番外編 ダークサイド

暗黙

【 ８ 】 不幸自慢

会いたいのに… 、

会えない寂しさ を 埋める方法は 、



酒 と 煙草 と 、セックス しか 、


アタシには、思いつかない 。



薬 は … 、


セックスをする為の 、


" まやかし " にしかすぎない… 。



シャワーを浴びて 、

バスタオルみたいな短い丈の、

黒いミニワンピを着て、

シルバーのハイヒールを履いて、


テキーラを片手に、酔っ払っていた。


たまに頭を振り乱し、踊りながら 。


クルーズ船のイベント会場で 。


ANNA SUI の バッグを、

肩から掛けて 。



ほぼ 、裸同然のアタシの背後に 、

男達が 群がってくる 。



１人で いたいのに 、


一人で いたくない 。




美咲と 、チバちゃんが … 、


あんな死に方をしたっていうのに、


それを間近で感じたアタシを… 、


こんな夜の中にいるアタシを 、


誰も 、抱きしめてはくれない 。



今夜ぐらいさ… 、誰か 、いろよ 。




       無駄に 、モテる 。



     無駄に 、意味なく… モテても 、




       アタシは 、虚しい だけ 。




汗だくになり、踊り疲れたアタシは 、


カウンターまで無心で歩いて 、


ウェイターにビールを注文する 。


そして、テキーラショットも 。




ビールをチェイサーにして 、


テキーラを飲み込むアタシは 、


ほっといてほしいのに目立つようで、


周りの視線を集めてしまう 。




       今に 、始まった事じゃない 。



   勝手に動いて生きてるだけなのに、



       人からの注目なんて 、



       気持ち悪いし 、いらないのに 。




ビールも 、テキーラも 、


両手使いで飲み干し 、


体の底から 、溜め息を 吐く 。



地獄の底からの、溜め息みたいに 。



酔いに、 酔いを重ねて 、 


現実世界から 、アタシは逃げる 。


全力疾走で 。



リアルな 、鬼ごっこ だ 。……



酒に犯された 、

うつろな 廃人の目で振り返り 、


また 、

踊りに行こうとホールを向くと… 、


アタシの後ろには… 、


全くといっていいほどの、

タイプではない男連中が 、


ざっと 、２０人近く連なっていた 。




       有名な ラーメン屋 かよ 。



       だけど … 、



       今に 、始まった事では ない 。




       そして 、



       一度も 、



     モテたいなんて望んではいない 。




       利用し合いたい 男 と 女 が 、



       向かい合っているだけ 。



       お互い 、空っぽ なの 。




アタシは 、いつものように 、

カウンターに背を向けて 、

両肘をカウンターに付けて 、


男連中を、品定め する 。




    「 …… おまえ と 、おまえ 。」



指先と 、顎先で 、


アタシは沢山の中から、


２人の男を選ぶ 。……





      ケンには見せたくないな … 。



  シドが見たら、幻滅するだろうな…



そんな事を 、思いながら 。



アタシは 、今日という日を 、


どうでもいい 、


名前も覚える気も無い 、


明日には忘れるであろう人間に 、



今夜の 穴埋め を 、託す 。…




       こんな生き方しか 、


       出来ないのよ 。




アタシは 、



ケン を 、好きになりかけていた 。



アタシがもし 、


こんな人生を、


歩むような女じゃなければ…… 、



アタシは 、あなたを 、





幸せ に してみたかったよ 。