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~ロクサーヌ王国編~
25.役人side
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はぁ……。
何でこんなことになっちまったんだ?
国王と貴族共が結託して『庶民院』をぶっ潰しやがった。くそっ!
折角手に入れた権利を雲の上の連中から突如取り上げられちまった。
こんな理不尽なことがまかり通っていいのか?ヨクナイだろ!
前の宰相が政治改革を行って俺たちのような庶民にも権利を与えられた。
そりゃ、嬉しかった。
学のない者は「そんなもの」と思ってる輩は多かったが、俺は嬉しかった。一応、母親が元教師だ。大工の父親が職にあぶれ飲んだくれになるまでは普通に暮らしていた。母親から読み書き計算を教えられていたお陰で進学ができた。それも前宰相が優秀な子供は学費免除を打ち出してくれたからだ。
国の役人になれた。
王宮出仕。
前宰相は身分の貴賤を問わない。
実力さえあれば上にいける。
それは本当だった。
俺は順調に昇進していった。
改革派の代表といえる前宰相は時に驚くような政策を立てる。
その開明的な政治政策は度肝をぬく事があった。
ひよっこ同然の俺にも改革案を求めてくる時もあった。
『若い意見は大事だ。』
改革案を何度も直した。
仲間達と何度も話し合った。
前宰相の元での改革が実行され、社会は劇的に変化した。
経済は活性化し、税収は増えた。
生産量は年々上がり続けて。
まだ貧しい者達はいる。
スラムがあるのも確かだ。
それでも、改革を続けていけば、いずれは。そう思った。未来は明るい。希望に満ちていると信じて疑わなかった。
その改革をまさかこんな形で頓挫するとは……。
王都を去って行く前宰相に掛ける言葉がなかった。
今思えば保身が働いたのだ。
平民がやっとここまで来たんだ。
それを全て捨てて前宰相について行く事はできなかった。
こんなことになるなら。
全てとは言わないが、それでも前政権が推し進めてきた改革に影が差す。それくらいは嫌でも分かる。
そして、この国にはまだまだ多くの不満を抱えている民がいることも分かっている。だが残った貴族はそれを理解していない。新政権は改革の意味を全く理解していない。時代の波を逆流するかのような動きを見せているのがその証拠だ。暴動が起きようが鎮圧すればいいと思っている。ああ、確かに今のところは何とかなっている。
結局、貴族どもは自分のことしか考えていないのだ。
自分の懐が潤うことしか興味がない。
あいつらは自分が楽することしか考えてない。
だから、平気で民衆の命を天秤にかけることができる。
「もう我慢の限界だよ。」
仲間の一人が呟いた。
「ああ……そうだな。」
「どうする?」
「どうするも何もやるしかないだろう?このままじゃ、あの連中に搾取されるだけだぜ!」
「しかし、革命を起こすとなると……」
「おいおい!怖いのか?」
「馬鹿言うな!そういう意味じゃない。ただ、現実的に考えて成功するとは思えない」
「成功させるんだよ!俺たちの手で!その為にこれまでやってきたんじゃねぇのか?違うか?」
「それはそうだけど……」
「前宰相閣下だってきっと分かってくれるさ。いや、分かってくださるはずだ」
「そうだといいが……」
仲間達は不安げだった。
そりゃそうだ。
誰だって死ぬのは御免だし、失敗したら死罪は免れないだろう。
それでも俺は前に進むべきだと思った。
「俺達の手で必ず成功させてみせる!絶対に諦めちゃいけないことだ!」
俺の言葉に皆は顔を見合わせた。
「お前の言う通りだな」
「ああ、そのとおりだ。ここで逃げたら男じゃねえ」
「行こう。前へ!」
こうして俺達の長い戦いが始まった。
何でこんなことになっちまったんだ?
国王と貴族共が結託して『庶民院』をぶっ潰しやがった。くそっ!
折角手に入れた権利を雲の上の連中から突如取り上げられちまった。
こんな理不尽なことがまかり通っていいのか?ヨクナイだろ!
前の宰相が政治改革を行って俺たちのような庶民にも権利を与えられた。
そりゃ、嬉しかった。
学のない者は「そんなもの」と思ってる輩は多かったが、俺は嬉しかった。一応、母親が元教師だ。大工の父親が職にあぶれ飲んだくれになるまでは普通に暮らしていた。母親から読み書き計算を教えられていたお陰で進学ができた。それも前宰相が優秀な子供は学費免除を打ち出してくれたからだ。
国の役人になれた。
王宮出仕。
前宰相は身分の貴賤を問わない。
実力さえあれば上にいける。
それは本当だった。
俺は順調に昇進していった。
改革派の代表といえる前宰相は時に驚くような政策を立てる。
その開明的な政治政策は度肝をぬく事があった。
ひよっこ同然の俺にも改革案を求めてくる時もあった。
『若い意見は大事だ。』
改革案を何度も直した。
仲間達と何度も話し合った。
前宰相の元での改革が実行され、社会は劇的に変化した。
経済は活性化し、税収は増えた。
生産量は年々上がり続けて。
まだ貧しい者達はいる。
スラムがあるのも確かだ。
それでも、改革を続けていけば、いずれは。そう思った。未来は明るい。希望に満ちていると信じて疑わなかった。
その改革をまさかこんな形で頓挫するとは……。
王都を去って行く前宰相に掛ける言葉がなかった。
今思えば保身が働いたのだ。
平民がやっとここまで来たんだ。
それを全て捨てて前宰相について行く事はできなかった。
こんなことになるなら。
全てとは言わないが、それでも前政権が推し進めてきた改革に影が差す。それくらいは嫌でも分かる。
そして、この国にはまだまだ多くの不満を抱えている民がいることも分かっている。だが残った貴族はそれを理解していない。新政権は改革の意味を全く理解していない。時代の波を逆流するかのような動きを見せているのがその証拠だ。暴動が起きようが鎮圧すればいいと思っている。ああ、確かに今のところは何とかなっている。
結局、貴族どもは自分のことしか考えていないのだ。
自分の懐が潤うことしか興味がない。
あいつらは自分が楽することしか考えてない。
だから、平気で民衆の命を天秤にかけることができる。
「もう我慢の限界だよ。」
仲間の一人が呟いた。
「ああ……そうだな。」
「どうする?」
「どうするも何もやるしかないだろう?このままじゃ、あの連中に搾取されるだけだぜ!」
「しかし、革命を起こすとなると……」
「おいおい!怖いのか?」
「馬鹿言うな!そういう意味じゃない。ただ、現実的に考えて成功するとは思えない」
「成功させるんだよ!俺たちの手で!その為にこれまでやってきたんじゃねぇのか?違うか?」
「それはそうだけど……」
「前宰相閣下だってきっと分かってくれるさ。いや、分かってくださるはずだ」
「そうだといいが……」
仲間達は不安げだった。
そりゃそうだ。
誰だって死ぬのは御免だし、失敗したら死罪は免れないだろう。
それでも俺は前に進むべきだと思った。
「俺達の手で必ず成功させてみせる!絶対に諦めちゃいけないことだ!」
俺の言葉に皆は顔を見合わせた。
「お前の言う通りだな」
「ああ、そのとおりだ。ここで逃げたら男じゃねえ」
「行こう。前へ!」
こうして俺達の長い戦いが始まった。
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