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~ロクサーヌ王国編~
16.王太子side
しおりを挟む王宮に戻ると何故か侍女頭から「人員不足」を通達され、理解不能な王宮のシステムについてこれでもかと説明を受ける羽目になった。
クロエには申し訳ないが、暫くはホテルで暮らしてもらう事にした。勿論、毎夜通うつもりだ。
それにこれはいい機会だ。
愛しいクロエに仕えさせる者を新たに選出するいい機会でもある。人手不足なら応募を掛ければすぐに見つかる。その中でよりいい人材をクロエ付きにすればいい。部屋にしてもそうだ。クロエが使用する家具やドレス一式を新たに調達しなければならない。ついつい先走り過ぎてしまった。反省しなければ。男性と違って女性は何かと入り用だ。うっかり見落としていた。
それにしても王宮のシステムと言うのは無駄が多いな。誰だ?こんな手間な事を決めたのは?侍女頭は十年前に今のシステムになったと言っていたな。と言う事は、だ。以前はこんな面倒な事はしていなかったということじゃないか。
これは調べる必要があるな。
「ユベール?どうかしたの?」
「なんでもないよ」
「嘘!とっても怖い顔をしてたわ」
「ああ……少し考え事をしていただけだ」
「そう?」
「ああ、クロエが心配する必要のないことだ」
「ならいいんだけど……」
心配そうにのぞき込むクロエ。愛しい存在だ。父上に言われるまま婚約をしなければならなかったブランシュとは大違いだ。あいつは指一本触れさせなかったからな。それに引き換え、クロエは可愛い。あいつと違って――
今夜も私はクロエに溺れていく。
彼女は着やせし易いタイプだ。こんなに素晴らしい肉体をドレスで隠しているとはなんとも勿体ないことだ。そうだ!彼女のドレスはこれから私がデザインしよう!私なら彼女の魅力を存分に引き出せるだろう。クロエに覆いかぶさりながら今後の事を考えていた。
だから知らなかった。
ヴァレリー公爵家の恐ろしさを。
かの家によってもたらされていた繁栄だという事を。
『栄枯盛衰』の意味を知ったのはそれから暫く経ってからのことだった。
この時の私には知る由もない――
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