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29.学園入学1

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 僕達は十三歳になった。
 それに伴って王都に行かなければならない。

 王立学園。
 年頃の貴族たちはこの学園で学び巣立っていくと言っても過言ではない。その背景にはいずれは王国のために働くことを旨としている。学園に居る期間は十三歳から十八歳まで。長いようであっという間の年月だろう。その期間に各々勉学に励み、交友を深めていく。要は、社交界に本格的に参入する準備期間とも言えるのだ。

 家の跡継ぎだろうとなかろうと、親が築いた交友関係を維持できるわけではない。当主が代わればそれまでの交友関係に変化があるのは当然だ。親同士の仲が良かったとしてもその子供まで仲が良いとは限らない。まあ、中にはそのまま継続される関係もあるだろう。けれど新規開拓は必要不可欠だ。

 それ故に王立学園を「小さな社交場」と揶揄する者もいた。




 
 
 
「ミゲル、準備はできたの?」

「うん、大丈夫だよ。そもそも荷物は最小限の物しか持っていかないしね」

「それもそうね。王都の屋敷に大抵の物は揃っているもの。問題はアレかしら?」

「あれ?」

「ええ。お父様からの手紙よ。おかしな内容が書かれていたでしょう?」

 義姉は怪訝そうに僕を見た。

「う……ん。義母上が断りの手紙を出して下さったから大丈夫だと思うよ?」

「ならいいのだけれど……。お父様も一体何を考えてミゲルに寮生活をさせようとなさったのかしら?我が家は王都に屋敷を構えているというのに」

「ははっ。手紙には子弟達と仲良くできるようにとはあったけどね」

「それこそ意味が分からないわ。寮生活をするのは基本的に王都に屋敷を持っていない者だけ。寮の規則にもそうなっていますのに」

 そうなのだ。
 何故か今回に限り、義父は僕を寮に入れようとした。こんなことは前回には無かった事だ。義姉が言うように、王都に屋敷を持つ貴族は基本毎日馬車で学園に通う。あまり裕福でない地方貴族などは寮に入るのが基本だ。もしくは、何らかの家庭の事情で家で暮らせない者達のために寮があるとも言える。

 義父の意味不明な行動。
 そして今の処、義姉と第一王子の婚約はなされていない。一時、噂になったものの直ぐに立ち消えたようだ。僕は正直ホッとした。もし、義姉があのボンクラのアホ王子の婚約者になっていたらと思うだけでゾッとするからだ。あの王子は未だに王太子にはなっていない。ざまあみろ。
何にせよ王子の婚約者でないなら義姉上に平穏は保たれる。

 この前とは違う事態は学園でも起こっていた。義姉の婚約問題以外にも大きく変化したもの。それを知るには暫しの時間を必要とした。




 

「では、これより入学式を執り行う!」

 学園長である初老の男性の声によって、僕達の学園生活は始まった。

 

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