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11.晃司side
しおりを挟む披露宴は散々だった。
会場にいるのは俺と陽向の親族、そして陽向の友人達を除けば鈴木グループの関係者ばかりだ。自然と内容がそこかしこから聞こえてくる。主に参加者たちの苦情だった。いや、苦情に似たナニカだ。
陽向の友人達は披露宴に俺の友人が欠席した事を嘆いていた。どうやら、陽向を通じて友人達を紹介して欲しかったようだ。ここは見合いの場でもなければ、合コンする場所でもない!男漁りがしたいのなら余所にいけ!と叫びたいのをグッと堪えた。陽向の親戚は楽しそうにしているのとは対照的に、父親と弟は何故か暗い。
「伊集院家と親族関係になれたというに……」
「どこの世界にイミテーションの宝石に鞍替えす馬鹿がいるんだ?」
「振り出しどころかマイナスからのスタートじゃないか……」
「逃がした魚は大きすぎるぞ?それを分っているのか?」
両親は親族達に詰られて落ち込んでいた。
いつでもどこでも口煩い連中だ。
それでも祝いの場だと自覚しているから小声でしか文句が言えず、歯痒い思いをしているのが解った。
「伊集院家の仲介があってこそ結ばれた取引だって多いと言うのに……」
「直ぐ打ち切りにはならないにしてもな」
「信用問題だ。早い所では、契約の打ち切りを宣告されたそうだ」
「なに!?もうか!?」
「株価もどうなるか……」
「それよりも問題は新規事業だ。確かアレも伊集院家との繋がりで契約話が進んでいた筈だ……」
「これから会社はどうなるんだ?」
役員達は不安の声をもらしていた。
俺はそれを、ただ見ていることしかできなかった。
披露宴で新郎新婦に話しかけてくるのがタブーでもあるかのように、役員達は誰も近寄って来ようとはしない。ただ遠巻きな位置取りでボソボソと声を抑えて話すだけだった。
陽向側の親族が話している内容も耳に入る。こちらは俺達の結婚を祝福する内容ばかりだ。ただ、陽向の弟。大樹とかいった?そいつだけは不満そうだった。隣に座っている父親はそれを咎めていた。
「めでたい日なのだから、もう少し笑顔でいなさい。陽向が気にするだろう」
「笑顔ねぇ……」
「大樹」
「愛想笑いくらいしかできないよ」
「それでもいい」
どうやら大樹は俺達の結婚をよく思っていないようだ。急ピッチで進めたせいか?それにしては陽向の事を心配しているように聞こえない。俺の気のせいだろうか?俺や陽向、そして自分の父親に対して冷ややかな目で見てくる。
嫌悪感を抱いているかのような眼差し。
何故、義弟にそんな目で見られるのか分からない。
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