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~ボルゴーヌ王国編~
8.噂3
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噂という物は一旦流れてしまうと中々消えないもの。
特に悪い噂というのは簡単に消えることはないでしょう。
何故なら、一度広まったものは人の噂によって更に誇張されていき、尾ひれがついてどんどん大きくなっていくからです。
そして人の口に戸を立てることなどできません。
例えどんなに厳重に隠していても、どこからともなく漏れ出してしまうものです。
人は他人の不幸を好みます。他人が苦しんでいる姿を見ると喜びを感じる生き物なのです。
それが、自分とは無関係であればあるほど……。
ですから、噂を消すには元となるものを根絶やしにしなければならないでしょう。
つまり、当事者である王女殿下とフリッド様の関係を明確にする必要があります。
しかし、それは不可能に近いでしょう。
何故なら、お二人とも別に相手がいますから。その相手の一人が私という訳ですわ。王女殿下の相手は遠い異国にいますからね。私がやり玉に挙げられてしまうのも致し方ないことでしょう。
もっとも、この国に滞在している貴族。要は外交官ですわね。彼らはそんな王国に不信感と怒りを抱いています。それと同じくらいに嘲笑ってもいますわ。既に本国に報告している外交官は多いでしょうね。
まあ、仕方ありませんわ。他国から見たらこんな馬鹿げた国はないだろうと、客観的に見たら思いますもの。
お陰で私に対して同情的でしたわ。
それに、大使たちは帝国の大使と懇意にしているようですし。
ただ、中には当然例外もいます。
「あのような非常識な振る舞いをする男が婚約者だなんて……。本当にお気の毒ですわ。私だったら恥ずかしくて生きていけませんわね」
帝国に敵愾心を持つ国の大使夫人は別の意味で喧嘩を吹っ掛けて来ましたけど。
アホな婚約者を持って可哀想にという反面、未来の夫に相手にされない女と私を見下しに来ましたわ。
「まぁ、大使夫人。そのような事を声高に仰るのは宜しくありませんわ。ここは公の場ですのよ?」
「あらあら、これは失礼しましたわ。ですが、ブランシュ嬢があまりにもお気の毒で……」
「ご心配頂きありがとうございます。ですが、私は気にしておりませんわ」
「まあ!ブランシュ嬢は強いのですね!」
「いいえ、強くなどありませんわ。婚約期間中に何が起こるかなど誰にも分かりませんもの。特に他国の事は。私は外から来た身ですので」
「まあ……そうでしたわね。でも、きっと大丈夫ですわ。結婚すれば男は落ち着くと申します。ブランシュ嬢がこの国に嫁いで来られる時は何もかもが変わっておりますわ」
「ふふっ。大使夫人は面白い事を仰るのですね」
「そうでしょうか?」
「ええ、私は公爵家の一人娘ですのに」
「え……?」
「私はこの国の貴族になる事はありませんから」
「……」
大使夫人の顔色がみるみると青くなっていきます。今更気付いたのでしょうか?
「では、ご機嫌よう」
私は固まってしまった大使夫人をその場に残して立ち去りました。
後ろで誰かが何かを叫んでいる気がしますが、聞こえないふりをしてその場を後にしました。
大使夫人は愚かにも自分は無知であると大声で触れ回ったも同然です。まぁ、無知なのはこの国の貴族達の大半がそうなのでしょう。私と大使夫人の会話を聞いて顔を真っ赤にして震えていましたからね。
自分の国がどれほどの恥を晒しているのか理解していないのでしょうね。
自業自得ですわ。
さて、これで私を侮って来る輩も減ることでしょう。
特に悪い噂というのは簡単に消えることはないでしょう。
何故なら、一度広まったものは人の噂によって更に誇張されていき、尾ひれがついてどんどん大きくなっていくからです。
そして人の口に戸を立てることなどできません。
例えどんなに厳重に隠していても、どこからともなく漏れ出してしまうものです。
人は他人の不幸を好みます。他人が苦しんでいる姿を見ると喜びを感じる生き物なのです。
それが、自分とは無関係であればあるほど……。
ですから、噂を消すには元となるものを根絶やしにしなければならないでしょう。
つまり、当事者である王女殿下とフリッド様の関係を明確にする必要があります。
しかし、それは不可能に近いでしょう。
何故なら、お二人とも別に相手がいますから。その相手の一人が私という訳ですわ。王女殿下の相手は遠い異国にいますからね。私がやり玉に挙げられてしまうのも致し方ないことでしょう。
もっとも、この国に滞在している貴族。要は外交官ですわね。彼らはそんな王国に不信感と怒りを抱いています。それと同じくらいに嘲笑ってもいますわ。既に本国に報告している外交官は多いでしょうね。
まあ、仕方ありませんわ。他国から見たらこんな馬鹿げた国はないだろうと、客観的に見たら思いますもの。
お陰で私に対して同情的でしたわ。
それに、大使たちは帝国の大使と懇意にしているようですし。
ただ、中には当然例外もいます。
「あのような非常識な振る舞いをする男が婚約者だなんて……。本当にお気の毒ですわ。私だったら恥ずかしくて生きていけませんわね」
帝国に敵愾心を持つ国の大使夫人は別の意味で喧嘩を吹っ掛けて来ましたけど。
アホな婚約者を持って可哀想にという反面、未来の夫に相手にされない女と私を見下しに来ましたわ。
「まぁ、大使夫人。そのような事を声高に仰るのは宜しくありませんわ。ここは公の場ですのよ?」
「あらあら、これは失礼しましたわ。ですが、ブランシュ嬢があまりにもお気の毒で……」
「ご心配頂きありがとうございます。ですが、私は気にしておりませんわ」
「まあ!ブランシュ嬢は強いのですね!」
「いいえ、強くなどありませんわ。婚約期間中に何が起こるかなど誰にも分かりませんもの。特に他国の事は。私は外から来た身ですので」
「まあ……そうでしたわね。でも、きっと大丈夫ですわ。結婚すれば男は落ち着くと申します。ブランシュ嬢がこの国に嫁いで来られる時は何もかもが変わっておりますわ」
「ふふっ。大使夫人は面白い事を仰るのですね」
「そうでしょうか?」
「ええ、私は公爵家の一人娘ですのに」
「え……?」
「私はこの国の貴族になる事はありませんから」
「……」
大使夫人の顔色がみるみると青くなっていきます。今更気付いたのでしょうか?
「では、ご機嫌よう」
私は固まってしまった大使夫人をその場に残して立ち去りました。
後ろで誰かが何かを叫んでいる気がしますが、聞こえないふりをしてその場を後にしました。
大使夫人は愚かにも自分は無知であると大声で触れ回ったも同然です。まぁ、無知なのはこの国の貴族達の大半がそうなのでしょう。私と大使夫人の会話を聞いて顔を真っ赤にして震えていましたからね。
自分の国がどれほどの恥を晒しているのか理解していないのでしょうね。
自業自得ですわ。
さて、これで私を侮って来る輩も減ることでしょう。
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