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58.とある子息side

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「おい、フリード」

 俺は友人に声を掛ける。するとビクッとしてこちらを振り向いた。
 
「な、なんだ、リュークか。びっくりさせるなよ」
 
「お前、何やってんだ!大公家を貶すような発言をしてただですむと思っているのか!?」
 
「はぁ?なんのことだよ?俺はただこうあればいいと意見を言っているだけだぜ?お前こそなんだよ?突然説教とかマジウザイんだけど」
 
「大公女様が学園にいるんだぞ?」
 
「だからだろ?それに本人には聞こえないって。向こうは最下位クラスだ。ははっ。大公家の御令嬢が最下位クラスって笑えるぜ」
 
「それを言うのなら第一王子殿下も中堅クラスだ」
 
「そ、それは……いいんだよ!王子殿下は!!」

 もうコイツは何をいっているんだ?
 なんで王子殿下に肩入れしているんだ?

「お前、もしかして王子殿下から依頼されてこんなバカな事をしているのか?」
 
「……」

 下を向いて黙り込んでいる。図星だったみたいだ。これは決定的だな。

「理由はなんだ?」

 俯いて話そうとしない。言いにくい事でもあるのだろうか?
 
「言えないって事は何か弱みでも握られているのか?それとも何らかの見返りがあるのか?」
 
「違う!俺はただ自分の思った事を言っただけで……」
 
「仮にだ。第一王子殿下と大公女様の婚約が白紙になったとしてもぺーゼロット公爵令嬢との婚約なんてないぞ?」
 
「はぁ?!なんでだよ!!?」
 
「そりゃあ決まってるだろ。ぺーゼロット公爵が許さないからだ」
 
「嘘だ!そんなの!!」

 俺は呆れてしまった。どうやらフリードは知らないらしい。俺は大きくため息をつくと、友人を説得することにした。
 
「そもそも王子殿下と大公女様の婚約をまとめ上げたのは宰相閣下であるぺーゼロット公爵だ。自分がまとめた婚約をまったくの第三者によって破談されたとあっては面目丸つぶれだ。その相手を宰相閣下が許すわけがない。それに……どうやら宰相閣下は御息女と王子を婚約させる意図はないらしいぞ」

 俺の言葉にフリードは愕然としていた。
 
「え?どういうことだ?俺知らない……」
 
「当たり前だ。別段公表されていないからな。だが王宮務めの間では噂にはなっている。お前、王宮勤めになりたいのだろう?ならば情報に耳を傾けることも大事だと思うぞ?因みに俺の父もその話は耳にしている。まあ父の場合は母から聞いたと言っていたがな。その母だって茶会で得た情報だ。恐らく間違いはないだろう」
 
「そ、そんな馬鹿な……」
 
「王子殿下に何を言われたのか知らないが、この件は関わるな。お前は王家の、高位貴族の恐ろしさを知らない。関われば家族そろって消される可能性もあるぞ?」

 フリードは放心状態で俺の話を聞いていた。そしてしばらくするとフラフラとした足取りでその場を立ち去った。これで少しは自分で考えてくれればいいのだが。俺はそう願いつつ、彼の姿が消えていくのを見届けていた。

 翌日から彼は学校に来なくなった。

 門番買収の件がバレたのかと危惧したが、それらの事が表沙汰になった様子はなかった。


 


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