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74.準成人パーティー1

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 セニア王国の成人は十八歳。
 けれどその前に「準成人」というものが存在する。
 十六歳で「準成人」となり、夜会の参加が認められた。そのため、王家が主催し「準成人パーティー」を催すのが恒例となっていた。




「私と是非踊っていただきたいですわ」

「申し訳ありません。僕にはパートナーがおりますので」

「まあ!お姉様のお守など大変ですわね!!」

「今日の良き日にエスコート相手もいない女性がいらっしゃるようですが……一体どちらの令嬢でしょうか?」

「なっ?!」

「相手がいない場合は家族か親族がエスコートするのが決まり。どうやら貴族ではない方が紛れ込んでいるようですね」

「し、失礼な!!」

 真っ赤な顔で怒り出すと「後悔しても知りませんからね!!」と捨て台詞を吐いて去っていく。

「まるで負け犬の遠吠えだ」

「ミゲル、失礼よ」

「ですが本当の事です」

「彼女は恐らく大公家所縁の女性ね」

「でしょうね。躾がなっていないのは血筋でしょうか?」

「ふふ。そうかもしれないわね」

「そろそろダンスが始まる時間です。行きましょうか」

「えぇ」

 会場に入ると既に沢山の貴族達が踊り始めていた。
 僕は義姉の手を取りフロアの中央まで進むと音楽に合わせてステップを踏み始めた。

「随分上達したものだわ」
 
「この日のために毎日練習に付き合って下さった先生義姉のおかげです」
 
「あら、謙遜してるのかしら?」
 
「まさか。本心ですよ」
 
「それにしても、こうして踊ると貴男との身長差がよく分かるわね」
 
「そうですか?」
 
「ええ。昔は私よりも小さかったのに……」
 
「それは四年くらい前のことでは?」
 
「あの頃は小さくて可愛かったのに。いつの間にかにょきにょきと伸びてしまって」
 
「……人を野菜みたいに言わないで下さい」
 
「でも本当に立派になったと思うわ。私の自慢よ」
 
「ありがとうございます」
 
 曲が終わり一礼すると周囲から拍手が起こった。

「義姉上、僕の傍を離れないでください。王子が義姉上を狙っていますから」
 
「狙われているのはミゲルも一緒でしょう。公爵家の跡取りである貴男の方が逆に狙われやすいんじゃなくて?」
 
「傍流ですよ?」
 
「そんなもの関係ないわ。貴男は婚約者もいないんだから」
 
「それを言うのなら義姉上だって一緒ですよ」
 
「お互い気を付けないといけないわね」
 
「……はい」


 義姉の言葉通り、着飾った女性達が次々と現れた。
 あからさまに婚約話を言う女性までいる。

 義姉上曰く、「大公家出身の女性、あるいはその派閥の女性」とのこと。

 一応、僕は公爵家の跡取りだ。
 家のために政略結婚だってする。
 だけど、大公家とその派閥はお呼びじゃない。

 


 
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