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105.宰相(元公爵)side

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 暴動が起こった。
 これで二度目だ。
 勘弁してほしい。何故、こうも民衆は些細な事で暴動を起こすのだ。エンリケ王子もそうだ。私の言う事を全く聞かない。まったく。一体誰のお陰で王になれたと思っているんだ。しかも……。

「国王の様子はどうだ?」

「はい、片腕をやられたようです」

「はぁ…………護衛を連れていればこうはならなかったというに」

「命に別状はないそうですが……」
 
「魔術師達はなんと言っている」
 
「腕の再生は不可能だと申しております」
 
「そうか。まぁそうだろうな。いかに凄腕の魔術師でも腕を生やせるような技術は無いだろう」
 
「では義手を?」
 
「ああ。致し方ない」
 
「エンリケ王は嫌がるでしょうね」
 
「文句など言わせん。勝手に城を抜け出したのは王だ。自業自得というものよ。そもそも、あれほど外出を控えろと言っておいたにも関わらず聞き入れようとしない王がいけないのだ」
 
「ではそのように手配いたします」

 部下を下がらせる。そして椅子に深く腰掛けた。

 
「ふぅーーー」

 疲れた。
 心底疲れた。
 ここ最近は特に忙しい日々を送っているのだから当然か。まったく。王家はどれだけ私に苦労させれば気が済むのだ。それでもエンリケ王を排除する事はできない。大公家が滅亡した今となっては唯一の王族だ。
 
 王家のために、この国のために犠牲にしたものは大きい。

 妻、娘、義息子……。
 公爵の地位……。
 部下……。

 こんなはずではなかった。


 
 私が信頼していた部下達の裏切り。
 内乱が勃発して暫くすると部下の殆どが離反した。裏切った者達はすぐさま追っ手をかけた。数人はもうこの世にはいない。だが、残った者は必ず捕らえ処刑する。今更離脱など許される訳がないだろう。それに裏切り者には罰を与えなければ示しがつかない。この国の為に、私は身を粉にして働いてきたのだ。なのに何故裏切られなければならないのか? 理解に苦しむな。


 公爵家にしてもそうだ。
 反逆者だと通告すれば直ぐに詫びに来ると踏んでいたのに。反撃に転じるとは。計画が台無しだ。これでは王家のメンツが丸潰れではないか。
 結局、内乱は鎮めることができなかった。あの馬鹿げた戦力。公爵家だけなら直ぐに鎮められた。まさか辺境伯爵家がしゃしゃり出てくるとは予想外だ。くそっ!!だがまだチャンスはあるはずだ。必ず取り返してみせるぞ!!!




「大変です!!宰相閣下!!!大変です!!」

 血相を変えた兵士が飛び込んできた。ノックもせずに入るなど無礼極まりない。だがこの慌てぶり。何があった?

「A地区に配置した部隊が暴徒共と遭遇!交戦状態に入りました!」

 は?なんだと!?またか!?なぜこうも暴徒化するんだ!!!しかもこんな時に!!! まずいぞ。非常に不味い。他の地区なら兎も角、A地区は王宮から近い。このままでは警備兵の何人かを応援に向かわせなくてはならない。

「そ、それともう一つ報告があります」
 
「今度はなんだ」
 
「じ、実は……先程、第一騎士団が離反するとの報告がありまして……」
 
「なに!?」
 
「近衛騎士団団長は『民を攻撃するなど言語道断である』と申して部隊と共に暴徒側についたようです」
 
「ばかな……」

 信じられん。一体何を考えているのだ。近衛が寝返るなど前代未聞の事だぞ。いやそれ以前に第一騎士団員のほとんどが反旗を翻すなどと……どういうつもりだ。理解できない。まったくもって不可解な事態ばかりだ。

 その後も嫌な報告は続いた。

 
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