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本編
16.カルーニャ王国の進退
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何故このようなことに――!
カルーニャ王国の宰相は、ふらふらと覚束ない足取りで王宮の廊下を歩いていく。
本来、宰相は国王陛下への謁見には立ち会わずとも、陛下に謁見しにきた貴族の挨拶を聞き、宰相用の控室で待機していなければならない。
しかし、今回のこの不祥事によって王国そのものが揺らぎかねない事態に宰相は、後悔と共に、国王のいる寝室へと足を向けていた。
こんな非常事態に、国王は若い側妃の所へ入り浸りで、宰相がいくら呼び出そうとも全く反応しない。
「陛下! 国王陛下!」
「なんだ、うるさいぞ」
ようやく寝室から国王が出てきた。
「なんだではございません! このような事態を放置して何をなさっているのですか!」
宰相は、この非常事態に国王が何もしていないことに怒りを隠せないでいた。
王はこの事態をどう考えているのか。
しかし――
「ああ、そのことか」
と、国王は興味なさそうに答えた。
女に現を抜かしている場合か!
宰相は更に怒りをあらわにした。
「陛下!これは一大事ですぞ!」
「ああ、そうだな」
国王は宰相の怒りなど全く気にした様子もなく、欠伸をしている。
この事態に何を悠長な! 宰相の怒りは更に高まるが、しかし国王はそんな宰相を気にする様子もない。
「陛下! 陛下はこの国が今どういう状況なのがお分かりですか!」
「……」
「よろしいですか、陛下! 今、この国が生き残れるかどうかの瀬戸際なのですぞ! 陛下がしっかりしなくてどうするのですか!」
「ああ」
もうこの事態を全く理解していない国王に、宰相は更に怒りを募らせる。
王妃が必死に事態を打開しようと奔走しているのに、王は一緒に国の危機に立ち向かおうとしない。
それどころか、若い側妃との情事に耽っているとは!
「陛下!」
「うるさい!もう下がれ!」
国王は宰相を一喝すると、再び寝室へと入っていった。
「陛下! 陛下!」
宰相は必死に呼びかけるが、国王は全く反応しない。
「陛下! お待ちを――」
しかし、無情にも扉は閉じられた。
もうこの事態に打つ手はない。
宰相は絶望に打ちひしがれた。
この日を境に、国王は後宮から全く出てこなくなった。
宰相は、国王の説得を諦め、後宮に籠もる国王に代わり、国を導くべく奮闘するのであった。
国王がここまで無能だとは思わなかった。
しかし、このまま手を拱いている訳にはいかない。
宰相は、国を立て直すべく、あらゆる政策を打ち出した。
だが、その努力も虚しく、日に日に王国は衰退していく。
恥を忍んでファブラ王国に使者を送った。
門前払いになると分かってはいても何もしないよりかはマシだ。違う。何かしなければ、そうしなければ、国が滅んでしまう。そんな切迫した思いがあった。
思いが通じたのか、王国は辛うじて救われた。
本当にギリギリの段階で、だ。
宰相は、ファブラ王国に深い感謝と謝罪の意を伝える。
これで王国は存続できるのだ。
宰相は、王国を存続させる為なら、どんな犠牲も厭わない覚悟だ。
どのような形でも王国の存続に繋がればいい。
そう、どんな形になろうとも――
カルーニャ王国の宰相は、ふらふらと覚束ない足取りで王宮の廊下を歩いていく。
本来、宰相は国王陛下への謁見には立ち会わずとも、陛下に謁見しにきた貴族の挨拶を聞き、宰相用の控室で待機していなければならない。
しかし、今回のこの不祥事によって王国そのものが揺らぎかねない事態に宰相は、後悔と共に、国王のいる寝室へと足を向けていた。
こんな非常事態に、国王は若い側妃の所へ入り浸りで、宰相がいくら呼び出そうとも全く反応しない。
「陛下! 国王陛下!」
「なんだ、うるさいぞ」
ようやく寝室から国王が出てきた。
「なんだではございません! このような事態を放置して何をなさっているのですか!」
宰相は、この非常事態に国王が何もしていないことに怒りを隠せないでいた。
王はこの事態をどう考えているのか。
しかし――
「ああ、そのことか」
と、国王は興味なさそうに答えた。
女に現を抜かしている場合か!
宰相は更に怒りをあらわにした。
「陛下!これは一大事ですぞ!」
「ああ、そうだな」
国王は宰相の怒りなど全く気にした様子もなく、欠伸をしている。
この事態に何を悠長な! 宰相の怒りは更に高まるが、しかし国王はそんな宰相を気にする様子もない。
「陛下! 陛下はこの国が今どういう状況なのがお分かりですか!」
「……」
「よろしいですか、陛下! 今、この国が生き残れるかどうかの瀬戸際なのですぞ! 陛下がしっかりしなくてどうするのですか!」
「ああ」
もうこの事態を全く理解していない国王に、宰相は更に怒りを募らせる。
王妃が必死に事態を打開しようと奔走しているのに、王は一緒に国の危機に立ち向かおうとしない。
それどころか、若い側妃との情事に耽っているとは!
「陛下!」
「うるさい!もう下がれ!」
国王は宰相を一喝すると、再び寝室へと入っていった。
「陛下! 陛下!」
宰相は必死に呼びかけるが、国王は全く反応しない。
「陛下! お待ちを――」
しかし、無情にも扉は閉じられた。
もうこの事態に打つ手はない。
宰相は絶望に打ちひしがれた。
この日を境に、国王は後宮から全く出てこなくなった。
宰相は、国王の説得を諦め、後宮に籠もる国王に代わり、国を導くべく奮闘するのであった。
国王がここまで無能だとは思わなかった。
しかし、このまま手を拱いている訳にはいかない。
宰相は、国を立て直すべく、あらゆる政策を打ち出した。
だが、その努力も虚しく、日に日に王国は衰退していく。
恥を忍んでファブラ王国に使者を送った。
門前払いになると分かってはいても何もしないよりかはマシだ。違う。何かしなければ、そうしなければ、国が滅んでしまう。そんな切迫した思いがあった。
思いが通じたのか、王国は辛うじて救われた。
本当にギリギリの段階で、だ。
宰相は、ファブラ王国に深い感謝と謝罪の意を伝える。
これで王国は存続できるのだ。
宰相は、王国を存続させる為なら、どんな犠牲も厭わない覚悟だ。
どのような形でも王国の存続に繋がればいい。
そう、どんな形になろうとも――
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