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70.夢の中2
しおりを挟む「ブリジット!何故だ!何故、茶会にルーチェを呼ばない!!」
「殿下、それは当然の事でございます」
「何が当然だ!」
「公爵家の茶会は高位貴族が殆どなのです」
声を荒げて義姉上を非難するボンクラ……もとい王太子。
前回は呼ばれもしていないのに義姉上主催の茶会に聖女を伴って来ていた。
あの時は「マナー違反だ」として追い返したが、「酷い」やら「差別主義者」と騒がれた。王太子も聖女と一緒になって騒ぐ始末だ。奴らに言いたい。
酷いのはお前たちの頭だと――――
常識を著しく欠いた馬鹿な行動ばかり取るボンクラ二人に義姉上は辛抱強く諭しているのだが、理解できないようだ。まぁ元々無理だろうと思っていた。できることならば一生関わりたくない人種だからな。それにしても義姉の忍耐強さには敬服するしかない。
ボンクラ二人の後ろには王太子の側近もいた。
ジョバンニ・カストロとヨハン・フィーデスの姿もそこにあった。
この二人を含めた王太子の側近数名は義姉を睨みつけている。立ち入りを許可しない義姉に腹を立てているのだ。義姉上は何も間違ったことは言っていないというのに。残念な頭の持ち主の側近しかいないようだ。
結局、王太子達は義姉上に罵声を浴びせて帰って行った。本当に腹立たしい奴らだ。二度と来るな!!
こっちだって好きで王太子に茶会の招待状を送っている訳じゃない!
婚約者だから送っているんだ!!
なのにそこに何故愛人候補を連れ込むのか理解できない!
義姉上主催の茶会に婚約者を呼ばない訳にもいかない。だから苦肉の策で「公爵家主催」の茶会に変更したのだ。そこで察しろ!公爵家主催という事は、主催者は公爵夫人という事になる。例え公爵夫人が茶会に居なくともその名代として義姉がいる。そういう体制をわざわざ整えたというのに!!
それを何故理解しようとしない!!!
当時の怒りがこみ上げてくるのが分かる。
そんな僕の心境を夢は特に考慮に入れていないのか、再び場面が変わる。
「ミゲル、私はどうするべきかしら?殿下を幾らお諫めしても考えを改めてくださらないわ。かと言って何も理解できない平民出身の女子生徒に言い聞かせる訳にもいきませんし……」
「はい。平民出身に教え諭した処で大した効果は期待できません。何しろ聖女は実に自由であり多くの選択肢を持つべきだという特殊な考えの方のようですから。地位ある者には責任がのしかかるという発想には至らないのでしょう」
義姉上の姿はいつもよりも精彩を欠いている。
平民の女子生徒の存在と、その女を溺愛する王太子と側近達。
奴らが前回学園を荒らしまわったせいで義姉上にどれだけの心労を与えていたか!!
くそっ!!
夢の中だと分かっていても義姉上に言いたい。
奴らを諫めるだけ無駄だと!!
あぁぁぁぁぁぁぁ!!!
前回の自分を殴りたい!
今なら間違いなく義姉の行動を止めただろう。
だって、どんなに言葉を尽くしても理解してくれない奴らだ。挙句に義姉上を冤罪で死に至らせた連中だ。言うだけ無駄というもの。むしろ義姉上の時間を浪費させる方が愚かと言うもの。それくらいならば無視していた方が余程いい。
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