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ブラックアウト ( 最終章 )
【 9 】 閃光少女
しおりを挟む" 私 " が 、シドと生きていく事を選び、
すぐに白黒付けたがる性格の " 私 "が、
他3人の男達に、
別れ話をすると決めた時 … 、
彼女がシドと、
セックスしている光景よりも… 、
複雑な気持ちに、アタシは なった 。
ケンに会うんだな… って 。
シドに会えて、アタシは嬉しかった。
シドが運転する車の助手席に 、
アタシは初めて座った訳だし 。
そのままアタシは 、
シドとセックスできるもんだと…
シドに初めて愛されるものだと… 、
そう期待していたから 、
すごく… 楽しみにしていたんだ 。
だけど … 、
アタシがシドを見る目と 、
" 私 " がシドを見る目が違う事に 、
アタシは 気付いてしまったんだ。
アタシだって、
シドの事が好きだった 。
大好きだった 。
" だった " … ? そうだね… 、
正直 、ケンと出逢うまでは 、
アタシがシドを見る目と 、
" 私 " がシドを見る目は 、
同じ だと思っていたんだ 。
だけどアタシは 、
シドの体温を 、知らない… 。
アタシだけを見てくれるシドの目も、
知らない … 。
シドは 、いつだって…
" 私 " を見ていた。
だけど アタシは …
ケンの体温を知ってしまったから 。
アタシを真っ直ぐに見つめてくれる、
アタシだけを、
真っ直ぐに受け止めようとしてくれた、
そんなケンの優しさを…
知ってしまったから 。
だからアタシは 、
シド 越しに 、
遠くにいるケンを 気に掛けていた 。
時間が経つ毎に 、
会えないのに 、
会えなくても 、会えないから 、
アタシは ケンを 求めていた事に 、
気付かされたんだ 。
だから 、アタシ以外の女に 、
会ってほしくはない 。
アタシ以外の女と 、
幸せになってもらいたい と願う反面 、
アタシだけのケンでいてほしい 、と
ワガママを 拭えないでいる 。今も 。
だからアタシは 、
これ以上 、
そんな複雑な想いに 、
振り回されないように 、
自分に 言い聞かせていたんだ 。
「 アタシは 、シドが好き 。」
好きだよ 、確かに 。でも……
「 アタシは、シドと別れたくない。」
" 私 " はシドと一緒にいた方が安全だ 。
そんなふうに 、自分を圧し殺しながら。
…… 律儀に " 私 " が 、
ケンにまで別れ話をしようと 、
彼に会った夜 。
アタシは 、彼女の視力を通して 、
ケンを見ていた 。
ケンに会えた瞬間 、
1粒の種ぐらいに小さくなっていた、
アタシの魂が 、
激しく揺さぶられたの 。
別れ話を聞くつもりで来た彼は 、
意外にも笑顔で 。
彼は哀しい顔で会いに来ると、
思っていたのに… 。
もう今は 、
遠い昔のように思えてしまう 、
ケンと電話で交わした会話を 、
アタシは小さな種のまま 、
思い出していた … 。
アタシの言葉遣いが悪くても、
" それは、
今のアンジュちゃんの個性 "
と、彼は言ってくれた。
" 大人になったら、自然と直るよ。
そんなアンジュちゃんも見たいから、
ずっと一緒にいたい。」" とも… 。
それなのに 、どうして笑顔なの ?
他に 、好きな女でも出来たのかな ?
もし 、そうだったとしても… 、
今のアタシには 、何も出来ない 。
" 私 " が選んだ選択肢を 、
ただ、黙って見守り続ける事しか… 。
アタシが数ヶ月もの長い間 、
" 私 " を守る為に彼女を隠し、塞ぎ 、
閉じ込めていたように 、
アタシは今 、彼女から 、
同じ事をされている 。…
夜景を見ながら 、
ケンが話してくれた真実に 、
アタシは… とても 傷ついたんだ 。
「アンジュちゃんは覚えてないだろうけど、
俺、アンジュちゃんと付き合う前から、
アンジュちゃんの事、実は知ってたの。」
「 2年くらい前からかな?」……
ケンの話を 、
彼女の耳越しで聞き 、
ケンの照れていく顔を 、
彼女の目を通して見ていたアタシは 、
ケンが2年もの長い年月の間 、
" 私 " に一途に片想いをしていた事を、
知らされる 。
彼が真っ直ぐに見ていたのは 、
彼が大切に抱いてくれたのは 、
アタシ ではなく 、" 私 " だったんだ 。
"「ずっと一緒にいたい 。」"
彼がそう願ったのも 、
アタシではなく 、彼女だったから 。
楽しそうにケンと話す " 私 " は 、
アタシの今の気持ちを、知らない 。
感じる事が出来ないから 。
まるで男友達と話しているみたいに、
ケンに対して、
何の感情も持たない " 私 " は 、
アタシの目の前で 、
ケンから 愛されていた … 。
泣く事も出来ない今のアタシは 、
消える術さえ 知らない …… 。
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