105 / 112
105.宰相(元公爵)side
しおりを挟む
暴動が起こった。
これで二度目だ。
勘弁してほしい。何故、こうも民衆は些細な事で暴動を起こすのだ。エンリケ王子もそうだ。私の言う事を全く聞かない。まったく。一体誰のお陰で王になれたと思っているんだ。しかも……。
「国王の様子はどうだ?」
「はい、片腕をやられたようです」
「はぁ…………護衛を連れていればこうはならなかったというに」
「命に別状はないそうですが……」
「魔術師達はなんと言っている」
「腕の再生は不可能だと申しております」
「そうか。まぁそうだろうな。いかに凄腕の魔術師でも腕を生やせるような技術は無いだろう」
「では義手を?」
「ああ。致し方ない」
「エンリケ王は嫌がるでしょうね」
「文句など言わせん。勝手に城を抜け出したのは王だ。自業自得というものよ。そもそも、あれほど外出を控えろと言っておいたにも関わらず聞き入れようとしない王がいけないのだ」
「ではそのように手配いたします」
部下を下がらせる。そして椅子に深く腰掛けた。
「ふぅーーー」
疲れた。
心底疲れた。
ここ最近は特に忙しい日々を送っているのだから当然か。まったく。王家はどれだけ私に苦労させれば気が済むのだ。それでもエンリケ王を排除する事はできない。大公家が滅亡した今となっては唯一の王族だ。
王家のために、この国のために犠牲にしたものは大きい。
妻、娘、義息子……。
公爵の地位……。
部下……。
こんなはずではなかった。
私が信頼していた部下達の裏切り。
内乱が勃発して暫くすると部下の殆どが離反した。裏切った者達はすぐさま追っ手をかけた。数人はもうこの世にはいない。だが、残った者は必ず捕らえ処刑する。今更離脱など許される訳がないだろう。それに裏切り者には罰を与えなければ示しがつかない。この国の為に、私は身を粉にして働いてきたのだ。なのに何故裏切られなければならないのか? 理解に苦しむな。
公爵家にしてもそうだ。
反逆者だと通告すれば直ぐに詫びに来ると踏んでいたのに。反撃に転じるとは。計画が台無しだ。これでは王家のメンツが丸潰れではないか。
結局、内乱は鎮めることができなかった。あの馬鹿げた戦力。公爵家だけなら直ぐに鎮められた。まさか辺境伯爵家がしゃしゃり出てくるとは予想外だ。くそっ!!だがまだチャンスはあるはずだ。必ず取り返してみせるぞ!!!
「大変です!!宰相閣下!!!大変です!!」
血相を変えた兵士が飛び込んできた。ノックもせずに入るなど無礼極まりない。だがこの慌てぶり。何があった?
「A地区に配置した部隊が暴徒共と遭遇!交戦状態に入りました!」
は?なんだと!?またか!?なぜこうも暴徒化するんだ!!!しかもこんな時に!!! まずいぞ。非常に不味い。他の地区なら兎も角、A地区は王宮から近い。このままでは警備兵の何人かを応援に向かわせなくてはならない。
「そ、それともう一つ報告があります」
「今度はなんだ」
「じ、実は……先程、第一騎士団が離反するとの報告がありまして……」
「なに!?」
「近衛騎士団団長は『民を攻撃するなど言語道断である』と申して部隊と共に暴徒側についたようです」
「ばかな……」
信じられん。一体何を考えているのだ。近衛が寝返るなど前代未聞の事だぞ。いやそれ以前に第一騎士団員のほとんどが反旗を翻すなどと……どういうつもりだ。理解できない。まったくもって不可解な事態ばかりだ。
その後も嫌な報告は続いた。
これで二度目だ。
勘弁してほしい。何故、こうも民衆は些細な事で暴動を起こすのだ。エンリケ王子もそうだ。私の言う事を全く聞かない。まったく。一体誰のお陰で王になれたと思っているんだ。しかも……。
「国王の様子はどうだ?」
「はい、片腕をやられたようです」
「はぁ…………護衛を連れていればこうはならなかったというに」
「命に別状はないそうですが……」
「魔術師達はなんと言っている」
「腕の再生は不可能だと申しております」
「そうか。まぁそうだろうな。いかに凄腕の魔術師でも腕を生やせるような技術は無いだろう」
「では義手を?」
「ああ。致し方ない」
「エンリケ王は嫌がるでしょうね」
「文句など言わせん。勝手に城を抜け出したのは王だ。自業自得というものよ。そもそも、あれほど外出を控えろと言っておいたにも関わらず聞き入れようとしない王がいけないのだ」
「ではそのように手配いたします」
部下を下がらせる。そして椅子に深く腰掛けた。
「ふぅーーー」
疲れた。
心底疲れた。
ここ最近は特に忙しい日々を送っているのだから当然か。まったく。王家はどれだけ私に苦労させれば気が済むのだ。それでもエンリケ王を排除する事はできない。大公家が滅亡した今となっては唯一の王族だ。
王家のために、この国のために犠牲にしたものは大きい。
妻、娘、義息子……。
公爵の地位……。
部下……。
こんなはずではなかった。
私が信頼していた部下達の裏切り。
内乱が勃発して暫くすると部下の殆どが離反した。裏切った者達はすぐさま追っ手をかけた。数人はもうこの世にはいない。だが、残った者は必ず捕らえ処刑する。今更離脱など許される訳がないだろう。それに裏切り者には罰を与えなければ示しがつかない。この国の為に、私は身を粉にして働いてきたのだ。なのに何故裏切られなければならないのか? 理解に苦しむな。
公爵家にしてもそうだ。
反逆者だと通告すれば直ぐに詫びに来ると踏んでいたのに。反撃に転じるとは。計画が台無しだ。これでは王家のメンツが丸潰れではないか。
結局、内乱は鎮めることができなかった。あの馬鹿げた戦力。公爵家だけなら直ぐに鎮められた。まさか辺境伯爵家がしゃしゃり出てくるとは予想外だ。くそっ!!だがまだチャンスはあるはずだ。必ず取り返してみせるぞ!!!
「大変です!!宰相閣下!!!大変です!!」
血相を変えた兵士が飛び込んできた。ノックもせずに入るなど無礼極まりない。だがこの慌てぶり。何があった?
「A地区に配置した部隊が暴徒共と遭遇!交戦状態に入りました!」
は?なんだと!?またか!?なぜこうも暴徒化するんだ!!!しかもこんな時に!!! まずいぞ。非常に不味い。他の地区なら兎も角、A地区は王宮から近い。このままでは警備兵の何人かを応援に向かわせなくてはならない。
「そ、それともう一つ報告があります」
「今度はなんだ」
「じ、実は……先程、第一騎士団が離反するとの報告がありまして……」
「なに!?」
「近衛騎士団団長は『民を攻撃するなど言語道断である』と申して部隊と共に暴徒側についたようです」
「ばかな……」
信じられん。一体何を考えているのだ。近衛が寝返るなど前代未聞の事だぞ。いやそれ以前に第一騎士団員のほとんどが反旗を翻すなどと……どういうつもりだ。理解できない。まったくもって不可解な事態ばかりだ。
その後も嫌な報告は続いた。
120
お気に入りに追加
3,315
あなたにおすすめの小説

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜
影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。
けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。
そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。
ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。
※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪
鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。
「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」
だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。
濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが…
「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」
【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。
ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。
その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。
十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。
そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。
「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」
テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。
21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。
※「小説家になろう」さまにも掲載しております。
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います
黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。
レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。
邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。
しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。
章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。
どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。
表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる