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公爵夫人2
しおりを挟む神殿による検査。
「病院でも検査は出来るが正確で詳細な結果を求めるなら神殿で行うべきだ」
お父様達はもっともらしく仰ってますけど、要は口が堅い処を選んでいるに過ぎません。神殿は一種の治外法権。それでいて王侯貴族と切っても切れない関係を築いているから貴族の醜聞にも驚かないし、そこから秘密が漏れる事も無い。だから貴族達は挙って神殿に寄進しいざという時に供えています。
今回の場合、相手が悪過ぎて既に噂が蔓延しているため「病院でも良かったのでは?」と思いましたが、「だからこそ神殿の検査が必要だ」という両親の言葉には首を捻りました。私がその理由を知るのは数年の月日が必要となり、我が公爵家の闇を垣間見た瞬間でした。
「これはこれはアンピール公爵様! そして奥方様と御息女様! 本日はよくぞお越しくださいました。娘と御子息様の結婚をお認めくださいましてありがとうございます!」
「お義父様、お義母様、次期公爵夫人として立派な跡継ぎを生んでみせます!」
問題の男爵令嬢だけでなく、その親である男爵夫妻も非常識の塊でした。
公爵家を舐めてます?
それとも下級貴族には礼節と常識が備わっていないのですか?
「我がアンピール公爵家の息子との婚礼を済んでいない未婚の令嬢に親を名のらせることはできん。周囲がおかしな気遣いをするからな」
「本当に。一門の若い方々は行動的ですからね」
両親からの軽いジャブが入りました。
「一族の方からも祝福してくださるなんて娘は果報者です!」
男爵は何も理解していませんね。顔を赤らめている男爵令嬢も同じみたいですけど……。これでは到底高位貴族の社交で生き残っていけません。青ざめた顔の愚兄は分かっているようで安心安心。今にも倒れそうですけど、私は支えませんから頑張って耐えてください。
「ヘンリー、ドロシー嬢と深い仲だそうだな」
「はい……」
「学園では自由を謳歌出来て何よりだ。学園長から伝え聞いたところによると、随分と高等科の方は平等な環境下であったそうだな。生徒の自主性を重んじる学園始まって以来の状況だ」
「あ……」
輝くばかりの笑顔でいる男爵家親子とは打って変わって愚兄の今にも泣き出しそう。漸く事の深刻さが分かったという処かしら?それ、遅すぎ。それにしても、愚兄と男爵令嬢の間に子が既にいるとなれば、二人の関係は学園内で成されたとしか考えられません。我が公爵家は勿論のこと、他の社交場でも外出先でも一切二人が会っている処を見た事がない上に噂にもならなかった。あんな兄でも公爵家の跡取り。常に警護の者を従えていて不審者との密会を報告しないはずがない。唯一、警護出来ない場所が学園。
「神官長殿、よろしくお願いします。」
お父様の言葉に神官長は頷くと他の神官にお兄様と男爵令嬢を別室へ案内するよう命じられました。それというのも、神殿の魔道具は門外不出。失われた古代魔法道具もあるとか。今回使用する魔道具もその一つ。妊娠をしているかだけでなく、生まれてくる子供の父親から子供の性別まで分かるのです。それだけでなく、誰と関係を持ったのかまで調べられるのですから相当でしょう。両親が本当に知りたいのは後者かもしれませんね。病院だと妊娠していているかどうかしか分からないのですから。
「ドロシー・フール嬢は現在妊娠4ヶ月目に入っております。なお、子供の父君は間違いなくヘンリー・アンピール様です」
両親の期待は打ち砕かれました。
なんと、お兄様の子供。
しかも妊娠4ヶ月……という事は堕胎はムリですね。
我が国の法律で堕胎するのは3ヶ月目まで。男爵令嬢はこの事を知っていて、降ろせない段階で騒ぎたてたのでは?
数週間後、愚兄の廃嫡が決まり、繰り上げで私が跡取りなりました。
非常に残念な事ですが、私にはダイアナお姉様のように優秀な頭脳を持っていなかったため婿を取り「アンピール公爵夫人」となったのです。
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