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22.メイド長side
しおりを挟む「でもね、肝心の男爵は庶子の娘が可愛くって勘当したって言うのに内密に援助してたのよね」
「えっ!?」
「それが嫡出の娘にバレたら開き直っちゃって『婚約者を繋ぎ留められなかったお前が悪い』なんて言ったらしいわ。当然、嫡出の娘は激怒。母方の家に身を寄せたって話よ」
「うわっ!最悪……」
「しかも、跡取り娘だっていうのに馬鹿よね」
「レベッカ……あんた詳しいわね。一体何処からそんな情報掴んでくるの」
「ふっふっふっ。それは企業秘密! にしても因果応報ってこの事よね」
「え?」
「だって、あの教師は結局雇われのまま。噂じゃ、王立学園の学園長に推薦されてたのにね。それを条件で男爵家と和解する話になってたって言うじゃない」
「援助してたんだから和解もなにもないでしょ?」
「それがそうでもなかったのよ。跡取り娘に縁を切られて男爵は親戚一同からこってり絞られたみたいでね。援助をし続けるなら縁を切るとまで言われたらしいわ」
「あらら」
「そんな状態だったから当然、庶子の娘夫婦は再び困窮……とまではいかなかったわね。運よく家庭教師としての実績を認められ始めてた頃だから。贅沢しなければ普通に暮らしていけたでしょうよ」
「なんとなく話が読めたわ。王立学園の学園長に大出世してから男爵家の親戚達に『それみたことか。私の娘が選んだ男は凄いんだぞ』をしたかったのね」
「そんなとこ。でも結果はコレでしょ。優秀な長男が男爵家の跡取りになるって話はおじゃん。娘は貴族どころか学園中の男子生徒に媚びを売って弄ばれてるって話だしね。とっくに純潔を失っている上に訳アリと来ちゃあ、まともな男は相手にしないわ」
クスクスと嗤うメイド達の声。
それを振り払うかのように私はその場を後にした。
彼らの末路は悲惨そのもの。
従兄の子爵から緊急の手紙が来たのもそのせいだろう事も理解している。既に彼らとの縁は切れているとはいえ、図々しい彼らが私を頼るかもしれないという手紙の内容だった。そうならないように手配済みだということも含まれた手紙にただただ感謝するしかない。
あれから二十年以上が経つけれど何も変わらない彼らに溜息もでなかった。
旦那様は御存知なかったようだけど奥様は全てを知っていらした。
あの男が家庭教師に来ている間、私は奥様の御命令で王都の屋敷を視察に行っていた。だから鉢合わせすることも無かった。
奥様は何も仰らない。
私があの男の元婚約者だと言う事も、伯父の養女になったことも、亡き夫の事もなにも聞かなかったけれど、きっと全てお見通しなのだと思う。
元婚約者と異母妹の娘は、学園で「無償奉仕の娼婦」と化しつつある。
いずれは嫌でも田舎に引っ込まざるをえないだろうと従兄からの手紙に書かれていた。
元父は、既に爵位を手放している。
いいえ、少し違う。親族会議の結果、養子縁組をした男に譲り渡した。その養子縁組には元父の意志など一切考慮に入れられていないはず。そんな中で男爵家の領地に行く異母妹母子は針の筵でしょう。優秀な長男は新男爵に使い潰される事は予想できた。
まさに因果応報。
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