27 / 130
27.社長秘書side
しおりを挟むうちの社長が離婚して再婚した。何を言っているのか分からないだろうけど、これ本当の話。しかもスピード婚。離婚して再婚するまでの期間が僅か二ヶ月。ブラックジョークだと思いたいのに……現実って残酷。
しかも再婚相手があの早川陽向だもん。最悪。仕事は出来るんだけどねぇ。ただちょっと空気を読めないって言うか、無神経って言うか……。とにかく女子社員のウケはあんまり良くないのよねぇ。良くないって言えば社長もなんだけど……。
「ねぇねぇ、聞いた?早川さんが社長と結婚した話」
「勿論」
「愛人から本妻になるなんてねぇ」
「今度、社長夫人として挨拶に来るって言うじゃない。勘弁してほしいよね」
「ホント。早川さんと社長の関係なんてこっちはとっくの昔に知ってるって」
「あれだけ会社で盛ってたらねぇ」
「風紀が乱れるとは言わないけどさぁ。TPOってものがあるでしょうに」
休憩室から聞こえてくる女子社員達の会話には一切の遠慮がなかった。
恐らく彼女達もアレを見た事は容易に想像できた。
せめて社長室だけでしておけばここまで周知される事もなかったのに。
はぁ……頭が痛い。
相手が社長でなければ解雇通知を渡される案件よね。
勤務中だというのに。
あんなものを見せられて。見た方が堪ったものじゃないわ。
「私さぁ、資料室で見ちゃったんだよね」
「え?私、深夜の営業部だよ」
「なんで深夜に会社にいるのよ。それに何んで営業部なのかな~~、ミカちゃん」
「そ、それは……」
「ミカは、営業部の森君と付き合ってるんだもんね!」
「ぅ~~~~…………」
「あ!それで」
「そうそう、彼氏を迎えに行ったんでしょう?」
「あー、その時に見たんだ」
「て、事はさぁ。森君も見ちゃった口?」
「ぅ~~……。森君、慣れた様子だったから……たぶん。営業部だと暗黙の了解になってるみたいだった」
「うわっ!」
「それはキツイ!」
知らなかった事実が発覚してしまった。
これ……猥褻行為で訴えられないかしら?
営業部の者達が訴えたら負けるわ。社長……。そもそも、どうして会社でそういう行為をするの!帰ってからすればいいでしょう!!ここは仕事をする場所!!!
「営業部。気の毒過ぎる。可哀想に……」
「う~~ん。そうでもないかも?」
「どういうこと?ミカちゃん」
「……二人の行為を見てヤル気になる人が一定数いるんだって…………言ってた」
「「……」」
「なんか興奮するって……」
「「…………」」
「多分、相手が相手だからだと思うけど……」
「「………………」」
「今じゃあ、二人がそういう雰囲気になりやすいようにしてるって……。それで隠れて見てるって……ワザと音を響かせたりして焦った二人の姿が堪らないって……」
「……うちの会社、大丈夫かな」
「…………んー、分かんない……」
「……そんなんが社長夫妻か……終わってない?この会社」
「「……」」
女子社員達が休憩室で大きな溜息をついたのが分かった。
そしてそれは、その場に居た全員の気持ちを表しているとも言えた。
どれだけの人数が社長たちの濡れ場を目撃したのだろう。
ハァ……。
彼女達の話からすると相当の人数が見ていると考えて間違いないわね。
この分じゃ、誰かが撮影していてもおかしくないわ。
ハァ……。
最近、溜息が増えた原因は間違いなく社長だった。
秘書の仕事はやりがいもあって良いんだけど……。
この会社も好きなんだけど……。
本当に、どうしてこうなったのかしら?
100
お気に入りに追加
4,561
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢ルーナは、婚約者で公爵令息エヴァンから、一方的に婚約破棄を告げられる。この1年、エヴァンに無視され続けていたルーナは、そんなエヴァンの申し出を素直に受け入れた。
傷つき疲れ果てたルーナだが、家族の支えで何とか気持ちを立て直し、エヴァンへの想いを断ち切り、親友エマの支えを受けながら、少しずつ前へと進もうとしていた。
そんな中、あれほどまでに冷たく一方的に婚約破棄を言い渡したはずのエヴァンが、復縁を迫って来たのだ。聞けばルーナを嫌っている公爵令嬢で王太子の婚約者、ナタリーに騙されたとの事。
自分を嫌い、暴言を吐くナタリーのいう事を鵜呑みにした事、さらに1年ものあいだ冷遇されていた事が、どうしても許せないルーナは、エヴァンを拒み続ける。
絶対にエヴァンとやり直すなんて無理だと思っていたルーナだったが、異常なまでにルーナに憎しみを抱くナタリーの毒牙が彼女を襲う。
次々にルーナに攻撃を仕掛けるナタリーに、エヴァンは…

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!
さこの
恋愛
婚約者の第五王子フランツ殿下には好きな令嬢が出来たみたい。その令嬢とは男爵家の養女で親戚筋にあたり現在私のうちに住んでいる。
婚約者の私が邪魔になり、身分剥奪そして追放される事になる。陛下や両親が留守の間に王都から追放され、辺境の町へと行く事になった。
100キロ以内近寄るな。100キロといえばクレマン? そこに第三王子フェリクス殿下が来て“グレマン”へ行くようにと言う。クレマンと“グレマン”だと方向は真逆です。
追放と言われましたので、屋敷に帰り準備をします。フランツ殿下が王族として下した命令は自分勝手なものですから、陛下達が帰って来たらどうなるでしょう?
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる