【改編中】悪女と罵られたので退場させていただきます!

つくも茄子

文字の大きさ
上 下
5 / 79
~ロクサーヌ王国編~

5.侯爵令嬢side

しおりを挟む
 私、フェリナ・メルケス侯爵令嬢はこのありえない裁判結果に内心焦っていました。それもそうでしょう。誰が見ても冤罪だと分かりそうなものを……有罪にするなんて。
 

「とんでもないことになったわ」

「如何なさいますか、お嬢様」

「決まっているでしょう。この事を一刻も早く王宮にいるお父様に伝えてちょうだい」

「畏まりました」


 公爵家の、しかも王家の血を濃く引きついだヴァレリー公爵令嬢が女性を襲った罪で有罪ですって!?しかも、この国から追放だなんて……王太子殿下の命令でしょうか?裁判官は蒼白な顔色のまま。裏で手をまわしたと踏んで間違いないでしょう。
 我が国は法の元に平等だと明文化されております。それは権力者による圧政をなくすために法律として導入されたもの。それを国の頂点に立つ王族が自ら破るなんて……。殿下は御自分が今どれほど危ない橋を渡っているのか理解されているのかしら?

 特権によってヴァレリー公爵令嬢を断罪するという意味を――

 王家としての権限を行使した以上は、国王陛下の責任において行っている内外に知らしめるもの。つまりこれは、国を挙げての宣言となりうるのです! それを理解しているのかいないのですか!?
 それにしても、王太子殿下も考えられましたわね。
 ちょうど今は陛下とヴァレリー公爵が同時に国外に出かけられている最中ですから、これ幸いとヴァレリー公爵令嬢を追い落としにかかるつもりなのでしょう。一見いい案のようですが、些か詰めが甘いですわ。
 このような暴挙を国王陛下とヴァレリー公爵が認めるはずがありませんもの。お二人が戻られた時は一体どうなさるおつもりなのかしら?


 
「お嬢様、旦那様と連絡が取れました。至急、屋敷に戻られるとのことです」

「そう、それでは帰りましょうか」

 私は、ざわつく法廷を一瞥するとそのまま裁判所を後にしたのです。
 勝利を讃える愚か者たち。
 その中に自分の婚約者がいると思うと頭が痛くなる思いですが、これも致し方ありません。

 残念ですわ。
 オットー様とは良い関係を築けると思っていたのですけど。きっと私達には縁がなかったのでしょうね。私とオットー・ヴァレリー公爵子息との縁も数日以内に切れるでしょう。公爵閣下が戻られるまでに必要な書類を準備しなければなりませんもの。せいぜい、今だけは勝利を美酒を味わってくださいな。メルケス侯爵家は宮廷貴族。メリットのない男性を婿させるほど落ちぶれてはいませんわ。たかだか子爵家出身の彼とわざわざ婚約をしたのは彼がヴァレリー公爵家のだったからこそです。それが無くなると分かった段階でこの話はご破算というものですわ。
 せっかく、公爵家の猶子になられたといいますのに何故それを不意にするような行為をなさるのか、私には理解できません。

 公爵家の猶子でなくなった彼に待ち受けている未来は限りなく暗いでしょうに……。
 


 
しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】欲をかいて婚約破棄した結果、自滅した愚かな婚約者様の話、聞きます?

水月 潮
恋愛
ルシア・ローレル伯爵令嬢はある日、婚約者であるイアン・バルデ伯爵令息から婚約破棄を突きつけられる。 正直に言うとローレル伯爵家にとっては特に旨みのない婚約で、ルシアは父親からも嫌になったら婚約は解消しても良いと言われていた為、それをあっさり承諾する。 その1ヶ月後。 ルシアの母の実家のシャンタル公爵家にて次期公爵家当主就任のお披露目パーティーが主催される。 ルシアは家族と共に出席したが、ルシアが夢にも思わなかったとんでもない出来事が起きる。 ※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います *HOTランキング10位(2021.5.29) 読んで下さった読者の皆様に感謝*.* HOTランキング1位(2021.5.31)

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

処理中です...