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~一度目~

13.晃司side

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 娘が入学試験に落ちた。
 俺の娘だぞ?

 ありえないだろ!?

 幼稚園、小学校、そして今度の中学校と立て続けに落ちるなんて……。
 最初は金を積んで入学させようとしたが学園側から断られた。何故だ!?

 だろう!!

 何のために今まで高い金寄付金を払ってきたと思っているんだ!!!

 ふざけるな!!











「言いたいことはそれだけか?なら、さっさと帰ってくれ」

「なんだと!?」

「こっちは忙しいだ」

「俺だって忙しいに決まっているだろ!!」

「そうか。こんなところに受験生の親が自分の子供が不合格だと分かってイチャモンを付けにしたのだからな。てっきり暇な親だとばかり思っていたが?」

「浅田……」

 母校の理事長は、何十年来の友人だ。クラスメイトであり、同じ生徒会メンバー。そんな男からの返答は俺が予想もしていなかった冷淡なものだった。

「鈴木、お前がどんなに金を積もうが裏口入学はさせられない」

「なっ!?」

「ああ、それと一応言っておくが、高校や大学も我が校の入学は諦めてくれ」

「な、なにを言うんだ……」

「お前の娘の成績だと特待生は無理だろうが、一応言っておかないとな」

「浅田…………ひとつ聞きたい」

「なんだ?」

「美咲が、俺の娘が落ちた理由は何だ?この学園は金さえ払えば誰でも入学できるはずだ。それが何故だ?」

 どうしても納得できなかった。

「簡単な話しだ。この学校の試験以前の問題だからだ。そもそも受験資格すらない。ただそれだけだ」

「なん……だと?そんなわけ無いだろ?」

 俺は思わず浅田の襟を掴み上げていた。
 そんな俺の腕を払うと浅田はため息を吐いた。その態度に頭に血が上った俺は、再び浅田に食ってかかる。

「貴様!!いい加減にしろ!!!俺の娘に問題はないはずだ!!!」

 すると浅田は、また呆れたようにため息を吐く。

「いいか、鈴木?この学園はもう金を払えば誰でも入学できる学校じゃなくなったんだ。それも十年以上前からな。知らなかったのか?」

「知らん!!」
 俺が即答したことで浅田の顔色が変わる。
「鈴木……」
 そんな俺に再び浅田は大きく息を吐き出すと……俺を哀れみの目で見た。

「どこかの夫婦のせいでこの学園の評判は最悪だ。社交界で何て呼ばれているか知って……いや。お前の事だ。知らないだろうな。兎も角、良家のまっとうな子弟はこの学園を選んだりしないんだよ。そうなると学園は当然経営難に陥る。かと言って素行不良な成金の子供を入れれば更に評判は悪化する。こんな状況の中、この学園を維持するために思いつく手はひとつだ。誰もが憧れる高い理念を持つ素晴らしい学園と認識させることで入学者数を増やし、悪い噂を打ち消すことだ」

 浅田は「つまりだ……」と言葉を繋げた。

「この学園では受験生だけでなく両親の素行もチェックされているんだよ」

「馬鹿な!?」

 そんな話は聞いた事が無い。
 いつからだ?
 いつからこの学園は変わってしまったんだ!?

「それとお前の娘の事だが、今からでも校則の厳しい学校に転入するか留学を検討した方がいいかもしれないぞ」

「……急に何だ?」

「これはとしての最後の忠告だ」

 そう言うと、浅田は名簿のようなものを取り出すと俺に手渡してきた。

「これは?」

 渡された物の正体がわからず思わず質問すると、「自分で見ろ」とばかりに顎をしゃくった。仕方なく見ると、そこに書かれていた内容に目を疑った。

「……な、な……」

「分かったか?お前の娘はでそもそもこの学園に入学する権利がない」

「な、何かの間違いじゃないのか?」

「限りなく正確な情報だ」

「そん……」

 そんなの言い掛かりだ!! 叫びたいが衝撃のあまり声にならない。俺が自分の言葉に驚愕し次の句を告げられずにいるのを見た浅田はため息をひとつ吐いた。

「鈴木、お前の娘はまだ小学生だ。まだ取り返しがきく年齢だ。その資料は選別にやるよ。それ持って家族と娘とで話し合うんだな」

 そう言うと、俺の返事など聞きもしなかった。

「いいな?お前の娘にはこの学園は無理だ」

 そんな台詞を最後に浅田は俺を部屋から追い出したのだった。


 
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