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28.元夫達の現状1

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 私は今、フランスに来ています。
 三日前はイタリアに滞在していました。
 傷付いた心を癒すのは、時間ですわね。それと環境だとつくづく感じました。


 そうそう、お母様のメールで判明した事ですが、彼ら元夫達はとても愉快な事になっているようですわ。


「折角のダンスパーティーですのに……踊らないってなんでしょう?」

「『踊らない』のではありません。『』のです」

 私の呟きに応えたのは、河井さん。私の護衛として付いてきてくださいました我が家の運転手です。

「そんな事があるのかしら?彼女は例の学校に外部入学された方ですわ。大学からの入学とは違って高校からですもの。間違いなく礼儀作法の授業を受けている筈ですのに……」

 私には不思議で仕方ありません。
 実際に教育を受けていない立場ではないのです。少なくとも最低限の礼儀作法を受けているにも拘わらず「できない」となりますと問題ですわ。
 鈴木家の方々が彼女を受け入れた理由の一つは「礼儀作法ができている」と判断された筈ですもの。その根拠は「自分達の息子と同じ学校に通っていたから」という安易なものだったとしてもです。そこにあったのは学校教育に対する信頼。一般家庭出身から嫁いで来たとしても「令嬢教育は施されている」と思われたからでしょう。

 まぁ、流石に私と同程度を期待してはいないと思いますが……。

 それでも「知っていて当然の常識はある」と、少なくとも鈴木家の方々は思い込んでいた訳です。


「鈴木家の人達も大変らしいですよ。新しい花嫁の教育はどうなっているのか、と各方面から詰め寄られているらしいですから。ご子息の通っていた学園の方に問い合わせもされているとか」

「あら、そんな事になっていましたの?初耳ですわ。では今頃鈴木家は大慌てで対処なさっているのかしら?」

 私は、そう考えました。
 そしてそれは正解のようです。

「学校側に責任転嫁なさっているようです」

「それはまた……」

 面倒になってきましたわね。
 学校側もいい迷惑でしょう。しかし、果たしてソレだけの責任を学校に被せる事が許されるのでしょうか? 今回の件に関しましては鈴木家の問題です。既に卒業された学生の淑女教育を何故学校が管理なさっていると思うのでしょう?これが卒業して直ぐならばまだしも……。


「茶会や催しに参加なさっては恥を晒しているようです。そのせいか、鈴木家は改めてご子息の嫁に『礼儀作法』を学ばせているようですが、やはり結果は芳しくないようです。それに加えてご子息の評判も落ちていますから、鈴木家の若夫婦を嫌煙する方達が増えているようです」

「あら……まぁ、それは……」


 自業自得ですわね。
 まったく同情はできませんが……。



 それから一週間後、茶道・華道・香道の各家元から「鈴木家とは付きあいを改める取りやめる」と連絡が来たそうです。
 何をどうすれば各家元達からを言い渡されるのでしょう。不思議でなりません。
 公にされていませんが、どの家元も「酷い目にあった」としか仰らないそうですわ。
 その言葉に全てが込められていると思うのは私だけでしょうか?

 お母様経由の情報ですけれどね。

 なお、ここで泣き寝入りをしなかった各家元達は一部の人達を除いて「英断である」と称賛されているそうです。

 本当に何をしたんでしょうね。




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