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10.晃司side
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「鈴木」
友人達の中で一番冷静な榊原が俺を真っ直ぐ見つめ、口を開く。その口調と瞳は怒りに満ちている。そして、俺は彼の瞳の奥に強い決意が籠っているように感じた。それはまるでこれから何か重大なことを俺に伝えるかのような強い瞳だった。しかし、この時の俺には彼の瞳に秘める何かを理解することはできなかったのだ。
「なんだ?」
「鈴木の結婚式は無事に終わった。俺達はお前の友人としての義理は果たしたんだ。もういいだろう?」
何が、もういいだ!?
意味の分からない事を言うんじゃない!!
「何もお前の友人関係を辞めると言う訳じゃない。だがな、お前が結婚式に呼んだ連中の大半は妻子ある身だ。披露宴に参加すればそれこそ家族や親族から『鈴木家の長男の結婚を祝福している』と思われるんだ」
「なんだよ……それ。お前達は俺と陽向の結婚を祝福できないって言うのか!?」
「俺達はお前と早川の関係をよく知ってる。学生の頃からの付き合いだ。鈴木が政略結婚のために早川と別れた事もな」
「だったら……」
「お前達の関係は終わったものだとばかり思ってたよ。よりを戻してたとはな。それも不貞の末の再婚だ」
「……」
「早川と結婚するにしてもだ。もう少し時間を置くべきだった。こんなに慌てて結婚式を挙げる理由はなんだ?ただでさえ醜聞が広がっているのに更に悪名が広がってしまっているぞ」
「っ!!!」
確かに一理ある。俺が陽向と結婚することを公表してから鈴木家に対して、そして俺達に対して心良く思っていない連中が多いことは理解した。それでも俺は一刻も早く、陽向と結ばれたくて堪らなかった! それが、この行動の一番の理由だ!!!それを友人が非難する事は絶対に許されない!! 俺のそんな心情を察したのか。「はぁ~」と友人の浅田が小さく溜息をついた。
「……鈴木。お前ってさ、昔から一度決めた事に妙に固執するというか、頑固な所あったよな?ああ、そんな顔すんな。何もそれが悪いって言ってる訳じゃない。お前みたいな奴じゃないと早川はついてこなかっただろうさ。いや、そもそも惹かれなかったかもな。お前って学生の頃から強引だったからな。周りなんてお構いなしなところがあったし、実際、そうだった。それがお前の魅力でもあった訳だが……ただ……」
「……」
「ただな、もうちょっとだけ周りのこと……自分や鈴木家の周辺とかを気にした方がいいぞ?お前の親だってそうだ。いくらお前が決めた事だからといっても『結婚のけじめをつけなかった不義理な家』って外で言われてるんだ。それでなくてもお前の評判は最悪だ。勿論、お前と結婚した早川もな。これ以上、悪くなりたくはないってくらいに酷い。そんなお前達と親しくしていたら俺達だって同類に見られるんだ。それが、どういう事か解ってるよな?お前や早川がどんな目に遭ったとしても俺は一切助ける気はないし庇う事もない。それだけは覚えてくれ」
お調子者の浅田は、こんなときだからこそなのか珍しく真剣だった。いや、彼なりに相当無理をして言ったのだろう。それは俺にも分かったから強く反論する事はできず言葉に詰まりながらも彼の話に耳を傾ける事しかできなかった。
友人達は俺達の結婚に対して、そこまで嫌悪を向けているのか……。評判が悪くなったから俺と陽向を切り捨てようとしているのか?俺達の友情はそんな簡単に切り捨てられるようなものだったというのか……。
「じゃあな」
「暫くは二人と会う事はないだろうが、お幸せに」
そう告げて友人達が一人、また一人と去っていく姿に何も言えずにただ黙って見送るしかなかった。
友人達に裏切られた――そんな思いが強かったせいだろうか。俺は気付かなかった。彼らが俺をずっと「鈴木」と呼んでいた事を。陽向の事もそうだ「早川」と呼んでいた。学生時代は「晃司」「陽向」と呼び捨てだった。違和感を感じた。なのに気付けなかった。その違和感に気付けない程、俺達の距離は離れてしまっていた。
そんな関係になってしまっていた事に、この時の俺は気付けなかった。
友人達の中で一番冷静な榊原が俺を真っ直ぐ見つめ、口を開く。その口調と瞳は怒りに満ちている。そして、俺は彼の瞳の奥に強い決意が籠っているように感じた。それはまるでこれから何か重大なことを俺に伝えるかのような強い瞳だった。しかし、この時の俺には彼の瞳に秘める何かを理解することはできなかったのだ。
「なんだ?」
「鈴木の結婚式は無事に終わった。俺達はお前の友人としての義理は果たしたんだ。もういいだろう?」
何が、もういいだ!?
意味の分からない事を言うんじゃない!!
「何もお前の友人関係を辞めると言う訳じゃない。だがな、お前が結婚式に呼んだ連中の大半は妻子ある身だ。披露宴に参加すればそれこそ家族や親族から『鈴木家の長男の結婚を祝福している』と思われるんだ」
「なんだよ……それ。お前達は俺と陽向の結婚を祝福できないって言うのか!?」
「俺達はお前と早川の関係をよく知ってる。学生の頃からの付き合いだ。鈴木が政略結婚のために早川と別れた事もな」
「だったら……」
「お前達の関係は終わったものだとばかり思ってたよ。よりを戻してたとはな。それも不貞の末の再婚だ」
「……」
「早川と結婚するにしてもだ。もう少し時間を置くべきだった。こんなに慌てて結婚式を挙げる理由はなんだ?ただでさえ醜聞が広がっているのに更に悪名が広がってしまっているぞ」
「っ!!!」
確かに一理ある。俺が陽向と結婚することを公表してから鈴木家に対して、そして俺達に対して心良く思っていない連中が多いことは理解した。それでも俺は一刻も早く、陽向と結ばれたくて堪らなかった! それが、この行動の一番の理由だ!!!それを友人が非難する事は絶対に許されない!! 俺のそんな心情を察したのか。「はぁ~」と友人の浅田が小さく溜息をついた。
「……鈴木。お前ってさ、昔から一度決めた事に妙に固執するというか、頑固な所あったよな?ああ、そんな顔すんな。何もそれが悪いって言ってる訳じゃない。お前みたいな奴じゃないと早川はついてこなかっただろうさ。いや、そもそも惹かれなかったかもな。お前って学生の頃から強引だったからな。周りなんてお構いなしなところがあったし、実際、そうだった。それがお前の魅力でもあった訳だが……ただ……」
「……」
「ただな、もうちょっとだけ周りのこと……自分や鈴木家の周辺とかを気にした方がいいぞ?お前の親だってそうだ。いくらお前が決めた事だからといっても『結婚のけじめをつけなかった不義理な家』って外で言われてるんだ。それでなくてもお前の評判は最悪だ。勿論、お前と結婚した早川もな。これ以上、悪くなりたくはないってくらいに酷い。そんなお前達と親しくしていたら俺達だって同類に見られるんだ。それが、どういう事か解ってるよな?お前や早川がどんな目に遭ったとしても俺は一切助ける気はないし庇う事もない。それだけは覚えてくれ」
お調子者の浅田は、こんなときだからこそなのか珍しく真剣だった。いや、彼なりに相当無理をして言ったのだろう。それは俺にも分かったから強く反論する事はできず言葉に詰まりながらも彼の話に耳を傾ける事しかできなかった。
友人達は俺達の結婚に対して、そこまで嫌悪を向けているのか……。評判が悪くなったから俺と陽向を切り捨てようとしているのか?俺達の友情はそんな簡単に切り捨てられるようなものだったというのか……。
「じゃあな」
「暫くは二人と会う事はないだろうが、お幸せに」
そう告げて友人達が一人、また一人と去っていく姿に何も言えずにただ黙って見送るしかなかった。
友人達に裏切られた――そんな思いが強かったせいだろうか。俺は気付かなかった。彼らが俺をずっと「鈴木」と呼んでいた事を。陽向の事もそうだ「早川」と呼んでいた。学生時代は「晃司」「陽向」と呼び捨てだった。違和感を感じた。なのに気付けなかった。その違和感に気付けない程、俺達の距離は離れてしまっていた。
そんな関係になってしまっていた事に、この時の俺は気付けなかった。
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