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21.とある女社長side
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妨害がなかった訳じゃない。
それでも二人は大勢の生徒に祝福されていた。
数々の誹謗中傷にも負けなかった陽向。
そんな恋人を心身ともに守る鈴木君。
真っすぐで素直な陽向は愛情表現も素直だった。
よく、人前で堂々と「大好き」と言う。人目を憚ることのないスキンシップは見ている方が恥ずかしくなってしまう程だった。陽向の言葉は真っすぐで、それに鈴木君は照れくさくしながらも応えていた。
傍から見ても鈴木君は陽向を大切にしている事が分かった。
彼女を見る目が他とは全く違ってとても優しい。それだけじゃない。陽向の傍にいる鈴木君はリラックスしている様だったから……。本当の自分っていうのをさらけ出しているって言うか……。それは今まで見た事のないものだった。
彼にもあんな顔ができるんだ、と思ったほどよ。
幼い頃から知っていた。
幼稚園からの付き合いだから学校の殆どの学生は「幼馴染」に分類されるわ。
それを差し引いても私と鈴木君は「幼馴染」だった。
高梨家と鈴木家は親同士の仕事の関係があって、家同士でも繋がりがあったの。私は一人っ子で、彼も同じ一人っ子だったからかな?私達は幼稚園に通う前から互いを知っていたし、小さい頃はよく一緒に遊んだりしていた。
幼少期の私は「お嬢様」なんて言葉からは程遠くて、どちらかと言えば男の子に混じって泥だらけになって駆け回る方が好きだった。鈴木君も同じ。男の子だからかな?私よりよっぽど活発な子供。親から紹介された子供達をよく泣かせていたのを覚えてるわ。
よくよく思い返してみれば物凄いガキ大将だった気がする。
それでも彼は叱られる事は無かった。
周囲の誰も彼に注意を促さなかった。それは、「鈴木グループの御曹司」として皆が彼を見ていたから。そこに「鈴木晃司」という個人をみる眼が無かったから。その様は彼の目にどう映っていたのかしら?きっと酷く歪に映っていた筈だわ。
親から紹介される「お友達」は会社関係ばかり。
そこにあるのは純粋な「遊び相手」じゃなくて、将来的な利益関係に直結する「ビジネスパートナー候補」、と言ったところだった。もっと直接的に言うと将来を見越した「上司と部下」といった関係だったの。
聡い彼がそれに気付かない筈は無い。
大人たちの思惑を嫌い、親に命じられるままに自分の傍に近寄って来る「お友達候補達」。
上下関係がハッキリしている友達ってなに!?そんな友達との友情なんかあるわけが無い。それが子供心にも分かったわ。だって私も彼と同じだったから。
幼稚園に入るまで「高梨家が提供するお友達」は沢山いた。
皆、笑顔で私と遊ぶけど、子供心に「なにこれ」と思った。相手の女の子たちはガチガチに緊張して笑顔が引きつっていたし、妙にビクビクしていたのが分かった。ああ、この子達は親に言われて私の相手をしてるのかって思った瞬間、私は「お友達」に壁を隔てたわ。だってそんな関係を「お友達」って呼べるわけ無いでしょう!?そんなの全然嬉しくないものっ!だから私はよく鈴木君と遊ぶようになったのよ。
彼は私と対等だったから。
親達も私達の交流を歓迎していた節もあった。
親に強制された関係じゃない、自分の意思で私と彼は「幼馴染」になったのだ。
幼稚園に入ってからも二人で遊ぶ事は多かった。長期休みは互いの家族と一緒に旅行にいったりもしていたわ。もっとも、そんな私達の付き合いも小学校の低学年までだったけれどね。
それでも二人は大勢の生徒に祝福されていた。
数々の誹謗中傷にも負けなかった陽向。
そんな恋人を心身ともに守る鈴木君。
真っすぐで素直な陽向は愛情表現も素直だった。
よく、人前で堂々と「大好き」と言う。人目を憚ることのないスキンシップは見ている方が恥ずかしくなってしまう程だった。陽向の言葉は真っすぐで、それに鈴木君は照れくさくしながらも応えていた。
傍から見ても鈴木君は陽向を大切にしている事が分かった。
彼女を見る目が他とは全く違ってとても優しい。それだけじゃない。陽向の傍にいる鈴木君はリラックスしている様だったから……。本当の自分っていうのをさらけ出しているって言うか……。それは今まで見た事のないものだった。
彼にもあんな顔ができるんだ、と思ったほどよ。
幼い頃から知っていた。
幼稚園からの付き合いだから学校の殆どの学生は「幼馴染」に分類されるわ。
それを差し引いても私と鈴木君は「幼馴染」だった。
高梨家と鈴木家は親同士の仕事の関係があって、家同士でも繋がりがあったの。私は一人っ子で、彼も同じ一人っ子だったからかな?私達は幼稚園に通う前から互いを知っていたし、小さい頃はよく一緒に遊んだりしていた。
幼少期の私は「お嬢様」なんて言葉からは程遠くて、どちらかと言えば男の子に混じって泥だらけになって駆け回る方が好きだった。鈴木君も同じ。男の子だからかな?私よりよっぽど活発な子供。親から紹介された子供達をよく泣かせていたのを覚えてるわ。
よくよく思い返してみれば物凄いガキ大将だった気がする。
それでも彼は叱られる事は無かった。
周囲の誰も彼に注意を促さなかった。それは、「鈴木グループの御曹司」として皆が彼を見ていたから。そこに「鈴木晃司」という個人をみる眼が無かったから。その様は彼の目にどう映っていたのかしら?きっと酷く歪に映っていた筈だわ。
親から紹介される「お友達」は会社関係ばかり。
そこにあるのは純粋な「遊び相手」じゃなくて、将来的な利益関係に直結する「ビジネスパートナー候補」、と言ったところだった。もっと直接的に言うと将来を見越した「上司と部下」といった関係だったの。
聡い彼がそれに気付かない筈は無い。
大人たちの思惑を嫌い、親に命じられるままに自分の傍に近寄って来る「お友達候補達」。
上下関係がハッキリしている友達ってなに!?そんな友達との友情なんかあるわけが無い。それが子供心にも分かったわ。だって私も彼と同じだったから。
幼稚園に入るまで「高梨家が提供するお友達」は沢山いた。
皆、笑顔で私と遊ぶけど、子供心に「なにこれ」と思った。相手の女の子たちはガチガチに緊張して笑顔が引きつっていたし、妙にビクビクしていたのが分かった。ああ、この子達は親に言われて私の相手をしてるのかって思った瞬間、私は「お友達」に壁を隔てたわ。だってそんな関係を「お友達」って呼べるわけ無いでしょう!?そんなの全然嬉しくないものっ!だから私はよく鈴木君と遊ぶようになったのよ。
彼は私と対等だったから。
親達も私達の交流を歓迎していた節もあった。
親に強制された関係じゃない、自分の意思で私と彼は「幼馴染」になったのだ。
幼稚園に入ってからも二人で遊ぶ事は多かった。長期休みは互いの家族と一緒に旅行にいったりもしていたわ。もっとも、そんな私達の付き合いも小学校の低学年までだったけれどね。
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