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102.イヴァニア王国(隣国)の重鎮side

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「その反乱軍というのも怪しい話だ」
 
「どういうことだ!?」
 
「王家が邪魔な公爵家を排除すべく反逆者にしたという噂もある。王を名乗っているエンリケ王子よりも公爵家の方が血筋的には上だろ?それを面白く思わない連中の仕業かもしれんな。まぁ、王子自身が自分の権威を高めようと仕組んだ自作自演の可能性もある」
 
 外務大臣の話を聞き軍務副大臣は納得している様子だった。
 内務大臣の顔には呆れが見えるがな。
 確かに、あの国の貴族たちには昔からそういう面があった。我が身可愛さに他人を踏み台にする奴等ばかりだという印象が強い。地方貴族はそうでもないが、中央にいる奴等はどいつもこいつも似たような連中が多かった記憶しかない。貴族どころか、神殿にいる神官たちも同様だ。足の引っ張り合いばかりしているイメージしか思い浮かばない。まったくもって度し難いな。
 
「しかしそうなってくるとこの内乱の終結は長引く恐れがあるわけですか」
 
「そうだな。どちらも引かないだろう」
 
「いや、引かないのは王家の方だ。降伏など絶対にしない構えを見せているぞ」
 
「正規軍を王都に集結させているのがいい証拠だな。徹底抗戦する気だろうよ」

 内務大臣、財務大臣、軍務副大臣の発言を受けて会議室内の雰囲気が一気に重くなっていく。皆が皆、この先の戦いのことを考え始めているのだろう。
 
「長引けばセニア王国から難民が流れてくる恐れがある」
 
「セニア国は我が国を含めて三つの国が接していますからねぇ。それに……既に実績があります」
 
「ああ、あの殿か」
 
「えぇ、裏切り者の元伯爵です」

 外務大臣の発言に対して内務大臣が苦笑しながら答え、軍務副大臣が嫌味を言った相手は我が国に亡命してきたセリアの貴族の一人であった。しかも大公家所縁の者という曰く付きの人物だ。
 あの者がセリア王国でクーデターが起きた直後にこちらへ亡命を求めてやってきた。
 当然我が国は拒否するつもりだったが、何故か国王陛下の命令で受け入れざるを得なくなった経緯がある。

 後で知ったのだが、どうやら国王陛下はセニア王国の辺境伯爵家と密約を交わしていたようだった。

 国王陛下はこの状況を静観する方法を取るだろう。
 
 嘗ての国王のように――

 そして、それはセニア王国と国境を接する他の二国も恐らく同じであろう。
 どれほどのチャンスがあろうともセニア王国を滅ぼさなかった。歴史を見れば一目瞭然だ。ただ単にリスクを考えて手を出さないのではない。遥か昔、聖女が誕生した大地という理由だけではない。我々が知らない秘密が隠されている気がする。そのことは此処にいるメンバーも薄々察してはいるのだろう。


 国王陛下はその事を知っているはずだ。

 知っていて何も語らないということは我々が知る必要はないということなのか。それとも知る事が許されない程のことなのか。
 いずれにしろ国王陛下の意向に従うまでだ。


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