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~一度目~
8.陽向side
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「早く跡取りが見たいわ。陽向さん、孫はまだかしら?」
一日に一回は言われるセリフ。
お義母さん「孫攻撃」が凄い。そんなに孫が欲しいのねって感心するくらい。
でもねぇ、こればっかりはどうしようもない。
だって妊娠する気配がないんだもん。
「まだですねぇ、晃司によく言って聞かせときます」
「陽向さん!?晃司はいいのよ!陽向さんの事よ!」
もう何回目だろう。このやりとり。お義母さんってちょっと変わってる。
「でも、お義母さん。こういうことは夫婦二人の問題ですよ?私一人が頑張ったところでどうにもなりませんよ。一人じゃどう考えても産めませんから」
「……そ、それはそうだけど……」
言葉を濁すお義母さんについ笑ってしまう。
「もちろん、子供は好きですけど。絶対に必要ってわけじゃありませんし。こればっかりは神様の思し召しですから。それにあんまり『孫、孫』言ってると嫁いびりしてるって勘違いされちゃいますよ?」
「なっ!?」
お義母さんはショックを受けたのか口をパクパクさせている。
うん、なんかちょっとかわいいかもしれない。
「ご近所さんの間でもお姑さんの愚痴が凄いんですから。結構、いびられてるみたいで。この前も私に『寝たきりになった時がやり返すチャンスだ。嫁いびりされた分、倍返しする予定だから今から楽しみだ』って言ってましたし!」
「……」
「そうそう!二軒先のご近所さんなんて、旦那さんの実家に遊びに行ったら凄い嫌がらせを受けたみたいなんです。その人は海老や蟹のアレルギー持ちなんですけど、当然その事は旦那さんの実家も知ってた筈なんです。なのに食卓には海老と蟹三昧。食べられる物なんて白米だけだったんですって。笑えますよね」
「……」
「しかもですよ?それを食べるように勧めてくるんですって。笑顔付きで!」
「……」
「これって虐めを通り越して犯罪ですよね。旦那さんもお舅さんも誰も助けてくれない上に『折角用意してくれたのに食べないのか?』ってお姑さんの味方をするんです。アレルギー体質だって何度話しても納得してくれないみたいで、最近、離婚を考えているみたいなんです」
「…………」
「今のところは、ただ勧めてくるだけですんでいるみたいですけど、それがいつ別の物とすり替えられて知らないうちに食べさせられるか分かったものじゃないって言ってましたから、相当ですよね。奥さんの御両親が早くに亡くなっているから味方がいないって考えてるっぽいんですよ。そんな訳ないのに。だって奥さんの親戚の人って結構多いんですよ?普段会わないからって連絡を取っていないって思い込んでるんですかね?そんな筈ないじゃないですか、って話ですよ。逆に親を早くに亡くした奥さんに対してメチャクチャ過保護だったみたいで、親戚一同は怒り心頭。旦那さん有責で弁護士と話し合いがされてるみたいなんです」
「…………」
「近々、離婚報告が来るんじゃないかって思ってるんですよね。そうなると旦那さん、この町内で暮らしていけないのに馬鹿ですよね。今住んでいる家だって元々奥さんの家だし。名義だって奥さん。追い出されるのは自分だって解ってないんですかね?どう思います、お母さん?」
「…………そうね。それは追い出されても仕方ないわね」
「ですよね~~!」
「それはそうと、陽向さん。貴女……随分ご町内に詳しいわね」
「そうですか?普通だと思いますよ?」
「そうかしら?」
「そうですよ!」
「…………」
お義母さんはその後もなんだかずっと黙ったままだった私の御町内情報を聞いていた。たまに相槌を打つだけであとは黙したまま。
何か変な事言ったかな?ちょっとお義母さんを困らせちゃったとか?もしかして御町内の話しってお義母さんとって地雷があるのかもしれない……気を付けよ。
それにしても孫か。
やっぱり一度、晃司と話し合った方がいいかも。
一日に一回は言われるセリフ。
お義母さん「孫攻撃」が凄い。そんなに孫が欲しいのねって感心するくらい。
でもねぇ、こればっかりはどうしようもない。
だって妊娠する気配がないんだもん。
「まだですねぇ、晃司によく言って聞かせときます」
「陽向さん!?晃司はいいのよ!陽向さんの事よ!」
もう何回目だろう。このやりとり。お義母さんってちょっと変わってる。
「でも、お義母さん。こういうことは夫婦二人の問題ですよ?私一人が頑張ったところでどうにもなりませんよ。一人じゃどう考えても産めませんから」
「……そ、それはそうだけど……」
言葉を濁すお義母さんについ笑ってしまう。
「もちろん、子供は好きですけど。絶対に必要ってわけじゃありませんし。こればっかりは神様の思し召しですから。それにあんまり『孫、孫』言ってると嫁いびりしてるって勘違いされちゃいますよ?」
「なっ!?」
お義母さんはショックを受けたのか口をパクパクさせている。
うん、なんかちょっとかわいいかもしれない。
「ご近所さんの間でもお姑さんの愚痴が凄いんですから。結構、いびられてるみたいで。この前も私に『寝たきりになった時がやり返すチャンスだ。嫁いびりされた分、倍返しする予定だから今から楽しみだ』って言ってましたし!」
「……」
「そうそう!二軒先のご近所さんなんて、旦那さんの実家に遊びに行ったら凄い嫌がらせを受けたみたいなんです。その人は海老や蟹のアレルギー持ちなんですけど、当然その事は旦那さんの実家も知ってた筈なんです。なのに食卓には海老と蟹三昧。食べられる物なんて白米だけだったんですって。笑えますよね」
「……」
「しかもですよ?それを食べるように勧めてくるんですって。笑顔付きで!」
「……」
「これって虐めを通り越して犯罪ですよね。旦那さんもお舅さんも誰も助けてくれない上に『折角用意してくれたのに食べないのか?』ってお姑さんの味方をするんです。アレルギー体質だって何度話しても納得してくれないみたいで、最近、離婚を考えているみたいなんです」
「…………」
「今のところは、ただ勧めてくるだけですんでいるみたいですけど、それがいつ別の物とすり替えられて知らないうちに食べさせられるか分かったものじゃないって言ってましたから、相当ですよね。奥さんの御両親が早くに亡くなっているから味方がいないって考えてるっぽいんですよ。そんな訳ないのに。だって奥さんの親戚の人って結構多いんですよ?普段会わないからって連絡を取っていないって思い込んでるんですかね?そんな筈ないじゃないですか、って話ですよ。逆に親を早くに亡くした奥さんに対してメチャクチャ過保護だったみたいで、親戚一同は怒り心頭。旦那さん有責で弁護士と話し合いがされてるみたいなんです」
「…………」
「近々、離婚報告が来るんじゃないかって思ってるんですよね。そうなると旦那さん、この町内で暮らしていけないのに馬鹿ですよね。今住んでいる家だって元々奥さんの家だし。名義だって奥さん。追い出されるのは自分だって解ってないんですかね?どう思います、お母さん?」
「…………そうね。それは追い出されても仕方ないわね」
「ですよね~~!」
「それはそうと、陽向さん。貴女……随分ご町内に詳しいわね」
「そうですか?普通だと思いますよ?」
「そうかしら?」
「そうですよ!」
「…………」
お義母さんはその後もなんだかずっと黙ったままだった私の御町内情報を聞いていた。たまに相槌を打つだけであとは黙したまま。
何か変な事言ったかな?ちょっとお義母さんを困らせちゃったとか?もしかして御町内の話しってお義母さんとって地雷があるのかもしれない……気を付けよ。
それにしても孫か。
やっぱり一度、晃司と話し合った方がいいかも。
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