2 / 15
女侯爵2
しおりを挟む
私の名前は、ダイアナ・シャールトン。
我が国の有力貴族、シャールトン侯爵家の一人娘として生を受け、両親の愛情を一身に受けて何不自由ない生活を送っておりました。
両親は典型的な政略結婚でしたが、夫婦仲は良く、高位貴族にありがちな不仲も冷たい家庭といったものはありませんでいた。きっと知らない人が見たら恋愛結婚と勘違いしてしまいそうなほど仲睦まじさです。
そんな両親を見て育った私は他の令嬢方と違って、政略結婚にも「愛」はあるといった考えの持ち主でした。
私には親同士の決めた婚約者がいました。5歳で婚約した公爵家の嫡子、ヘンリー・アンピール。彼は2歳年上の幼馴染でもありました。ヘンリーに両親の話をしたら大変驚かれて酷く羨ましがられたのです。それというのも、ヘンリーの御両親であるアンピール公爵夫妻は典型的な政略結婚の家庭らしく、子育ては専ら乳母が行い、御両親とお会いするのは夕食時位だと言うではありませんか。
「なら、私たちが結婚したら何時も一緒にいましょう!」
他意はありませんでした。私の両親は離れたら死んでしまうのでは?と思う程にベッタリだったからです。
親、兄弟でも中々会えない環境はただただ可哀そうに思っての言葉でした。
「本当に、ずっと傍にいてくれる?」
「勿論です!」
ヘンリーは飛びあがらんばかりに喜ばれました。
私たちの様子を微笑ましく御覧になっていた両親はヘンリーのために我が侯爵家に彼専用の部屋まで用意したのです。「いつでも侯爵家に滞在していいよ」という話です。勿論、アンピール公爵家の許可は取ってあります。その頃、ヘンリーに妹君が誕生していて屋敷中が注目を集めていたせいで余計にヘンリーは孤独感を募っていたのかもしれません。公爵家の令嬢ならば何れは「王妃」になってもおかしくない存在です。ちょうど三年前に王太子殿下が誕生し、一年前には第二王子も生まれていました。公爵家の令嬢が注目されるのは自然の流れだったのです。私の両親もその辺を考慮しての提案だったのでしょう。
「ダイアナ!これからはずっと一緒だね!」
「はい!」
月の半分は我が家で暮らす事になったヘンリーは憂いの顔が段々なくなって溌溂とした表情が増えていきました。
私とヘンリーは兄妹同然だったのです。もっとも、幾ら兄妹同然といっても本当の兄妹ではありませんが、私にとっては「未来の旦那様である家族」という括りでした。当然、ヘンリーにとっても私という存在は「妻になる家族」だとばかり思っていたのです。
まさか、ヘンリーから裏切られるなど夢にも思っていませんでした。
我が国の有力貴族、シャールトン侯爵家の一人娘として生を受け、両親の愛情を一身に受けて何不自由ない生活を送っておりました。
両親は典型的な政略結婚でしたが、夫婦仲は良く、高位貴族にありがちな不仲も冷たい家庭といったものはありませんでいた。きっと知らない人が見たら恋愛結婚と勘違いしてしまいそうなほど仲睦まじさです。
そんな両親を見て育った私は他の令嬢方と違って、政略結婚にも「愛」はあるといった考えの持ち主でした。
私には親同士の決めた婚約者がいました。5歳で婚約した公爵家の嫡子、ヘンリー・アンピール。彼は2歳年上の幼馴染でもありました。ヘンリーに両親の話をしたら大変驚かれて酷く羨ましがられたのです。それというのも、ヘンリーの御両親であるアンピール公爵夫妻は典型的な政略結婚の家庭らしく、子育ては専ら乳母が行い、御両親とお会いするのは夕食時位だと言うではありませんか。
「なら、私たちが結婚したら何時も一緒にいましょう!」
他意はありませんでした。私の両親は離れたら死んでしまうのでは?と思う程にベッタリだったからです。
親、兄弟でも中々会えない環境はただただ可哀そうに思っての言葉でした。
「本当に、ずっと傍にいてくれる?」
「勿論です!」
ヘンリーは飛びあがらんばかりに喜ばれました。
私たちの様子を微笑ましく御覧になっていた両親はヘンリーのために我が侯爵家に彼専用の部屋まで用意したのです。「いつでも侯爵家に滞在していいよ」という話です。勿論、アンピール公爵家の許可は取ってあります。その頃、ヘンリーに妹君が誕生していて屋敷中が注目を集めていたせいで余計にヘンリーは孤独感を募っていたのかもしれません。公爵家の令嬢ならば何れは「王妃」になってもおかしくない存在です。ちょうど三年前に王太子殿下が誕生し、一年前には第二王子も生まれていました。公爵家の令嬢が注目されるのは自然の流れだったのです。私の両親もその辺を考慮しての提案だったのでしょう。
「ダイアナ!これからはずっと一緒だね!」
「はい!」
月の半分は我が家で暮らす事になったヘンリーは憂いの顔が段々なくなって溌溂とした表情が増えていきました。
私とヘンリーは兄妹同然だったのです。もっとも、幾ら兄妹同然といっても本当の兄妹ではありませんが、私にとっては「未来の旦那様である家族」という括りでした。当然、ヘンリーにとっても私という存在は「妻になる家族」だとばかり思っていたのです。
まさか、ヘンリーから裏切られるなど夢にも思っていませんでした。
71
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

元婚約者に未練タラタラな旦那様、もういらないんだけど?
しゃーりん
恋愛
結婚して3年、今日も旦那様が離婚してほしいと言い、ロザリアは断る。
いつもそれで終わるのに、今日の旦那様は違いました。
どうやら元婚約者と再会したらしく、彼女と再婚したいらしいそうです。
そうなの?でもそれを義両親が認めてくれると思います?
旦那様が出て行ってくれるのであれば離婚しますよ?というお話です。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる