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23.とある女社長side
しおりを挟む高校の卒業式が終わったその日の夜、何故か父の書斎に呼ばれた。中に入ると、厳しい目で私を見る両親がいた。
「お、お父様……お母様……?」
険しい表情の二人に気圧され、言葉が上ずる。
すると父が口を開いた。
「三日後、アメリカに行ってもらう」
何を言われたのか分からなかった。
何故今になって私が海外に……それもアメリカに行かされるのか全く分からなかった。
「倫子、お前はもう少し高梨家の娘としての自覚を持て」
「お父様?」
「どうやら言っている意味が理解出来ていないようだな」
「……」
心底失望したと言わんばかりの表情の父に代わって母が話し出す。
「モラトリアムの時間は終わった、とお父様は仰っているのよ、倫子さん。貴女にはアメリカの大学に通って貰います」
「お母様!?急に何を言いんですか!?」
「急ではありません。以前から準備していた事です」
「どうして!?」
何故なの……?
私は皆と一緒に大学に行くはずだった。なのに、何故? どうして……今、言うの?こんな時期に留学だなんて……。
「……り、理由を教えてくださいませんか……?」
私は無理矢理笑みを作りそう言う。
「それを貴女が聞くのですか?自分の胸にお聞きなさい」
「……!?」
胸に聞く、とは何?私の知らない何かを、両親は知っている。そう感じた。でも、それが何なのか分からない。
ただ、私は両親から失望されている。その事だけは明確に理解した。
私がショックを受けたのを感じ取ったのか母が優しく声をかけてくる。
「勘違いしてはいけませんよ。私達にとって貴女は可愛い娘です。ですからおかしな人達とお付き合いさせたくはないのです。娘が道を誤れば正すのが親というもの。倫子さんには、今一度自分の立場を自覚して貰いたいと思っているのです。そのためには、今、日本にいるのは宜しくありません。ましてや、あの大学に通うなど以ての外。新しい環境で正しい友人をお作りなさい」
「で、でも留学なんていきなり……」
「それくらい普通の親ならば当然だ!!」
普段優しい父から怒号が発せられた。あまりの事に私は呆然とするしか出来ない。
そんな様子の私を父は一瞥し話を続けた。
「私情で職権乱用する人間など財界には必要ない。代わりはいくらでもいるのだ!」
「お父様……?一体何のお話を……」
「お前達が生徒会役員と言う事で権利を乱用していた事を知らないとでも思っているのか!お前達のせいで学園を去った者達だっている!その事を理解していないと?少しは会社の事も考えて行動しろ!!一足早く留学していった生徒の親から皮肉を言われたぞ!!『次期高梨家の当主はお友達にとても便宜を図って差し上げるのようですね』とな!!!」
父の言う事はサッパリ分からなかった。
便宜を図る!?
何のことなの!
私はそんな事していない!!
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