6 / 112
6.復讐6
しおりを挟む
王太子だけは簡単に終わらせたくはない。
義姉上を傷つけた罪は、他の者たちのような処罰では生ぬるい!!
生き恥曝して一生をもがき苦しみ、されど決して死ねない。死ぬことは許されない。長く苦しんで生きろ。
そのための下準備は既に整えてある。
後はここぞと言う時期にそれらを暴露すればいいだけだ。
それだけで王太子の転落は確定している。
「馬鹿な……こんなことが……」
「何がこんな事なのでしょうか?殿下。これらは殿下が決裁した物に相違ございません」
「いや……だが……」
「文書の偽造、公金の横領、どれを取っても許されることではありません!!」
ドサッ!
王太子の机に証拠となる書類を積み上げていく。
「こんなものは出鱈目だ!!!」
王太子は無実を訴えるがそれは無駄だ。
なにせ、書類には王太子の直筆のサイン入り。既に筆跡鑑定も終えている。
まあ、一部は僕が作成したものだ。それでも全てじゃない。ここにある証拠書類には王太子の学生時代の物も含まれている。
「僕がこれらを何の確証もないままお見せしていると思いますか?今ある物は一部に過ぎません。学生時代からの横領と公文書偽造が今まで何故明るみにでなかった理由を理解されておりますか?」
そう、婚約者への贈り物とした費用は全てあの女へのプレゼントとして消えている。立派な横領だ。それに加えて虚偽の申告をしていたのだからな。
「国王陛下はよほど殿下が大事とみえます。真実を知った大臣を始め官僚たちから責められても殿下のしでかしを庇っていらっしゃいます。もっともそのせいで国の信頼は無に帰しました。婚約者のいる身でありながら義務を放棄し、その挙句に冤罪と毒杯です。他国の王族ならびに高官はその事実を知っております。他国の人間の口から国民に真実が語られ始めているんです」
「そ、それは……!」
王太子の表情はみるみると青ざめていき絶望していく。
ようやく気付いたようだ。遅すぎるけど。
義姉上を貶めた貴族共の処分は済んだ。事実は王家からではなく他国の高官たちの口から徐々に噂が市井に流れている状態だ。王太子の行為を密かに隠蔽していた国王。あの父親にしてこの息子ありだな。ろくでもない。
「今までの罪が全て露見したのです。大人しく沙汰を待つべきでは?王族としての矜持があるのならば、の話ですが。僕の言いたいことは分かりますね?」
王太子の目が絶望に染まっていく。
ははっ。義姉上に似たような事を言った記憶が蘇ってきたのかもしれないな。もっとも、僕は彼と違って丁寧かつ優しく諭してあげている。下品に声を荒げた目の前の男と違ってね。
死を予感したのだろう。
王太子が崩れるように床に膝をついた。
最愛の妻、側近、友人、全てに裏切られた気分はどうだ?
お前を守ってくれる最大の存在。国王ですら求心力が落ちすぎてどうにもならない。国の信頼を取り戻す意味でも彼らの死は免れないだろう。
泣き叫ぶ王太子を見つめながら僕は嗤った。
王太子妃の事件を切っ掛けに多くの者が処罰された。
貴族、聖職者、平民。
身分の上下なく等しく罰を与えられたのだ。
王太子妃と不貞関係にあった側近達とその家族は処刑された。
王太子妃の後見をしていた神殿側も権威が失墜し、少しでも関わった者は教皇から破門を言い渡された。
そして、王太子妃の結婚を後押しした貴族達は二階級降格の上財産の大半を没収された。伯爵クラスなら辛うじて貴族でいられたが、それ以下は平民に堕とされた。
今回の一件には平民も加担している。公爵令嬢に対しての不敬罪。それも、虚偽の発言を他の?貴族や王族にしていた事が明らかになった。平民の学生からしたら庶民の王太子妃の味方をしたかっただけかもしれない。だからといって嘘はよくない。彼らの嘘が義姉上の死に少なからず繋がっているのは明白だからな。本人達は処刑、その家族は平民ということで御咎めはなかった。ただし、周囲から絶縁され針の筵の日々だろう。中には一家心中した処もある。
王太子が身分違いの恋人を盲目的に愛した結果がこれだ。
この悲惨な結末により、ただでさえ求心力の落ちていた王家では対応できなかった。聖女側であった大公家も今では落ちぶれている。貴族の大半は力を削がれた。
唯一の被害者であるぺーゼロット公爵家の元で国の信頼回復は行われる事となった。
義姉上を傷つけた罪は、他の者たちのような処罰では生ぬるい!!
生き恥曝して一生をもがき苦しみ、されど決して死ねない。死ぬことは許されない。長く苦しんで生きろ。
そのための下準備は既に整えてある。
後はここぞと言う時期にそれらを暴露すればいいだけだ。
それだけで王太子の転落は確定している。
「馬鹿な……こんなことが……」
「何がこんな事なのでしょうか?殿下。これらは殿下が決裁した物に相違ございません」
「いや……だが……」
「文書の偽造、公金の横領、どれを取っても許されることではありません!!」
ドサッ!
王太子の机に証拠となる書類を積み上げていく。
「こんなものは出鱈目だ!!!」
王太子は無実を訴えるがそれは無駄だ。
なにせ、書類には王太子の直筆のサイン入り。既に筆跡鑑定も終えている。
まあ、一部は僕が作成したものだ。それでも全てじゃない。ここにある証拠書類には王太子の学生時代の物も含まれている。
「僕がこれらを何の確証もないままお見せしていると思いますか?今ある物は一部に過ぎません。学生時代からの横領と公文書偽造が今まで何故明るみにでなかった理由を理解されておりますか?」
そう、婚約者への贈り物とした費用は全てあの女へのプレゼントとして消えている。立派な横領だ。それに加えて虚偽の申告をしていたのだからな。
「国王陛下はよほど殿下が大事とみえます。真実を知った大臣を始め官僚たちから責められても殿下のしでかしを庇っていらっしゃいます。もっともそのせいで国の信頼は無に帰しました。婚約者のいる身でありながら義務を放棄し、その挙句に冤罪と毒杯です。他国の王族ならびに高官はその事実を知っております。他国の人間の口から国民に真実が語られ始めているんです」
「そ、それは……!」
王太子の表情はみるみると青ざめていき絶望していく。
ようやく気付いたようだ。遅すぎるけど。
義姉上を貶めた貴族共の処分は済んだ。事実は王家からではなく他国の高官たちの口から徐々に噂が市井に流れている状態だ。王太子の行為を密かに隠蔽していた国王。あの父親にしてこの息子ありだな。ろくでもない。
「今までの罪が全て露見したのです。大人しく沙汰を待つべきでは?王族としての矜持があるのならば、の話ですが。僕の言いたいことは分かりますね?」
王太子の目が絶望に染まっていく。
ははっ。義姉上に似たような事を言った記憶が蘇ってきたのかもしれないな。もっとも、僕は彼と違って丁寧かつ優しく諭してあげている。下品に声を荒げた目の前の男と違ってね。
死を予感したのだろう。
王太子が崩れるように床に膝をついた。
最愛の妻、側近、友人、全てに裏切られた気分はどうだ?
お前を守ってくれる最大の存在。国王ですら求心力が落ちすぎてどうにもならない。国の信頼を取り戻す意味でも彼らの死は免れないだろう。
泣き叫ぶ王太子を見つめながら僕は嗤った。
王太子妃の事件を切っ掛けに多くの者が処罰された。
貴族、聖職者、平民。
身分の上下なく等しく罰を与えられたのだ。
王太子妃と不貞関係にあった側近達とその家族は処刑された。
王太子妃の後見をしていた神殿側も権威が失墜し、少しでも関わった者は教皇から破門を言い渡された。
そして、王太子妃の結婚を後押しした貴族達は二階級降格の上財産の大半を没収された。伯爵クラスなら辛うじて貴族でいられたが、それ以下は平民に堕とされた。
今回の一件には平民も加担している。公爵令嬢に対しての不敬罪。それも、虚偽の発言を他の?貴族や王族にしていた事が明らかになった。平民の学生からしたら庶民の王太子妃の味方をしたかっただけかもしれない。だからといって嘘はよくない。彼らの嘘が義姉上の死に少なからず繋がっているのは明白だからな。本人達は処刑、その家族は平民ということで御咎めはなかった。ただし、周囲から絶縁され針の筵の日々だろう。中には一家心中した処もある。
王太子が身分違いの恋人を盲目的に愛した結果がこれだ。
この悲惨な結末により、ただでさえ求心力の落ちていた王家では対応できなかった。聖女側であった大公家も今では落ちぶれている。貴族の大半は力を削がれた。
唯一の被害者であるぺーゼロット公爵家の元で国の信頼回復は行われる事となった。
169
お気に入りに追加
3,257
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?
gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。
みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。
黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。
十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。
家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。
奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。
奪われる人生とはお別れします ~婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました~
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◯完結まで毎週金曜日更新します
※他サイト様でも連載中です。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる