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13.自分勝手な男
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「公爵家の跡取り教育が始まってこれほど優秀な成績を上げるなど信じられない。とても外から来た出とは思えないとフォード氏は絶賛していたぞ」
「お褒め頂き光栄です」
「ははは。なんだい、言葉使いまで公爵家らしくなってきたな。だが、私達は家族だ。堅苦しい言葉使いは無用だよ」
「はい」
「はははは。まだまだ堅いな。お前も公爵家で苦労しているのだろう。不甲斐ない父を許してくれ。この数ヶ月碌に会えなかったからな。お前には辛い思いをさせてしまった。これからも大変だろうが耐えてくれ。いずれ公爵家はお前の物になる。それまでの辛抱だ」
何処までも自分勝手な言い分をこれでもかという義父に対して僕はただただ平伏した。この男は父親として終わっている。前は優しい義父だと思っていたが、只単に自分勝手なだけの野郎だ。確かに優しかった。ただそれは僕が愛した女の息子だからに他ならない。
はぁ~~。
前の時に義姉上の言葉を何一つ信用しなかった男だ。
つくづく僕は見る目がない。こんな男を一時でも信用していたんだから。
高熱を出して起き上がれるようになったら前と同じ家庭教師による「公爵子息教育」が開始された。といっても、幼児教育といっても差し支えの無い初歩の初歩だ。「完璧な公爵子息」に家庭教師の男は豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
はっ!
いい気味だ。
奴にされた仕打ちは忘れてはいない。
早々にお役御免にしてやるから見ていろ!
「ミゲル、この調子で頑張ってくれ。ブリジットの婚約も調いそうだからな」
「婚約!?」
「そうだ。お前の義姉はいずれこの国で最も高貴な女性になる」
王太子だ!
瞬時に理解した。
目の前にいる男は再び義姉上を過酷な運命へと引きずり込もうとしている!
その男はダメだといいたい。
だが会ったことのない王太子だ。
今、反対意見を言った処で子供の癇癪と受け止められるのがオチだ。
「義父上」
「ん?どうした?」
「義姉上の婚約は決定されたのでしょうか?」
「いや、まだだ。とはいえ、本決まりだがな」
「でしたら、より詳しく相手をお調べになった方が宜しいかと愚考致します」
「詳しくだと?」
「はい。如何に高貴なお方とはいえ欠点の一つや二つはあるもの。それを把握しておくのは公爵家のためにもよいかと」
「はははは!!確かに!!ミゲルの言う通りだ!!」
上機嫌に笑う義父だが、残念ながら王太子の欠点は二つ処じゃない。あり過ぎる程だ。まあ、今はそれを言う事はできないし、王太子もまだ子供だ。十分改善の余地あり、なんて言われたら大変だ。
「婚約した後いざという時のために見守る事も重要かと思われます」
「まさしくその通りだ!!婚姻後にブリジットが王家を支える為には万全の準備が必要だからな!」
相変わらず自分の都合の悪いことは無視するタイプだ。この男の脳みそは自分の都合のいいことしか認識しないらしい。だから義姉上の冤罪を知っても王家大事と汚名を灌ぐ努力をしなかった。僕の進言を鵜呑みにする義父に心の中で嘆息しつつ表向きは笑顔を取り繕う。僕もなかなかの演技派だ。まあ、こんな大根役者に騙されるのは義父くらいだろうけど。
はぁ~~。
王太子との婚約が整えばもう僕には手が出せなくなる。そうなれば僕に出来る事はただ一つ。王太子がボロを出した時に備えて監視体制を徹底的にする事だ。あの時のように後悔したくない!
「お褒め頂き光栄です」
「ははは。なんだい、言葉使いまで公爵家らしくなってきたな。だが、私達は家族だ。堅苦しい言葉使いは無用だよ」
「はい」
「はははは。まだまだ堅いな。お前も公爵家で苦労しているのだろう。不甲斐ない父を許してくれ。この数ヶ月碌に会えなかったからな。お前には辛い思いをさせてしまった。これからも大変だろうが耐えてくれ。いずれ公爵家はお前の物になる。それまでの辛抱だ」
何処までも自分勝手な言い分をこれでもかという義父に対して僕はただただ平伏した。この男は父親として終わっている。前は優しい義父だと思っていたが、只単に自分勝手なだけの野郎だ。確かに優しかった。ただそれは僕が愛した女の息子だからに他ならない。
はぁ~~。
前の時に義姉上の言葉を何一つ信用しなかった男だ。
つくづく僕は見る目がない。こんな男を一時でも信用していたんだから。
高熱を出して起き上がれるようになったら前と同じ家庭教師による「公爵子息教育」が開始された。といっても、幼児教育といっても差し支えの無い初歩の初歩だ。「完璧な公爵子息」に家庭教師の男は豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
はっ!
いい気味だ。
奴にされた仕打ちは忘れてはいない。
早々にお役御免にしてやるから見ていろ!
「ミゲル、この調子で頑張ってくれ。ブリジットの婚約も調いそうだからな」
「婚約!?」
「そうだ。お前の義姉はいずれこの国で最も高貴な女性になる」
王太子だ!
瞬時に理解した。
目の前にいる男は再び義姉上を過酷な運命へと引きずり込もうとしている!
その男はダメだといいたい。
だが会ったことのない王太子だ。
今、反対意見を言った処で子供の癇癪と受け止められるのがオチだ。
「義父上」
「ん?どうした?」
「義姉上の婚約は決定されたのでしょうか?」
「いや、まだだ。とはいえ、本決まりだがな」
「でしたら、より詳しく相手をお調べになった方が宜しいかと愚考致します」
「詳しくだと?」
「はい。如何に高貴なお方とはいえ欠点の一つや二つはあるもの。それを把握しておくのは公爵家のためにもよいかと」
「はははは!!確かに!!ミゲルの言う通りだ!!」
上機嫌に笑う義父だが、残念ながら王太子の欠点は二つ処じゃない。あり過ぎる程だ。まあ、今はそれを言う事はできないし、王太子もまだ子供だ。十分改善の余地あり、なんて言われたら大変だ。
「婚約した後いざという時のために見守る事も重要かと思われます」
「まさしくその通りだ!!婚姻後にブリジットが王家を支える為には万全の準備が必要だからな!」
相変わらず自分の都合の悪いことは無視するタイプだ。この男の脳みそは自分の都合のいいことしか認識しないらしい。だから義姉上の冤罪を知っても王家大事と汚名を灌ぐ努力をしなかった。僕の進言を鵜呑みにする義父に心の中で嘆息しつつ表向きは笑顔を取り繕う。僕もなかなかの演技派だ。まあ、こんな大根役者に騙されるのは義父くらいだろうけど。
はぁ~~。
王太子との婚約が整えばもう僕には手が出せなくなる。そうなれば僕に出来る事はただ一つ。王太子がボロを出した時に備えて監視体制を徹底的にする事だ。あの時のように後悔したくない!
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