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57.とある子息side
しおりを挟む最高クラスは特別だ。
総合成績五十位までの生徒を三クラスに分けている。
まあ、殆どが高位貴族出身で固められているのである意味妥当な判断だろう。貴族と一言でいっても高位貴族と下位貴族とでは教育に差はでる。下位貴族に高位貴族と同様の事ができるのかと問われると「できる」と応えられる者は稀だろう。勿論、下位貴族であっても学園入学前から高位貴族並の高等教育を受けている者もいるし、本人の才覚によるものもある。かくいう俺も男爵家の出であるが最高クラスに分類されていた。マナーは高位貴族の方々に劣っているがそれ以外の面で認められている。男爵と言っても田舎の小さな領地しか持たない貧乏貴族だ。跡取りの長男以外は独立して自分で生計を立てなければならない。マナーなんて二の次三の次ってところの家だ。そんな家の四男に生まれた俺は文官を目指している。今の成績をキープして卒業できれば王宮勤務も可能だろうと先生にも言われているのだ。
至って平穏な学生生活を満喫していたのだが、近頃なにやら不穏な空気が漂っていた。
「な、いいだろう?謝礼は弾む」
「し、しかしそのような……」
「何も悪い事をする訳じゃない。この時間にちょっと門の警備を緩めてくれるだけでいいんだ」
「そのようなことはできません!」
何かの揉め事かと聞き耳をたてると、どうやら門番に賄賂を渡して警備の穴をついて外部の人間を中に入れようと画策しているようだ。
何を考えているんだ?
よからぬ者が入り込まないように門番を置いているんだぞ?
そこのところ理解していないとは。そんなアホな画策をするのは誰なのかとコッソリと様子を伺った。見るんじゃなかった。俺は頭を抱えたくなった。アホな画策をしていたのは俺の友人。しかも俺と同じ下位貴族出身のクラスメイトだったからだ。
彼は俺と違って金で爵位を買った男爵子息。要は金持ちだ。高位貴族のような莫大な寄付金を納める事はできないが、彼の家はそれなりに大きな商家を営んでいるらしい。そのためそこそこの金を持っていそうだというわけだ。友人は門番を買収して部外者を中に入れて貰おうとしているようだった。
そんなことをすれば退学ものだ!アホか!!
思わずそう突っ込みたくなる気持ちを抑えて様子を見守ることにした。ここで出て行けば俺まで共犯扱いされる。それは嫌だ!なんとかバレずに止めさせなくては。
そうこうしているうちに門番に追い返された友人だった。門番が常識のある人達で助かった。だが、友人のあの様子だと懲りることなくまたやって来ること間違いないな。俺は頭を悩ませた。
数日後――
意を決して友人に問いただすことにした。
それというのも、彼が「第一王子殿下には公爵令嬢の方がお似合いだ」「大公女なんてマナーも碌にできない。所詮は庶子なんだよ。それに平民あがりの大公女なんかが王子妃になったところで何をするっていうんだ」「血統正しい公爵令嬢が王子殿下と婚姻するのが筋ってもんだ」「大公家だって王家の色を持って無いんだぜ?」などと宣わっているのを聞いてしまったからだ。俺は頭が痛くなってきた。
一見言っている事はまともに思えるが、それは大公家を侮辱する言葉だ。例え本人が聞いていないとしても言って良い事ではないはずだ。そもそも大公家の血を持つ女性だから第一王子と婚約しているんだ。婚約の理由だって知っているだろ?王族の結束を強固にするためじゃないか。今の王家には国王陛下と第一王子殿下しかいないんだから。何も間違った事じゃない。
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