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第27話六年前~ブリリアントside~
しおりを挟む王妃殿下との茶会。
正直、あまり気乗りはしませんでした。けれど今回に限り、何故か、お母様が妙に乗り気だったのです。
「ブリリアント嬢、ユリウス王太子と互いを理解し合うためにも交流を増やすべきだと思いませんか?」
穏やかな空気の中で今回の茶会の目的を知らされました。
「それは良い考えだわ。でも、私達はユリウス王子をあまり良く知らないのです。なにより、実の叔父があのような方でしたもの。私たち夫婦は大切な娘を託していいものか不安ですわ。なので、御本人との交流よりもまずは生母のシュゼット側妃を詳しく知りたいと考えているわ」
「シュゼット側妃をですか?」
「ええ。ユリウス王子は後宮で生母により育てられてきたのでしょう。園遊会の時の様子から随分慕っていると思われるわ。違うかしら?」
「いいえ、その通りです」
「噂では乳母も付けずに慈しみ育てていたとか」
「シュゼット側妃は騎士爵家の出身と申しましても、平民同然に育ったようです。慣れぬ後宮での生活の中で床に臥せることが多くありました。その中での懐妊により、更にベッドから起き上がれないほど衰弱してしまいました。一時期は母子ともに危なかった事もあったのです。そのせいでしょうか。陛下もユリウス王子の子育てはシュゼット側妃の自由にさせていたのです」
「それと、一時の愛妾が身籠って他の妃にも子宝が恵まれるかもしれないという気持ちがあったんでしょうね。当時は。結局、シュゼット側妃以外は誰も身籠らないままだったけど」
「はい」
お母様……。
それは王宮での禁句ですわ。
伯父である現王、アウグスト国王は色好みで、後宮では若く美しい女性達が寵愛を巡り競い合っている事は市井にも伝わるほど有名です。しかも、飽きやすい質のようで長続きした寵姫はいません。側妃や愛妾も飽きるとすぐに臣下に下賜なさるのです。恐らく、後宮で長くいるのはユリウス王子を産んだシュゼット側妃くらいではないかしら? 愛妻家のお父様とは正反対ですね。
後宮に数多の女性がいながら、懐妊したのは何故かシュゼット側妃だけです。
そのせいか、ユリウス王子の出自を疑う声が後を絶たないそうです。
シュゼット側妃は身分が低い上に気鬱の病を患い、床につく日が多かった事もありますし。加えて、騎士爵家出身とあって、王家の血が流れていないのではないかと揶揄する者がいるのです。国王陛下を憚ってか、王宮ではその話はタブー中のタブーになっているとか。
けれど、そんな悪意に満ちた噂話はお母様の前だと通用しません。
「まあ、ブリリアントが子供を産めば何の問題もない話でしょうけどね」
「はい、その通りです」
お母様の揶揄する言葉に笑顔で答える王妃殿下は流石です。
きっと、貴族間のドロドロとした陰謀劇を嫌と言う程見てこられたのでしょう。まったく動じませんもの。この件については、根深い問題もあるはずなのに表立って問題にはなっていません。
恐らく、全て裏で握り潰されてきたのでしょう。
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