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24.影響2

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 各家の力関係は微妙な均衡のまま現状維持を貫いています。

やからした息子加害者の男』を持つ家は暫くの間は大人しくしているでしょう。少なくとも、次の、更に次の代までは。その間に『被害者の女性』は婚家での発言力を増していく。明確な力関係はそう簡単に覆れないもの。ですが、内情は違いますものね。

 表舞台でどれほど権力を持った大臣であったとしても、家に帰れば奥方に頭が上がらないというのは普通にあること。社交界で奥方が情報収集をしているからこそ出世できた例は歴史的に幾つかありますからね。

 そういった女性陣を味方にできたのは僥倖でした。



 次に、ソニア嬢の家族ですがこちらは学園側からの抗議で商売ができなくなっておりました。正確にはソニア嬢のせいで婚約が破談になった家々が不買活動をしていたからですが。女の敵は女、とは良く言ったものですわ。彼女達はこの上なくソニア嬢の動向を細かにご存知のようですわね。各令嬢、そのお家の名まで把握されておりましたもの。学園内の活動記録、外泊記録までバッチリと……。その余波はソニア嬢の父方の親族にまで及んでいます。どうやら父君は婿養子だったようですわね。貴族出身だったようですが、商家の娘と結婚したというからには恐らくお金が目的だったのでしょう。貧乏貴族が裕福な商家の娘と結婚するケースはここ数年で増加しています。珍しいことではありません。

 婿入りした元貴族の男が妻に隠れて愛人を作るケースは特別珍しくありません。

 ただ、ソニア嬢の父君には先妻との間に一人娘がいたようですが……。
 愛人と再婚してからの消息は不明のままです。

 商会の関係者及び街の住民から探り込んで手に入れた情報ですから間違いないでしょう。彼らは「再婚してからお嬢さんの姿を見ていない」「あの婿は『娘は寄宿学校に入れた』と言うが本当かどうか分ったもんじゃねぇ」と疑念を抱いている様子でした。なんでも、その都度で言っている内容が食い違う事があるそうで、その事を追及すると烈火の如く怒り出すのだとか。それで更に疑念が膨れ上がるという悪循環になっているようでした。

 公爵家でも足取りを探ってみましたが、なにせ、数年も前のもの。片田舎の孤児院に数日いた、という情報を最後にその後の足取りが全く掴めませんでした。


『身なりの良い男性が引き取って行かれました』

 孤児院の院長の言葉をどこまで信用していいものか。判断に困りますわ。

『親戚だと言ってましたよ?あの子も懐いていましたし。ええ、初対面ではなかったようです。偶に家に来ていたと言ってましたから』

 紳士的な男。
 益々、怪しいと感じるのは私だけでしょうか?
 問題の娘も懐いていて初対面では無かったということは本当に親戚の可能性もありました。身なりの良い初老の男。最初は、父方の男爵家が保護したものだとばかり思っていましたが、その形跡は全くなく、寧ろ、姪が行方知れずだと知って驚いていました。ならば身なりの良い紳士的な初老の男性とは一体誰だったのでしょう?


 謎は深まるばかりです。


 

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