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~ロクサーヌ王国編~

31.元役人side

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「な、何故だ……何でこんなことに……」

 震えが止まらない。
 民衆に見つからないように息を殺し身を潜めて。



 ――俺たちを搾取し続ける奴らに天誅を!!――

 ――特権階級たちを皆殺しにしろ!!――

 ――新政権を打倒せよ!!――


 民衆達は今日も狂ったように行進している。
 怨嗟の声を上げながら街を練り歩く。
 憎悪を滾らせて集団で街を練り進む。
 あの行進が目的地に到着した時、何を起こすのかは容易に想像がつく。


「どうして……こんな目に……俺は何処で間違ったんだ……」

 いくら考えても分からない。
 貴族達の横暴に耐えかねて革命を起こしたまでは良かった。
 民衆を味方につけて、王宮を包囲した。
 国王を始めとした王族たちを地方に軟禁する手はずだった。なのに、暴徒化した民衆は止まらなかった。あろうことか、王族を皆殺しにして、王宮の備品を戦利品として持ち帰りやがった。

 民衆は止まらない。

 次々と貴族の屋敷を襲い、そこに住む女子供に狼藉を働き金目の物を取っていく。その繰り返しだ。注意喚起を行っても聞く耳を持たない。
 汚職塗れの貴族の処刑と一緒に犯罪者達の公開処刑も実行した。

 話しても分からない連中には痛みで理解を促すしかなかった。

 恐怖で民衆を支配した。

 それも半年も待たずに瓦解した。
 ああ、そうだな。
 支配階級が同じ平民だ。
 他の平民たちの沸点が低くなっていた。

 新政権の役人を狙う者が増え、それは次第に暴徒化していった。

 治安部隊が真っ先に寝返ったのが運のツキだ。

 今や、この国は無法地帯。
 仲間が今どうなっているのか、生き残っているのかすら分からない有り様だ。
 この濁流を食い止める術はない。

 ――権限もないくせに人の上に立って威張りくさって!!――

 国民の怒りの矛先は王侯貴族だけに留まらない。
 見つかれば俺もリンチを受けるだろう。
 もはやこの国の秩序は崩壊している。


 夜になるのを待つしかない。
 暗くなれば人通りも少なくなる。

 この街から逃げなければならない。

 国境を目指して――――


 だが目指した先に何がある?
 それでも目指さないとならない。生き残るために。ただそれだけのために国境を目指した。

 街道を避け、山道を抜ける。
 もう時間がない。食料も武器もないが何としても隣国まで辿り着かないといけない。
 そうすればチャンスはあるはずだ。
 俺はそんな僅かな希望を胸に歩幅を広げて一歩、また一歩と進んでいった。


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