだろう。隠し事はできないしな。
「起きてしまった事はしかたない」
「はい」
「不幸中の幸いというか、生徒が運ばれた病院は我が校のOBの病院だ。しっかりと対応はしてくれるだろう」
「学園側からも『よろしくお願いします』と伝えてあります」
「なら大丈夫だ。ただ、子供の父親は誰だ?」
「……解りません。こればかりは本人に聞かない事にはなんとも……」
校長は言葉を濁しているが「父親候補」の男子生徒が多過ぎて判別できないのが現実だろう。そもそも、本人も把握していないのではないか?それともちゃんと解っているのか?不安だ。
この不安は的中した。
「久志の子よ。間違いないわ」
誰だ?それ?
俺の頭の中はクエスチョンマークで一杯だ。それは俺だけじゃない。一緒に来ている校長もポカンとしている。それはそうだ。「久志」と名前だけ言われても解らん。こっちで把握している彼女の子供の「父親候補」にその名前の人物はいなかった。念のために持ってきた調査報告書を広げて確認したが、やはり該当する名前はなかった。頼むからフルネームで教えてくれ。
「愛、名前だけ言われてもお母さん分からないわ。誰なのその人は?同じ学校の子?それとも……」
ナイスだ!
お母さん!
我々では決して言えない事を言ってくれる。
「やだ!勿論学園の生徒よ!」
……そうか。
そうだろうな。分かってはいたが。やはりうちの学園の生徒か。
「お気を確かに」
校長が小声で言ってくる。いかん。気が遠くなっていた。
これも目の前の現実を受け入れたくない「人間」の性なのだろう。何故、俺がこんな苦労しないといけないんだ。
「ねぇ、お母さん。そんなことより、お腹空いた」
本当に呑気だな。こんな状況で腹を空かす娘って珍しいよな?普通、妊娠を告げられて、こんなに平然としていられるものか?「本当に?嘘でしょ?」って驚愕するものじゃないのか?なんで、そんなに冷静なんだよ? 俺なら間違いなく取り乱す。だってまだ高校三年生だぞ!これからの人生が掛かってるんだぞ?そんな冷静になれるか?いや!ならない!これからどうするか考えるし、相手の男を呼びだす!
「ねえ!聞いてる?私、お腹空いちゃった!」
「え、えぇ……解ったわ。食事を運んでもらいましょう。愛、食事がすんだら相手の男の子の事を詳しく教えて。相手の親御さんとも話さないといけないしね」
「うん、いいわよ」
上機嫌で返事をしているが、そんな呑気な事じゃないぞ!分っているのか!!
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