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54.とある令嬢side
しおりを挟む「ちょっとエミリー!貴女、いい加減にしなさい!!」
「何?急に」
「何じゃないわ!貴女でしょ?ブリジット様の悪評を流しているのは!!」
「……嫌だわ。何の話?」
「とぼけないで!貴女が噂好きの子達を唆して噂を流しているのを見たのよ」
「目ざといわね」
「エミリー、今なら勘違いで済ませる範囲内だわ。ここら辺で手を引くべきよ」
「嫌よ!」
「エミリー?!」
「だって、大公女様が言ったの!公爵令嬢のよくない噂を流して評判を落とせば私を公爵夫人にしてくださるって!!」
友人の馬鹿げた話に絶句してしまった。
「な、何を言っているの!!? 子爵家の娘が公爵夫人になんてなれる筈ないでしょう!!!」
「そんなことない!大公女様は約束してくれたんだから!!」
友人の言葉に絶句する他なかった。
年齢の割には夢見がちな子だったけれど、現実との区別がつかなくなっていたなんて。ううん。きっとエミリーは大公女様に言いくるめられているんだわ。この子は素直で人を信じやすい傾向があるから。
「エミリー。その約束ってちゃんと書面に記載されたものなの?」
「え?なにそれ?」
やっぱり!!!
間違いないわ!エミリーは騙されている!!!
「大公女様と約束をしたという証拠のようなものよ」
「……そんなものないわ」
「なら、なんの効力もないわね」
「ジョージア?一体何の話?」
「良く聞いて、エミリー。貴女は大公女様に利用されているわ」
「なっ?!」
「書面での契約を交わしていない事がいい証拠よ。これじゃあ、貴女が公爵令嬢に対して不敬罪で捕まっても大公女様が黒幕だと立証できないわ」
「言いがかりだわ!!」
「落ち着いて。貴女が幾ら自分は大公女様に命じられて公爵令嬢を貶めた行動をしていたと訴えた処で誰も信じない。それどころか、大公女様を犯人に仕立て上げようとする外道だと思われるのが関の山だわ」
「酷い!!」
「酷いのはエミリーの頭よ!!!」
もう既に涙目のエミリーに私は更に言いつのった。
「現実を見なさい!公爵家のミゲル様は姉君のブリジット様を大切になさっているのよ?大事な姉を悪く言う女に好感を抱くわけないでしょう!!逆に嫌悪感一杯になるわ!!」
「そ、そんなことない!」
「あるわよ!エミリーだって家族の悪口を言われてたり貶めようとする人間に好きになれる?おば様達を誹謗中傷する男に告白されて嬉しい?違うでしょう!!」
私の言葉にハッとしたのかエミリーは黙り込んだ。
「ねぇ、エミリー。貴女の家は子爵家だけど商売でかなり豊かだわ。求婚者だって沢山いるじゃない。その中から良い人を選べばいい話でしょ?」
「だって!私に求婚してくるのは子爵家や男爵家ばかり。下手すれば平民まで求婚してくる始末よ!」
「それのどこが悪いの?貴女だって子爵家令嬢でしょう。それに平民だって言うけど資産家ばかりじゃない。条件もかなりいいって聞いたわ」
「酷いわ、ジョージア。私に平民と結婚しろっていうの?」
「誰もそんなことは言ってないでしょ。平民出身と結婚したくないなら男爵家や子爵家と結婚すればいいだけよ」
まあ、エミリーに求婚しに来る貴族の大半は彼女の持参金が目的って話もあるから家族は慎重に吟味してるんでしょうね。私だって金目的の結婚なんて御免だし、エミリーにも勧められない。エミリーは可愛らしい容姿だし愛嬌もあるから貰い手には困らないと思う。問題は彼女自身が貴族の奥方様をやれるのか、という話。はっきり言って最下位クラスに居る限り高位貴族との結婚なんて夢のまた夢だわ。それをエミリーだけが理解していない。
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