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百鬼夜行
【 9 】 あかつき
しおりを挟む腕力で、
男に勝てるなんて思ってない。
そこまで自惚れてはいないし、
世間知らずではない 。
勝てなくたっていい 。
やり返したいだけ 。……
「 てめぇ!」
尻もちから、
すぐに刺青野郎は立ち上がり、
アタシに突進してくる。
チバちゃんのお店で、
初めて見知らぬ女と喧嘩になった時は、
チバちゃんが笑いながら間に入り、
アタシは取り押さえられて、
そこで喧嘩は終わった 。
だけど、
ここに チバちゃんは、いない。
「 やーめーてー!(笑)」と、
チバちゃんの背後から、
ピョコン!と顔を出して 、
笑いながら止めに入ってきた、
美咲も、いない 。
ここは、アタシの知らない場所 。
知らない場所で、
女ではなく、
アタシは今、男と喧嘩をしている。
「 このクソ女がぁ!」
刺青野郎は、
アタシの買ったばかりの服に、
手をかける 。
シンジから貰って余っていた金で、
ここに来る前に買ってきた 、
シャツワンピ 。
何で、シャツを選んだんだっけ…?
あぁ… 、ケンから借りた服が、
シャツ だったからだ 。
ワンピース風に着て 、
ケンのご両親に挨拶に行って… 。
その、名残り… を感じたかった?
ケンがいなくて寂しいから… ?
アタシの味方がいないから… ?
アタシの味方が、いない店… 。
あっ、今、
喧嘩し始めてたんだっけ…?
突進してきた男の額に、
またアタシは頭突きをする 。
「 こいつっ!!」
男がアタシに平手打ちをしてきた。
ビリッ!と一瞬だけ、
痛みが走ったけど 。
姉に殴られる方が、もっと痛い 。
今、アタシの目の前にいる男は、
アタシの姉よりも、弱い 。
イケる、と思った 。
ニヤリと笑うアタシの顔を見て、
すぐ目の前で、
男の目が驚愕するのが解った。
こんな、はした金で買った服、
破られたって構わない。
殴られたって、やり返せばいい。
何一つ、困る事は無い 。
怖いものなど、何も無い 。
アタシは男の脇腹に、
膝蹴りを入れる 。
叫ぶ男の体を、
半グレ仲間が後ろから抑えつけ、
「 相手、女だぞ?止めとけって!」
と、説得している。
アタシを止める人は、誰1人いない。
「 来いよ、オラッ!」
笑いながら、アタシは挑発する。
他の男連中は、誰1人として、
カッコいい男は いない 。
金も、持ってなさそう 。
アタシの裸を見せるには、
相応しくない連中ばかり 。
くだらない店 。帰ろう 。
何の魅力も無い店のホールから、
アタシは出口に向かって歩き出す。
刺青野郎は、
アタシに向かって来ようとしてたけど、
周りに止められて、
その場から離れられない。
「 別に、
やり合っても かまわないけど、
互角か、あんたアタシに負けるよ?」
威嚇でも、挑発でもなく、
つまらない店を早く出たいアタシは、
哀れんだ目で刺青野郎を見ながら、
冷静な口調で言った 。
だって、おまえ、
姉より平手打ちが弱いんだもん… 。
刺青野郎と、その仲間達が、
アタシを罵倒してきたけど、
お店のスタッフが、
ようやく止めに入り、
アタシは その場を歩いて退出した。
「 つまんねー店だな。」
アタシに触れようとした、
スタッフの手を払い、
捨て台詞を吐いてきた 。
もちろん、アタシは出禁だろう。
だけど、もう二度と来ないから、
何の問題も ない 。
昨日の今頃は 、
ケン と 夜景を見ていたっけ…
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