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46.王太子side
しおりを挟む「なんでよ!なんでもっと早く来てくれないの!?」
久しぶりに訪れた後宮。
ソニアの第一声がコレだ。
私の顔見た瞬間に叫んだ。
「来るのが遅すぎるわ!!」
顔を真っ赤にして怒る姿に辟易する。
確かにソニアから「会いたい」という報告は受けていた。だが、こちらの都合も知らずに唯々自分の都合のみを優先する態度に嫌気がさす。少しは相手の気持ちを考えるということが出来ないのか?と説教したくなるのを我慢し、肩を竦めた。
「仕事で忙しかったんだ」
「知らないわよ!」
……知らんと来たか。まあ、公務の一切こなさない妃だ。後宮に閉じこもっている状態では何も知らないのは無理もない。それでも、だ。王族が只着飾って笑ってすごしている存在でないこと位は子供でも分かる。結婚して直ぐなら兎も角、ソニアは何年も側妃をしているし、最高の教師をつけているんだ。王族の責務、というものがあることを理解しておいてもいいだろうに。
相変わらず唸るソニアを見ながらハァと溜息をつく。
「何で溜息ついているのよ!?」
キッと睨むソニアに益々うんざりした。
だが、今更だ。いちいち苛立っても仕方ないし、何時までも彼女の我儘に付きあうほど私も暇ではない。
「これでも最大限急いだ方だ」
「嘘!」
「本当だ。王太子としての予定は三ヶ月先まで詰まっている」
「遅よ!本当は女と会うのに忙しいんでしょ!?私、知ってるんだから!年増女の次は若い女の尻を追いかけまわしてるって!浮気しまくってるくせに言い訳する気!?女達に会う事を優先しているのも知っているわ!」
……どうやってその情報を手に入れたのか是非とも詳しく問いただしたいところだ。まあ、ソニアのことだ。どこかの使用人達の会話を偶然聞いたのだろう。まったく。ソニアのところの使用人はよほど口が軽いらしい。
「彼女達は私の大事な友人達だ」
「なにが友人よ!ただの浮気じゃない!」
「浮気ではない」
「浮気よ!」
「愛妾の存在は公的に認められている」
「な、なに言ってんの……?」
「ソニア、君はもう一度後宮のシステムと王族のルールを学び直した方がいい」
「は?何言ってんの?」
「妃の仕事の一つに、子供を儲ける義務がある」
「……」
「私達との間には何年も子供がいない。そのことを踏まえて私が君とは別の女性と子供を儲ける事は王族としての義務でもあるんだ。現在、王族は極端に少ないからな。例え最初は庶子として生まれたとしても母親の昇進によって正式な跡取りに転ずる場合もある。君との結婚で私は正妃を持つことが出来なくなった。ならそれを補える存在が必要だ。あまり煩い事を言うのなら私も君に対して然るべき処置をとらないといけなくなる」
それだけ言うと、私は後宮を足早に去った。私の後を慌てた様子で護衛官が追いかけたのが分かったが、私は構わずに歩く。
これ以上の面倒ごとは御免だ。
背後からソニアの怒声が聞こえるが、聞かないふりをする。後宮の者達にとってソニアの怒声も奇声も何時ものことなのだろう。驚く者は一人もいなかった。誰も気にすることはなく淡々と日々の職務をこなしている。
はぁ……。
疲れた。
久しぶりに訪れた後宮。
ソニアの第一声がコレだ。
私の顔見た瞬間に叫んだ。
「来るのが遅すぎるわ!!」
顔を真っ赤にして怒る姿に辟易する。
確かにソニアから「会いたい」という報告は受けていた。だが、こちらの都合も知らずに唯々自分の都合のみを優先する態度に嫌気がさす。少しは相手の気持ちを考えるということが出来ないのか?と説教したくなるのを我慢し、肩を竦めた。
「仕事で忙しかったんだ」
「知らないわよ!」
……知らんと来たか。まあ、公務の一切こなさない妃だ。後宮に閉じこもっている状態では何も知らないのは無理もない。それでも、だ。王族が只着飾って笑ってすごしている存在でないこと位は子供でも分かる。結婚して直ぐなら兎も角、ソニアは何年も側妃をしているし、最高の教師をつけているんだ。王族の責務、というものがあることを理解しておいてもいいだろうに。
相変わらず唸るソニアを見ながらハァと溜息をつく。
「何で溜息ついているのよ!?」
キッと睨むソニアに益々うんざりした。
だが、今更だ。いちいち苛立っても仕方ないし、何時までも彼女の我儘に付きあうほど私も暇ではない。
「これでも最大限急いだ方だ」
「嘘!」
「本当だ。王太子としての予定は三ヶ月先まで詰まっている」
「遅よ!本当は女と会うのに忙しいんでしょ!?私、知ってるんだから!年増女の次は若い女の尻を追いかけまわしてるって!浮気しまくってるくせに言い訳する気!?女達に会う事を優先しているのも知っているわ!」
……どうやってその情報を手に入れたのか是非とも詳しく問いただしたいところだ。まあ、ソニアのことだ。どこかの使用人達の会話を偶然聞いたのだろう。まったく。ソニアのところの使用人はよほど口が軽いらしい。
「彼女達は私の大事な友人達だ」
「なにが友人よ!ただの浮気じゃない!」
「浮気ではない」
「浮気よ!」
「愛妾の存在は公的に認められている」
「な、なに言ってんの……?」
「ソニア、君はもう一度後宮のシステムと王族のルールを学び直した方がいい」
「は?何言ってんの?」
「妃の仕事の一つに、子供を儲ける義務がある」
「……」
「私達との間には何年も子供がいない。そのことを踏まえて私が君とは別の女性と子供を儲ける事は王族としての義務でもあるんだ。現在、王族は極端に少ないからな。例え最初は庶子として生まれたとしても母親の昇進によって正式な跡取りに転ずる場合もある。君との結婚で私は正妃を持つことが出来なくなった。ならそれを補える存在が必要だ。あまり煩い事を言うのなら私も君に対して然るべき処置をとらないといけなくなる」
それだけ言うと、私は後宮を足早に去った。私の後を慌てた様子で護衛官が追いかけたのが分かったが、私は構わずに歩く。
これ以上の面倒ごとは御免だ。
背後からソニアの怒声が聞こえるが、聞かないふりをする。後宮の者達にとってソニアの怒声も奇声も何時ものことなのだろう。驚く者は一人もいなかった。誰も気にすることはなく淡々と日々の職務をこなしている。
はぁ……。
疲れた。
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