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暗黙
【 7 】 不幸自慢
しおりを挟むめずらしく 、
飲みかけの瓶ビールを見つけ、
アタシは その僅かな残りを飲む。
炭酸は、
まだそこまで抜けていなかった。
アタシも、私も、
ビールを残す事はない 。
必ず、全部 飲み干す 。
だから、
まだ瓶の中に3分の1残っていた、
ビールが とても気になった 。
" 私 " が 、
どのタイミングで現れたのか… 、
検討も付かない。
そして、どのタイミングで、
アタシに切り替わったのかも… 。
テーブルの上に置いてある、
ANNA SUI の バッグを手に取る。
美咲の形見に なってしまった… 。
バッグを開けて中を覗くと、
イチゴミルクキャンディーが、
少なくなっていた。
電源の落ちた携帯電話… 。
何度見ても、他には 何も無い… 。
アタシは自分の携帯電話に手を伸ばす。
ケンからのメールの他に、
一番新しい受信メールが、
テルからのメールだという事に、
気付く 。
テルからのメールを開くと 、
《 今日は会えなくて、ごめん。
最近、全然会えてねーもんな。
せっかく連絡くれたのに。
俺だって会いてーよ。
でも、
今はバンドとバイトで忙しいんだ。
また連絡するから、電話出ろよな!
アンジュも、また連絡して!》……
と、書いてあった 。
アタシからは、連絡していない 。
電話の方の受信発信履歴を見ると、
アタシから… 、いや 、
正確には 、
" 私 " からテルに電話を掛けていた。
テルが出なかったらしく、
彼から折り返し、
数分後に電話がかかってきている 。
「 …… 何を、話したんだろう?」
夕方過ぎまで無意識に眠る前… 、
アタシは ひどく疲れていて 、
" 「 会いたい…」" と、
気持ちが落ち込んでいた 。
その後からの、記憶 が 無い… 。
" 私 " が 、今 、必要とした人物は 、
テル だったのかもしれない… 。
… わからないけど 。
「 そっちかよ 。」
" 私 " と 、アタシ は 、まるで違う 。
アタシが、必要とした人は ……
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