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女侯爵2

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 私の名前は、ダイアナ・シャールトン。
 我が国の有力貴族、シャールトン侯爵家の一人娘として生を受け、両親の愛情を一身に受けて何不自由ない生活を送っておりました。
 両親は典型的な政略結婚でしたが、夫婦仲は良く、高位貴族にありがちな不仲も冷たい家庭といったものはありませんでいた。きっと知らない人が見たら恋愛結婚と勘違いしてしまいそうなほど仲睦まじさです。
 そんな両親を見て育った私は他の令嬢方と違って、政略結婚にも「愛」はあるといった考えの持ち主でした。

 私には親同士の決めた婚約者がいました。5歳で婚約した公爵家の嫡子、ヘンリー・アンピール。彼は2歳年上の幼馴染でもありました。ヘンリーに両親の話をしたら大変驚かれて酷く羨ましがられたのです。それというのも、ヘンリーの御両親であるアンピール公爵夫妻は典型的な政略結婚の家庭らしく、子育ては専ら乳母が行い、御両親とお会いするのは夕食時位だと言うではありませんか。

「なら、私たちが結婚したら何時も一緒にいましょう!」

 他意はありませんでした。私の両親は離れたら死んでしまうのでは?と思う程にベッタリだったからです。
 親、兄弟でも中々会えない環境はただただ可哀そうに思っての言葉でした。

「本当に、ずっと傍にいてくれる?」

「勿論です!」

 ヘンリーは飛びあがらんばかりに喜ばれました。
 私たちの様子を微笑ましく御覧になっていた両親はヘンリーのために我が侯爵家に彼専用の部屋まで用意したのです。「いつでも侯爵家に滞在していいよ」という話です。勿論、アンピール公爵家の許可は取ってあります。その頃、ヘンリーに妹君が誕生していて屋敷中が注目を集めていたせいで余計にヘンリーは孤独感を募っていたのかもしれません。公爵家の令嬢ならば何れは「王妃」になってもおかしくない存在です。ちょうど三年前に王太子殿下が誕生し、一年前には第二王子も生まれていました。公爵家の令嬢が注目されるのは自然の流れだったのです。私の両親もその辺を考慮しての提案だったのでしょう。

「ダイアナ!これからはずっと一緒だね!」

「はい!」

 月の半分は我が家で暮らす事になったヘンリーは憂いの顔が段々なくなって溌溂とした表情が増えていきました。
 私とヘンリーは兄妹同然だったのです。もっとも、幾ら兄妹同然といっても本当の兄妹ではありませんが、私にとっては「未来の旦那様である家族」という括りでした。当然、ヘンリーにとっても私という存在は「妻になる家族」だとばかり思っていたのです。
 まさか、ヘンリーから裏切られるなど夢にも思っていませんでした。
 
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