21 / 79
~ロクサーヌ王国編~
21.王太子side
しおりを挟む父上からの叱責後は散々だった。
どれだけ言っても理解してくださらなかった。
「ち、っ父上。あれは必要なことだったんです。あの女に正義の鉄槌を下すには……」
「なにが正義だ!!裁判官を脅して周囲に金を握らせて証言させるっておいて!!しかも証拠物件は全部出鱈目ではないか!!!」
「し、仕方なかったのです。あの女は卑怯にも証拠を残さなかったので……。クロエに対する数多くの犯罪行為を辞めさせるためには仕方のない事だったのです」
「その犯罪行為自体がなぜヴァレリー公爵令嬢の仕業だといえる?」
「そんなものは決まっています!クロエがそう言っていたからです!!」
「つまり浮気相手の言い分だけを聞いて冤罪を起こしたという訳だな」
「ち、違います!!実際、私も見ました!!」
「ほぉ、一体なにを見たんだ?ヴァレリー公爵令嬢が犯罪まがいの嫌がらせをしている現場か?それとも誰かにそう聞かされて思い込んでいるだけか?」
「そ、それは……」
「大方、その誰かに吹き込まれて記憶違いをしているだけであろう」
「違います!」
「なにが違う?」
「証拠があります!クロエは持ち物を何度も壊されてます!!それに聞くに堪えない誹謗中傷の数々。きっとあの女が悪評を流したに違いありません!!!」
「そんな訳がないだろう」
「何故言い切れるのですか!!」
「決まっているだろう。ヴァレリー公爵令嬢には王家の影をつけてある。もしも彼女がそのような行為をしていたら報告してくる。その前に行動に移さないように未然に防ぐ手立てにもなっている」
「はっ?!」
王家の影?
あの女に?
父上は一体なにを……。
「何に驚いている?ヴァレリー公爵令嬢は卒業後は王家に嫁ぐ身だ。影をつけるのは当然だろう。無論、お前にもつけているぞ」
「なっ?!父上?!」
私にも影をつけているだと?!
なぜ!!?
「その顔は理解していないようだな。王太子であるお前に万が一のことがあれば目も当てられん。だからこそ影を付けているんだ。もっとも、学生の間だけは自由にいさせることを命じてあった。卒業後は嫌でも自由などないからな。だが……まさかそれが裏目に出ようとは……」
「ち、父上……?」
「お前と浮気女との関係など随分前から知っている」
「なっ!?」
「学生の間までだと思って大目に見ていた。公爵にも頭を下げてお願いしていたんだ。まぁ、その見返りとして鉄道利権を失う羽目にはなったがな」
「なんですって?!」
「一々驚くな。当然のことだ。それにお前がヴァレリー公爵令嬢を娶れば特に問題はない事だったんだ。公爵は令嬢の持参金の一つとして鉄道利権を付けると申し出てくれていたからな」
血の気が引く思いだ。
まさか利権を失っていただなんて。あれは王家にとって重要な資金源の一つだ。それを永久に失ったと聞かされた。ショックを受けない方がおかしい。
その後、父上から色々聞かせられた。
殆ど記憶に残っていないが、王家は公爵家に多額の賠償金と慰謝料を支払うことになった。
121
お気に入りに追加
3,214
あなたにおすすめの小説

本日より他人として生きさせていただきます
ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。
しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。

婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。
白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。
ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。
ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。
それは大人になった今でも変わらなかった。
そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。
そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。
彼の子を宿してーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる