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~ロクサーヌ王国編~

12.父公爵の改革②

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 父の改革は確かに効果を発揮しました。閉塞感漂う社会に劇的な変化を与えたのですから。産業に力をいれて雇用を生み出し、商人同士の熾烈な商売争いを起こさせて癒着をなくしたお陰で「安くて悪い物」は店から消えました。登用される文官は実力さえあればドンドン出世していくシステムに変え、従来の「家柄制度」を廃したのです。

 けれどそれは新たな問題を生み出したのです。

 元々、私の父である公爵は仕事人間の実力主義。
 嫌な言い方をすると「実力を発揮しない者を理解できない」「才能のない者の気持ちが分からない」「能力をださないというのは即ち努力が足りないからだ。努力すれば必ず成果は発揮する」といった処があるのです。
 なので父の政策は基本「努力する才覚のある者のため」とも言えるでしょう。つまり、才能のない人間は度外視しているのです。そもそも「努力しても出来ない」という人の理解が乏しい父に別れと言う方が難しいのですが……。
 それでも公爵領での領地経営は父と私の共同作業でした。父が取りこぼした者達切り捨てた者達を拾い上げるのが私の仕事とでも言いましょうか。だって、よく考えてください。元から下級身分の者は学校に通う事もできないのです。つまり文字の読み書きができない。そういった人々は半数以上いるのが現実なのです。それを「才ある者を優遇する」と言ったところで優遇されるのは大貴族に顎でこき使われてきた下位貴族と中流階級のみ。更に下の者達には政策が行き届かないどころかその意味さえ理解できていない節がみられます。

 夢と期待を膨らませていた民衆の大半は失望したことでしょう。街には不平不満をいう者達が次第に増えていったのは必然でした。


『何故だ。何故、王都の民は努力を怠るのか……私には理解できん。政府への不満はいつの世でもある。だが、それに負けずに切磋琢磨すべきだろう。何故、なにもかも政府のせいにするのか。我々の悪口に花を咲かせる暇があるのなら他にやるべきことをしてから言うべきだ』

 父の見当違いの嘆きに私は唖然としたものです。
 もっとも、現政府の大多数が父と同じような意見なので修正する事は不可能でしょう。彼ら現政権は父の政策で引き上げられた者ばかり。前政権なら間違いなく上に上る事は不可能だったでしょう。身分の上下関係ない、とした父だからこそ彼らの努力は報われたのです。それを否定する事は困難な上に彼らも「努力しない者を嫌う」傾向にありました。
 
 こうした現政権の思想は多くの国民との間に亀裂を生じさせていたのです。
 


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