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第30話六年前~ブリリアントside~
しおりを挟む側妃の定員は三名。
基本、側妃になるのは政略の意味もあり、伯爵家までの御令嬢が選ばれています。王子を産んだ場合、その子が国王になる可能性があるためです。そのため、高位貴族の後見人が必要不可欠な地位でもあります。庶子の王族とはいえ、王位継承権を持つのですから当然の措置とも言えました。また、側妃たちは公務に参加なさいます。王妃と側妃とで分担して行いますので下位貴族の令嬢では到底無理なことでした。この点を考えてもシュゼット側妃が「病弱なため公務の不参加を認める」とした意味が透けて見えるというもの。
公式愛妾は文字通り、公式に認められた「愛人」です。
こちらも別の意味で厳しいと言えるでしょう。定員は一名。男爵家以上の貴族女性がなります。ただし、必ず既婚者でなければなりません。これは、「妃」との区別をするものだとも言われていますが、要は、子供が出来た時の問題とも言えます。公式愛妾が国王の子供を産んだとしても子の父親は「書類上の父」が正式な父親となります。側妃の庶子たちとは異なり、王位継承権は与えられず、王族と名乗る事すらできません。歴代の国王の中には認知なさった方もいらっしゃいますが、それは極めて稀な例でしょう。
そして最後の愛妾は……嫌な言い方ですが『後宮で飼われるだけの存在』なのです。
公式愛妾とは違い社交界に出ることは許されません。騎士爵家や平民出身者又は子細ある女性がなるのですが、彼女達は例え子供を身籠ったとしても子供を産ませてもらえません。初期の段階で堕胎薬を飲まされます。それでも産まれた場合は人知れず処分されてしまうとか……。愛妾になった女性は子供を産むことを許されないのです。表舞台に出られない存在は「いなかった者」とされるのです。つまり、愛妾の子は「存在しない者」となる訳です。
これが所謂『飼い殺し状態』というものでしょうね。
勿論中には「非公式愛人」として後宮で成り上がり「公式愛妾」になった女性もいるにはいますがるようですが、極々稀ですし、ただ陛下の心身を癒やすためだけの存在。人数制限はありません。ご寵愛を賜る為だけに彼女達は囲われているのですから愛妾となった女性の行く末は決して明るくありません。側妃や公式愛妾とは違い、下賜されても正式な「妻」にはなれません。「国王の愛人」から「貴族の愛人」に代わるだけの話。国王陛下から下賜された以上は大切に扱われているでしょうが、それは「愛玩動物扱い」だったり、ただ単に「囲っているだけ」「手を出す必要がない」状態だったりと、「新しい飼い主」が彼女達に全く関心がない場合も多いようです。捨てられる心配だけはないと安心できるかは微妙なところですわね。
なので、貧民街育ちのベリー伯爵夫人は正に「シンデレラストーリー」でしたが、彼女のように「愛人契約」で国王陛下の「囲い女」になれたのは初めての事です。彼女は運良く陛下に見初められたのではなく、「実力」で勝ち取ったようなもの。公式愛妾と女優業を兼業するというのは前代未聞であり、彼女以外にはいないと思います。
仕事上のパートナーであるベリー伯爵とも「婚姻契約」を交わしているようです。元々、公式愛妾になるための結婚ですからね。一見、ベリー伯爵にメリットはないように見えますが、王族との縁ができたのは彼にとっても損ではないのです。それに、ベリー伯爵は「妻を国王に差し出した」ということで子爵から伯爵に陞爵しています。その辺りからも彼の利益が窺えることができると言うものです。
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