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9.晃司side
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陽向が俺の妻だと世間に公表する。そのための結婚式だ。
『早すぎる!』
『もっと時間を置くべきだ!!』
『離婚して直ぐに結婚するなど……』
『結婚まで二年は待った方が良い』
『せめて、式を挙げるのは一年後にしてからだ』
両親からの反対を押し切った形で陽向と結婚することを決めた。
確かに急いでいる面は否めない。
それでも俺は……。
「今、結婚したいんだ」
強くそう思った。
そして、それを貫きたいとも。
結婚式は鈴木グループが経営するホテルの一つで行う事にした。
急ピッチで進めた。ホテルにはかなり無理をさせたらしいが何とか実現した。父も俺の行動に対して何も口出しはしなかったから助かった。母は「非常識だわ」と未だに納得していなかったが、既に結婚準備をしているからか何も言ってくる事はなかった。
僅か二ヶ月弱で準備は整った。
令和元年六月。
結婚式当日。この日は雨となった。
会場となったホテルでは天候に左右されないように、チャペルで結婚の儀と披露宴を行う事となっているので天気を気にせず行う事ができたのだ。
それにしても……。
チャペルの中で、純白のウェディングドレスを身に付けた陽向は息を呑むほど輝いて見えた。
結婚式の段取りは全て俺一人で行った。最高の結婚式にしたかった。俺が選んだウェディングドレスは陽向によく似合っていた。その姿を見た時、「やっぱり、この選択は間違いなんかじゃなかった」そう心から思った。
俺は「一生陽向を愛する」と神に誓った。陽向も俺に対し「生涯愛する」と誓ってくれた。俺はこの瞬間が幸せすぎて泣きそうになるのを抑えるのも大変だったのだ。本当に陽向と結婚できてよかったと思う。この時を一生忘れないだろう。
人生最良の日だ。
そう思った。
だが、俺がそう思ったのはここまでだった。
結婚式が終わり、次は披露宴だという事なので俺と陽向は一度着替えようと別室に向かう。そして、俺が部屋から出ると、そこに立っていたのは学生時代からの友人達だった。
友人達は俺に陽向との祝福の言葉を一通り述べると「それじゃあ、俺達はここで失礼する」と言ってきた。
はぁ!?これから披露宴だぞ!!?!
俺の心の中に動揺が生まれる。
「おい!何言ってるんだ!?」
「悪いが披露宴は欠席させてもらう」
「おい!」
「新しい奥さんに宜しく言っておいてくれ」
「広瀬!?」
「……本当は式自体も参加するつもりはなかった」
「なっ!?」
「鈴木、俺達は昔のよしみで義理で参加したんだ」
「ぎ、義理……だと……?」
「ああ、そうだ。よくもまぁ、結婚式の招待状を俺達に出せたな?」
「え……?」
友人達の顔は明らかに怒りを帯びていた 。それは俺に向けられるにはあまりにも珍しい表情だった。彼らは何を怒っているんだ?結婚式に出席する事の何が不満なのだろうか? 俺の頭は完全に混乱していた。友人達が何故怒っているのか。その意味も理解できなかったのだ。
『早すぎる!』
『もっと時間を置くべきだ!!』
『離婚して直ぐに結婚するなど……』
『結婚まで二年は待った方が良い』
『せめて、式を挙げるのは一年後にしてからだ』
両親からの反対を押し切った形で陽向と結婚することを決めた。
確かに急いでいる面は否めない。
それでも俺は……。
「今、結婚したいんだ」
強くそう思った。
そして、それを貫きたいとも。
結婚式は鈴木グループが経営するホテルの一つで行う事にした。
急ピッチで進めた。ホテルにはかなり無理をさせたらしいが何とか実現した。父も俺の行動に対して何も口出しはしなかったから助かった。母は「非常識だわ」と未だに納得していなかったが、既に結婚準備をしているからか何も言ってくる事はなかった。
僅か二ヶ月弱で準備は整った。
令和元年六月。
結婚式当日。この日は雨となった。
会場となったホテルでは天候に左右されないように、チャペルで結婚の儀と披露宴を行う事となっているので天気を気にせず行う事ができたのだ。
それにしても……。
チャペルの中で、純白のウェディングドレスを身に付けた陽向は息を呑むほど輝いて見えた。
結婚式の段取りは全て俺一人で行った。最高の結婚式にしたかった。俺が選んだウェディングドレスは陽向によく似合っていた。その姿を見た時、「やっぱり、この選択は間違いなんかじゃなかった」そう心から思った。
俺は「一生陽向を愛する」と神に誓った。陽向も俺に対し「生涯愛する」と誓ってくれた。俺はこの瞬間が幸せすぎて泣きそうになるのを抑えるのも大変だったのだ。本当に陽向と結婚できてよかったと思う。この時を一生忘れないだろう。
人生最良の日だ。
そう思った。
だが、俺がそう思ったのはここまでだった。
結婚式が終わり、次は披露宴だという事なので俺と陽向は一度着替えようと別室に向かう。そして、俺が部屋から出ると、そこに立っていたのは学生時代からの友人達だった。
友人達は俺に陽向との祝福の言葉を一通り述べると「それじゃあ、俺達はここで失礼する」と言ってきた。
はぁ!?これから披露宴だぞ!!?!
俺の心の中に動揺が生まれる。
「おい!何言ってるんだ!?」
「悪いが披露宴は欠席させてもらう」
「おい!」
「新しい奥さんに宜しく言っておいてくれ」
「広瀬!?」
「……本当は式自体も参加するつもりはなかった」
「なっ!?」
「鈴木、俺達は昔のよしみで義理で参加したんだ」
「ぎ、義理……だと……?」
「ああ、そうだ。よくもまぁ、結婚式の招待状を俺達に出せたな?」
「え……?」
友人達の顔は明らかに怒りを帯びていた 。それは俺に向けられるにはあまりにも珍しい表情だった。彼らは何を怒っているんだ?結婚式に出席する事の何が不満なのだろうか? 俺の頭は完全に混乱していた。友人達が何故怒っているのか。その意味も理解できなかったのだ。
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