番外編 ダークサイド

rosebeer

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百鬼夜行

【 7 】 あかつき

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玄関のドアが閉まり 、


部屋の中が シンッ…… と静まり返る。


ベッドの上から降りて 、

さっきまでケンがいた玄関を見る。


投げキッスを思い出し 、

美咲の真似をして、

空中に手を伸ばしてみた。


空気を握り、それを口まで運び、

食べる真似をする 。



「 ………… 」 アタシは首をかしげる。



       何が楽しいんだ? これは 。



大人の考えている事は、よく解らん。



ソファに座って、あぐらをかく。

煙草に火を付けて、

思いきり吸い込んでから、

ゆっくりと息を吐いた 。



「 あれっ… ?」



リラックスした瞬間 、

急に 思い出した 。




"「 おい、行くぞ。何やってんだ?」"



あの、声 …… 、似てる 。似てた…!




        シド の 声 に 。



勢いよくソファから立ち上がり、


リビングの大きい窓に向かって歩く。


レースのカーテンをシャッ!と開け、


窓の外を見た 。



黒いハイエースの車が2台 、

家の前にいた 。


前を走る1台目の車が 、

丁度 Uターンをして走り去る所…


その後ろにいる2台目の車内、

助手席には、

ケンが笑って話しながら乗っていた。


アタシは車内の人影を探す 。


丁度、ケンが窓に目を向けて 、

アタシと目が合う 。


見送ってくれている、と思った彼は、

とても嬉しそうに微笑みを投げかけ、


アタシに手を振った 。


アタシは、
手を振り返す余裕が無かった。




       シドを 、目で探していたから。



       
       「 シドは?!」



思わず叫んだ 。

外に聞こえる訳がないのに 。


ケンは、

「ん?」って顔をしていたけど、

そのまま車は走り去ってしまった。




"「 ケンは、あっちの車な。」"



あの声は、そう言っていた… 。


1台目に 、乗っていたのかな… ?



静かな部屋で、たった1人きり… 、


やり場のない気持ちを持て余す。



さっき聞こえた声を 、

何度も 何度も 、

繰り返し思い出していた… 。



たぶん 、きっと… 、でも… 。



アタシは諦めて、ソファに座った。


好きな人の声を、

聞き間違う訳がない 。


でも、そんな偶然… ある訳がない 。



「 違うよね 。違うよね…?」



胸が押し潰されそうに、苦しくなる。


泣かない… 、泣きたくない 。


会いたい気持ちが、積もっていく。


「 会いたい… 」


会いたくなるから 、

泣きたくなるから 、


そうならないように誤魔化して 、


どうでもいい男連中と、

ただひたすら、

セックスを積み重ねてきたのに…、



こんな… 一瞬で、


また苦しくなるのかよ 。



「 ふざけんなっ」  … 悔しかった …






……ーー 



何も、する事が無い 。


美咲からの、連絡も無い 。


急に、見知らぬ世界に、

ほっぽり出された感じ 。



仕方なしに長めの二度寝をしたけど、

目が覚めても、


アタシの気持ちは変わらなかった。


目が覚めて、真っ先に考えた事は、

シドの事 。


会いたい… 、ばかりを繰り返し想う。


振り払うように、

アタシはバスルームへと向かった 。


カーテンが開いたままの、

ガラス越しの夜空に背を向けて 。



煌びやかに見えて空っぽな 、


チバちゃんの店ではない 、

クラブへ行く為に 。



テーブルの上にある、

アタシの携帯電話には、


ケンから数件の着信と、

メールが届いていたけれど、



それは、無視した 。…







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