39 / 112
39.放火事件2
しおりを挟む
「どんな思惑があるのかは別として、神殿を味方に付けるには良い方法だわ」
「外道な方法ですよ?」
「こういった外道な方法の方が裏切る確率は減るわ。特に『信仰の名のもとに』なんて言っている連中には覿面じゃないかしら?寧ろ、こういった人が弱っている時に近づいてお布施を買わせている連中なのよ?自分達の行いが返って来たからといって非難なんてできないでしょう。あら?そう考えると神殿と大公家は相思相愛じゃないかしら!」
嫌な相思相愛だ。
クスクスと楽しそうに嗤う義姉が羨ましい。僕は嗤えない。前の時に神官長は息子を切り捨てている。多分、神殿側にメリットがあるから大公家に息子を差し出したんじゃないかと疑ってしまう。
それに、報告書には裏情報まで一緒に記載されていた。
大公家の工作員が多数神殿に入り込んでいるとか。
そして神官長もそれを知って上手く活用しているようだ。
つまり、お互いが持ちつ持たれつの関係なのだろう。となると、神官長は火事がどうして起こったのか正確に把握している可能性は高い。いや、それどころか黒幕が大公家だと分かっていて行動しているのではないか?
報告書には下手人は捕まっていない。深夜ということで目撃情報すらない。大公家は細心の注意を払って行っているはず。犯人はこれから先も見つからないだろう。もし、見つかるとしても死体としてだろう。
「神官長は分からないけれど、御子息は妹君を溺愛なさっているようね。大公女に大層感謝しているみたい」
「そうなんですか?」
「ええ。父君の命令とはいえ、自主的に大公女に尽き従っているようだわ。これで大公家は未来の神官長を手に入れ神官長は自身の地位を盤石のものにしたというところかしら?」
ああ、そういうことか。納得したと同時にゾッとした。あの男は自分の息子さえも利用して地位を固めようとしているのだ。罠を仕掛けたのは大公家。それでも得をしたのは神官長も同じだ。自分の子供達を犠牲にしてでも神官長の地位を守りたいらしい。
「大公家は神殿への寄付を増やしたようですね」
報告書に書かれている額は相当だ。
「口止め料も含まれているのでしょう」
「俗物の神官長で大公もラッキーでしたね」
「本当だわ。でも、気を付けないとね。弱みを握られたままでいる大公家ではないわ。もし少しでもおかしな真似をするなら――」
義姉上は右手をそっと頬に当てるとニコッと微笑んだ。
「外道な方法ですよ?」
「こういった外道な方法の方が裏切る確率は減るわ。特に『信仰の名のもとに』なんて言っている連中には覿面じゃないかしら?寧ろ、こういった人が弱っている時に近づいてお布施を買わせている連中なのよ?自分達の行いが返って来たからといって非難なんてできないでしょう。あら?そう考えると神殿と大公家は相思相愛じゃないかしら!」
嫌な相思相愛だ。
クスクスと楽しそうに嗤う義姉が羨ましい。僕は嗤えない。前の時に神官長は息子を切り捨てている。多分、神殿側にメリットがあるから大公家に息子を差し出したんじゃないかと疑ってしまう。
それに、報告書には裏情報まで一緒に記載されていた。
大公家の工作員が多数神殿に入り込んでいるとか。
そして神官長もそれを知って上手く活用しているようだ。
つまり、お互いが持ちつ持たれつの関係なのだろう。となると、神官長は火事がどうして起こったのか正確に把握している可能性は高い。いや、それどころか黒幕が大公家だと分かっていて行動しているのではないか?
報告書には下手人は捕まっていない。深夜ということで目撃情報すらない。大公家は細心の注意を払って行っているはず。犯人はこれから先も見つからないだろう。もし、見つかるとしても死体としてだろう。
「神官長は分からないけれど、御子息は妹君を溺愛なさっているようね。大公女に大層感謝しているみたい」
「そうなんですか?」
「ええ。父君の命令とはいえ、自主的に大公女に尽き従っているようだわ。これで大公家は未来の神官長を手に入れ神官長は自身の地位を盤石のものにしたというところかしら?」
ああ、そういうことか。納得したと同時にゾッとした。あの男は自分の息子さえも利用して地位を固めようとしているのだ。罠を仕掛けたのは大公家。それでも得をしたのは神官長も同じだ。自分の子供達を犠牲にしてでも神官長の地位を守りたいらしい。
「大公家は神殿への寄付を増やしたようですね」
報告書に書かれている額は相当だ。
「口止め料も含まれているのでしょう」
「俗物の神官長で大公もラッキーでしたね」
「本当だわ。でも、気を付けないとね。弱みを握られたままでいる大公家ではないわ。もし少しでもおかしな真似をするなら――」
義姉上は右手をそっと頬に当てるとニコッと微笑んだ。
102
お気に入りに追加
3,255
あなたにおすすめの小説
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません
せいめ
恋愛
「アナ、君と私の婚約を解消することに決まった」
王太子殿下は、今にも泣きそうな顔だった。
「王太子殿下、貴方の婚約者として過ごした時間はとても幸せでした。ありがとうございました。
どうか、隣国の王女殿下とお幸せになって下さいませ。」
「私も君といる時間は幸せだった…。
本当に申し訳ない…。
君の幸せを心から祈っているよ。」
婚約者だった王太子殿下が大好きだった。
しかし国際情勢が不安定になり、隣国との関係を強固にするため、急遽、隣国の王女殿下と王太子殿下との政略結婚をすることが決まり、私との婚約は解消されることになったのだ。
しかし殿下との婚約解消のすぐ後、私は王命で別の婚約者を決められることになる。
新しい婚約者は殿下の側近の公爵令息。その方とは個人的に話をしたことは少なかったが、見目麗しく優秀な方だという印象だった。
婚約期間は異例の短さで、すぐに結婚することになる。きっと殿下の婚姻の前に、元婚約者の私を片付けたかったのだろう。
しかし王命での結婚でありながらも、旦那様は妻の私をとても大切にしてくれた。
少しずつ彼への愛を自覚し始めた時…
貴方に好きな人がいたなんて知らなかった。
王命だから、好きな人を諦めて私と結婚したのね。
愛し合う二人を邪魔してごめんなさい…
そんな時、私は徐々に体調が悪くなり、ついには寝込むようになってしまった。後で知ることになるのだが、私は少しずつ毒を盛られていたのだ。
旦那様は仕事で隣国に行っていて、しばらくは戻らないので頼れないし、毒を盛った犯人が誰なのかも分からない。
そんな私を助けてくれたのは、実家の侯爵家を継ぐ義兄だった…。
毒で自分の死が近いことを悟った私は思った。
今世ではあの人達と関わったことが全ての元凶だった。もし来世があるならば、あの人達とは絶対に関わらない。
それよりも、こんな私を最後まで見捨てることなく面倒を見てくれた義兄には感謝したい。
そして私は死んだはずだった…。
あれ?死んだと思っていたのに、私は生きてる。しかもなぜか10歳の頃に戻っていた。
これはもしかしてやり直しのチャンス?
元々はお転婆で割と自由に育ってきたんだし、あの自分を押し殺した王妃教育とかもうやりたくたい。
よし!殿下や公爵とは今世では関わらないで、平和に長生きするからね!
しかし、私は気付いていなかった。
自分以外にも、一度目の記憶を持つ者がいることに…。
一度目は暗めですが、二度目の人生は明るくしたいです。
誤字脱字、申し訳ありません。
相変わらず緩い設定です。
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
【完結】二度目の人生に貴方は要らない
miniko
恋愛
成金子爵家の令嬢だった私は、問題のある侯爵家の嫡男と、無理矢理婚約させられた。
その後、結婚するも、夫は本邸に愛人を連れ込み、私は別邸でひっそりと暮らす事に。
結婚から約4年後。
数える程しか会ったことの無い夫に、婚姻無効の手続きをしたと手紙で伝えた。
すると、別邸に押しかけて来た夫と口論になり、階段から突き落とされてしまう。
ああ、死んだ・・・と思ったのも束の間。
目を覚ますと、子爵家の自室のベッドの上。
鏡を覗けば、少し幼い自分の姿。
なんと、夫と婚約をさせられる一ヵ月前まで時間が巻き戻ったのだ。
私は今度こそ、自分を殺したダメ男との結婚を回避しようと決意する。
※架空の国のお話なので、実在する国の文化とは異なります。
※感想欄は、ネタバレあり/なし の区分けをしておりません。ご了承下さい。
【完結】婚約破棄にて奴隷生活から解放されたので、もう貴方の面倒は見ませんよ?
かのん
恋愛
ℌot ランキング乗ることができました! ありがとうございます!
婚約相手から奴隷のような扱いを受けていた伯爵令嬢のミリー。第二王子の婚約破棄の流れで、大嫌いな婚約者のエレンから婚約破棄を言い渡される。
婚約者という奴隷生活からの解放に、ミリーは歓喜した。その上、憧れの存在であるトーマス公爵に助けられて~。
婚約破棄によって奴隷生活から解放されたミリーはもう、元婚約者の面倒はみません!
4月1日より毎日更新していきます。およそ、十何話で完結予定。内容はないので、それでも良い方は読んでいただけたら嬉しいです。
作者 かのん
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる